哀儚・2025-02-02
君の瞳に映る未来
夢幻の哀詩
一番近くて遠い君
風が吹き、制服姿の君の髪が靡く。
君の横顔に心を奪われるのは、
これで何度目だろう。
いつまでも、ずっと見ていたい。
同じ時間を過ごしているはずなのに
目の前で君が息をしているのに
私が深い悲しみに襲われていたのは、
私たちが同じ場所には戻れないことを
知っていたから。
"どうして一緒に居られないの?"
心の中で叫んでも、君には届かない。
時間が迫っているのを感じながら
君との残された時間が
短くなっていくのを感じて、
次第に心が重くなる。
「君と一緒に行きたい」と零すと
「行けないよ」と静かに返された。
私を否定したことがなかった君の
まるで全てを諦めたようなその口調に、
怒りと悲しみの感情が混ざり合い
私は「わかってるよ」と
自分に言い聞かせるように呟いた。
それでも、希望を捨てられない。
涙を堪えようとして俯くと、
君は顔を少しだけ傾けて私を見た。
私たちはお互いの一番の理解者で、
今まで涙を見せたことはなかった。
でも、もう全部どうでもよかった。
いっそこのまま泣いてしまえたら、
未来が変わるんじゃないかと思った。
君に背を向けて壁に寄りかかると
「こっち見てよ」と
背後から君の声がした。
いつも笑っていた君からは
想像もつかないほど、か細い声。
なんで向き合わなきゃいけないの。
私は哀しみなんて知らないふりして、
君との時間を噛み締めたいだけだった。
向き合うほどに、笑えなくなる。
そう思っても、大好きな君の声を
無視することができなくて
私の瞳はまた君の姿を映してしまう。
風の中で佇む君の姿が揺らいで
視界がぼやけた後、君の顔が滲んだ。
君の輪郭が曖昧になっていく。
「どうしてそんなに
悲しそうな顔をするの?」
君の声が震えていた。
かつてクラスで一番元気だった君が、
今では小鳥の囀りにさえ
掻き消されそうなほど、
小さな声で囁く。
耳の良い私でなければ、
聞き逃してしまいそうだった。
「君と一緒にいたいから。」
震えないように声を張ったつもりが、
逆に悲しげに響いてしまった。
君はどこへいくつもりなの。
私を置いて、どこへいくの。
なんで泣かないの。
なんで笑わないの。
こんなに辛いのは私だけなの?
頭の中は言葉で溢れているのに、
口に出そうとすると声にならない。
君はいつかのように私を抱きしめ、
大好きな温かい手で私の背中を撫でた。
優しい君の温もりに包まれながら、
これが最後かもしれないと思った。
「私たちには、ちゃんと未来があるんだよ。
たとえ一緒にいることができなくても、
心は繋がっているんだよ。大丈夫。」
母親が子供を寝かしつける時のような声で、
君はそう語りかけてくれた。
根拠はないけれど、
確かな安心感を覚えた私は
どんな未来が待っていようと、
私たちの心には永遠があると思えた。