君が愛おしい。
そんな言葉はありきたりかな。
君と出会った日のことなんて
何年前の話だろう。
背が小さくて、子どもっぽくって、
君を見ていたら
人って成長するのだと実感したよ。
これを読み始めた方は
美しい恋の話だとでも思っただろうか。
残念ながら間違いだ。
ただの過去を振り返るお話である。
いや、お話とも言えないかな。
私が愛した彼は
私には似合わないくらいに
素敵な人だった。
私のことを第一に考えてくれて
心配をしてくれて
優しすぎるような人だった。
でも、私は振られた。
冷めたからだなんて
ありきたりな言葉と共に。
私の恋は綺麗に舞い散った。
泣いて、泣いて、泣きまくった私。
馬鹿みたいに過去のことを
いつまでも引きずって
情けないったらありゃしない。
今日は雨が降っている。
雨の日といえば
やっぱり、君を思い出してしまう。
初めてのデートの日には
雨が降っていましたね。
急いで買ったコンビニのビニール傘は
かなり高くって驚いたね。
帰り道でのいきなりの雨の時
君は急いで傘を渡して
帰ってしまって
その後風邪をひいたお馬鹿さんは
私が風邪を引かなくて良かったとか
あほなこと言っちゃって。
あーあ。
思い出したらキリないや。
こんな、思い続ける私は
いつまでたっても馬鹿な人。
今日は雨の中傘をさして
お外を散歩。
サビがついたビニール傘は
少し大きいかな。
歩き慣れた山の散歩。
隣に誰も居ないから
少し寂しい気がする。
あ、彼岸花だ…
そっか、この時期か…
さすが山の中だけあって
彼岸花がある。
まだ、咲いてはいないようだ。
彼岸花ってどんな花なんだろ。
私はいてもたってもいられなくなり
スマホを取り出して
彼岸花を検索してみた。
検索をしてみたら
かなりの情報があって
どれから見るか迷った。
読むのに夢中になっていたせいか
いつの間にか雨がやみ、
雨も降っていないのに
傘をさす、変な人になっていた。
彼岸花の花がいつの間にか
咲き誇っていた。
〔雨後の彼岸花〕
乾燥状態が続いた後に
大雨が降ると一斉に花が咲く、
今読んだばかりの事が
目の前でおこった。
綺麗だな。
この赤色がなんとも言えない。
私は花言葉も確認していた。
その咲き誇った彼岸花を
写真に撮ってから
山を降り始めた。
山を降りてから
私は呟いてみた。
『じゃあね。』