「2週間だけ、東京に行ってくる」
私の父が言った言葉。
「なんで?」
「パラリンピックの選手の送迎するんだよ。」
父はバス会社の偉い人らしく、パラリンピックのバス応援に行くんだとか。
「へー。でも、なんで2週間?」
「パラリンピックの期間中は居なきゃ行けないらしくてさ。秋葉原に泊まるんだ。」
秋葉原………。
私はよく知らないが、きっと凄く大都会なんだろう。
「いいなー。私もホテル泊まりたい。綺麗で、めっちゃ広いでしょ?」
「んー、特別広くはないかなぁ…。コロナが収まったら東京行こうね。」
「うん。」
数日後、
パラリンピック開会式の3日前。
父の東京に行く日がやって来た。
「じゃ、行ってきます。」
「「いってらっしゃい。」」
それから、特に変わった事もなく、開会式の日がやって来た。
父はテレビ画面に出ることはないが、自分の親が世界一を決める『裏方』の役割をしているんだと思うと、何だか誇らしく思った。
開会式が始まり、
「このパフォーマンス凄い…」
「またこの時期がやって来たかぁー。」
「ねぇ、パパは?パパ映んないの?」
「パパは映らないかなぁー。でも、近くできっと仕事してるから」
「へー。あ、花火!」
「本当だねぇ。見に行きたいね。」
「うん。」
開会式が終わり、私は眠りについた。_
_朝、目が覚める。
平凡に、ただ普通に、休みを満喫していた。
ゲームして、スマホして、たまに宿題やったり。
その時、ドアが開いた音がした。
自分の部屋でも無く、トイレでもなく、窓でもなく、玄関のドアの音。
そこに居たのは_____
東京で真っ赤に日焼けして来た父。
2週間どころか1週間すら経ってないのに帰ってきてて草