卒業式の帰りだったと思う。
足取り覚束なくふらふらと花道を歩いていた。
片手に栄養ドリンクを一本だけ持っていて、私のそばには誰もいなかった。
広場でふと足をとめて辺りをぐるりと見渡してみると、誰も彼も友達と一緒で楽しそうにしていた。
私には誰も残ってくれなかったのだと思ったら急に力が抜けて、手に持っていたガラス瓶をするりと落としてしまった。
そのまま地面に倒れ込むと、クラスメイトだった人が一組駆け寄ってきて、救急車を呼ばれそうになって必死にとめた。
そして私の体を起こしてくれたのは、私のことを生理的に嫌っているはずの人だった。
すごく優しくしてくれて、不覚にも私は安心してしまった。
そんなわけないのに。
理由もなく目の敵にしていて、友好的な表情を見せてくれたことは一度だってなかった。
久々に会った成人式でも、私を見下すような口振りで、偶然知られていた私の仕事を馬鹿にされた。
私はあの人が嫌いだ。だってあの人が私のことを嫌うから。
そんな人が、夢の中では私に優しい。
逆に、大好きだった人には無視されたり、仲間外れにされたり、殺されそうになったり、夢に出てくるたびに酷いことをされる。
親友だったその子は高校が離れてから関心を向けてくれなくなって、久々に会った成人式では違う子にくっついていた。
私はその子への熱が冷めた。だってその子が私を裏切ったから。
連絡すら取り合っていないのに、そんな悪夢ばかり見て私ひとりが馬鹿みたいだ。
逆夢と言うんだろうか。本当に、心底気持ち悪い。