「戯れに咲け とある男女の爛れた関係」
大人の事情が含まれますので
対象年齢18歳以上とさせて頂きます。
わけあって、再投稿です。
「知ってるか?子どもを産む時下半身が熱いと感じる女もいるんだってよ」
汗の這った肌を弾丸の様に打ち付けて、祐司は茉心に囁く。茉心はそんなの嘘よと微笑を帯びながらリズミカルに囁き返した。
「私、2人子供を産んだけれど、どちらもいきみと痛みだけだったもの」
「へえ、じゃあその子らを作った時の相手との温度によるんじゃないの」
「温度?」
まさに動物的な格好で愛し合っていた茉心の躯を起こし、無体にも祐司は熱烈に口付けをせがむ。無理な体勢で埋め尽くされた唇。息を継ぐ為にほんの数ミリこじあけられた隙間から祐司は言を紡いだ。
「真や聖が出来た時、旦那とはとっくに冷めきっていたんだろう?」
「そうね」
「俺との子を産む時は熱いと感じるかもしれないね。こんなにお熱いんだから」
「そう?きっと同じよ」
「あっそ」
祐司は茉心を骨まで溶ける程、熱く激しく練り上げるのに、時にそう、五歳の次男聖(さと)の様に愛らしい目を向けやさぐれる。
茉心の躯が心底、この祐司の遺伝子を欲すれば、祐司と繋がった唯一の場所は、痺れて攣縮を繰り返し彼をあわや飲み込まんとするのだった。
浮気を繰り返す旦那との暮らしは嵐のようで、十年足らずの間に精神は磨り減り生命削られ、なるべくして結婚生活にも終止符が打たれた。真と聖は茉心が引き取り育てている。
母として強くなる事、それと同時に父としてのノウハウも三十代にして一から学ばなくてはならない。茉心は特に苦痛とも思わなかったが時折、内からどうしようもない衝動が突き上げる。
咲き誇りたい。
出来る事ならもう一度女として。
三十路過ぎの女がなんと青臭く厭らしい事を願うものだろうと、茉心は内なる願望を心深くに眠らせた。しかし時は訪れてしまった。
それが、祐司との出逢いだった。
もう二年来の付き合いになる。
穏やかというわけでも新鮮とも違う、熟れきった男女の爛れた関係だ。激しく貪り合い、時に引き潮の様にさらさらと離れてみると、再び濡れた細胞を触れ合わせる瞬間は、天にも昇るように身も心も悦んだ。
「なぁ茉心、そろそろ考えてくれないかな」
「何を」
「分かってるだろう」
疲れ果て乱れたシーツの上に身を投げ出す茉心は、態と祐司の顔は見ずに言だけを返す。
「…結婚?」
「そうだよ」
「私よりいい女沢山いるでしょう」
「完璧な女より茉心の方がずっと魅力的だけどね」
「魅力的とか言えば女がみんな靡くと思ったら大間違いよ。例えば何処が?そこまで言って満点よ」
心がくすぐられる様な言葉を遣い、祐司は茉心の気を引かんと駆け引く。茉心は心弾ませながらも、単純には祐司の策略には乗らない。その真意を聞き出そうと画策したのだ。
ちぇっとおどけて祐司は、茉心の丸みを帯びた肩を抱いた。茉心の汗ばんだ肌がようやく冷えて、祐司の掌は心地のいい温もりを掴む。
耳元で戯れる様に囁いた。
「茉心の弱さも強さも強がりも、一生懸命な所も残念な所も腕っ節が強すぎる所も魅力的」
「何よそれ」
茉心が西瓜の種を飛ばす様に吹き出すと、祐司はそっと茉心の胸に手を伸ばしこう言った。
「ここも俺好みだしね」
「結局身体なのね、ハイ、31点。赤点よ赤点」
「げぇまた落第点かあ」
「出直しなさい」
「へいへい」
茉心は小さなやさぐれを見せた祐司の頬に、啄む様に口付けてやった。
「いつ結婚出来るのかなぁ…する気、ある?」
「……あるよ」
本音を薄紙に包まず伝える事が出来たならきっとその答えは「早く結婚したい」こうなるのだろう。心の深い場所で、愛の残骸に埋もれた核が、何度も音を立てて叫ぶ。祐司が好きだと。祐司しか見えないのだと。
あと一歩を踏み出せないのは、結婚に対する不信感でしかない。幾ら幸せにすると口先で縛られても、脆くも崩れ去ることを茉心は身を持って体験したのだから。
「まあ、待つよ。なんなら茉心から結婚してって言わせてみせるさ」
茉心の心を知ってか知らずか、祐司はそう言って欠伸と共に、気もなく伸びる。
「待ってる」
茉心は祐司の耳元に小さく息を吹きかけると、祐司に寄り添い、深い安らぎの中で目を閉じた。
了
*タグが長すぎたのか全体シェアされませんでしたので再投稿してみます。これで全体シェアされなければ何か禁止用語にひっかかってしまったのでしょうね。残念ですが直す気もしませんので、お気に入り登録有りの方のみの配信となります。
ああ、全体シェアされたようですね。どうやらNOTE15は長すぎるタグを付けると、その後のタグが短くとも、タグ別のカテゴリにはシェアされないようです。なう(2021/05/07 22:16:25)
連龍