#夢か現か

欠けた月の満ちる刻

奇跡は起きる

夢と現実の狭間
獏は謂う

「夢は現、混同の世界は理想郷」

蒼空を見上げ
夢追い人は謂う

「現は夢、混沌の世界は幻想郷」

奇跡を讃え
奇跡を嗤う

美しい今宵
此の世界がどうなるのかは




貴方だけが其の記憶に留めておいて

広い世界の片隅の

ちっぽけな私の心の扉

ノックする人は今日もいない

すっかり錆び付いた扉は

自分で開けることが出来なくて

待ってるの

いつまでも いつまでも

窓の向こうに高い空を見つめて

寂しいの

いつまでも いつまでも

この部屋は 私１人には広すぎるよ

仮面を身に纏って月夜の頃


貘から君を連れ去って刻廻り

引き揚げられた僕は
未だ微睡みの中



暗闇に灯りを


何処に着くかも分からぬ

階段を下ってゆく





扉を開いた其処は

穹か、匣か、海か、


角度が変われば世界も変わる


君とふたりで居れたのなら



暁訪れた刻

鈴割れて新しき音

私が薔薇を贈ったら

貴方はいったい何を思うのかしら

確かに私は子供だけれど

子供なりに恋だってするのよ

ねぇ私

貴方を愛してみたいのよ

そんなこと言っても

貴方は信じてくれないかしらね

いいわ

時間はまだまだあるもの

夜の沈黙の中で

貴方が煙草の火を灯す

ライターの音が闇に溶け

吐かれた煙が空間を染める

優しい空気に微睡みつつ

想いを馳せていく

夢と煙の境目に

まだ見ぬ貴方を描いていく

ここは朝と夜の間

貴方が眠っているのなら

ここは夜の間

黒猫の時間

貴方が瞼を上げるなら

ここは朝の間

白猫の時間

黒猫だって貴方

白猫だって貴方

憎み合ったりしないで

一緒に踊りましょう？

朝と夜の間で

水たまりの裏側

もう１人の私

泣いてるの？

それとも

笑ってる？

雨上がりには

虹が見えることもあるんだって

だからほんの少し

上を向いてみよう？

やっと自由の翼を得て

ほんの少し羽ばたいてみて

そして気付く

僕は何処へ飛んで行こう？

秋風に吹かれて

貴方への思いが分からなくなる

紅葉のように色付いた想い

少しずつ褪せていく

落ちて散らばる葉の裏側に

隠された私の恋情は何処

焚き火の火はまだ

微かに燃えているけれど

確かな熱は感じられなくて

繋ぐつもりだった掌を

擦り合わせている私独り

微睡みの中 揺れる街角

金の瞳のあの子が瞼を閉じる

白い髪が空に広がって

曇った星空 レースのカーテン

透けて見えるスパンコール

フリルのブラウス

赤い靴は如何かしら？

踊り狂って夢中になって

痛みもすぐに忘れるでしょう

蝋燭の火が消えたなら

闇の向こうに気付かないで

瞬きの間に

どれ程の時間を閉じ込められるだろうか

僕の中に

大好きなものを詰め込んで

宝箱みたいな自分になりたい

抱き締めて眠れるような

僕だけの素敵な宝箱が欲しい

小気味良い万年筆の足音

ノートの大地に滲む青

頭から紡がれる言葉

少しずつずり落ちる眼鏡

音楽プレイヤーで繰り返される歌

イヤホンのコードを引っかけて

命の音が遠のいていく

指先はまるで青の殺人鬼

白に散らばる言葉は私の遺言

紐解いてみせてよ名探偵

足元の砂を拐っていく波の心地よさ

ジリジリ照り付ける太陽の眩しさ

貴方の顔は逆光で見えなくて

笑っているのか泣いているのか

近くて遠い水平線

夏がまた走り抜けて行く

気取った赤いハイヒール

ダンスホールで貴方を待ってる

背伸びしたハイヒール

貴方は見付けてくれるかしら

子供には届かない

棚の上にあるお菓子箱

触れられないからこそ

魅力的に映るのかしらね

私の見栄のハイヒール

なくても貴方に届くよう

素敵な人になるから待ってて

見上げた冬の夜空から

キラキラ シャラシャラ

カラフルな金平糖

甘さたっぷり 幸せいっぱい

星降るように美しい

けれどもそれは硝子片

手を伸ばしたら 傷だらけ

薔薇は少し遠くから

眺めるくらいが丁度良い

美しい理想を

現実にしようと近付けば

棘に襲われて 痛い