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#海麗の歌詞小説。

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全2作品・



付き合い始めて2年半。
お互い、結婚を考えていて、
今日は同棲のために不動産に行く日。

「同棲楽しもうね。」

同棲が楽しみなのか何日か前からそんなことを言いながらニヤニヤしてる彼女の綺莉(あやり)。

そんな綺莉を見てると、「そうだね。」と俺もニヤニヤしてしまうし、間取りとか外観を気にする。

綺莉とは若干マンネリ化気味だった。
2年半も経てばマンネリ化するよなぁ、と思っても
俺は綺莉が好きだから別れられないし、忘れられない。
この同棲はそのための同棲。

不動産屋の方で何軒か内見した後、
今日、最後の一軒。
コンビニから徒歩2分、と近いところだった。
お互い気に入り、やっとマンネリ化から抜け出せる、と
思ってたのは俺だけだったらしい。

1ヶ月後_
購入した家へ引越しする。
「開けるよ。」
「うん。」
たった30秒の会話で不動産屋さんからもらった鍵を差し、鍵を開ける。
「あー、気持ちい…。」
入って真っ直ぐに窓を開けた綺莉。
引越し屋さんが一生懸命ダンボールを運んでくれる。
「ほんとにコンビニ近くていいね。」
「すぐコーヒー、買いに行けるもんね。」
「そうだね。」

「このダンボールで終了となります。」
「ありがとうございました。」
「手伝えずに申し訳ないです…。」
細かい所まで気を遣うし、気にする綺莉。
「いえ、大丈夫です。それより、楽しい生活をお過ごし下さい!」
「ありがとうございます。」

引越し屋さんが帰った後、俺はコーヒーを買いにコンビニに行く。

「いらっしゃいませ。」
「コーヒー2つください。」
「サイズはいくつにされますか?」
「Mでお願いします。」
「お会計300円になります。」
俺は300円を出す。
「300円丁度お預かり致します。ありがとうございました。」

「ただいま。」
「おかえり。」
部屋の中はダンボールだらけ。
「冷めないうちにコーヒーを飲もう。」
そんな部屋の中でさっき買ったコーヒーを飲む。
「ありがとう。」
コーヒーを1口入れて考える。
こんな平穏な日々がずっと続けばいいのに、と。
そして、明日も明後日も君といられたらいい、と。

割かし平穏な日々を送っていた2ヶ月後のある夜。
「だから、片付けてって言ってるでしょ?」
「ねぇ、またゲーム?」
「別にいいだろ?」
今思えばそう言ってしまったのがいけなかったと思う。
「……もう決めた。私たち、別れよ?」
彼女から別れを切り出された。
「……」
何も言葉が出てこない。
なんと言えば良かったのだろうか。
いや、…「辞める」と言ってゲームを辞めて
綺莉と一緒に過ごせばよかったのか。
「じゃあね。」
そう言って出ていく彼女。
追いかけたかったけど、追いかけることが出来なかった。
元々、この同棲は俺が一方的に推してただけだ。
そうなれば内見も、俺が半ば強制に決めたと言っても当然だろう。

突然の別れから2ヶ月半がたったある日。
俺は暇でぶらぶらと街の散歩をしていた。
その時、綺莉が居た。誰かと待ち合わせ?してるらしい。
周りをキョロキョロ見渡していて可愛い。
お洒落なTシャツにロングスカートに俺が気に入ってた可愛いピアスに…細長い脚、丁度いいルックス。
俺はそんなところに惚れた。
と思っていると、目が合ってしまった。

「……」
「……」

何か声をかけたいけど何も出てこない。
彼女がこちらに近づいてくる。

「…久しぶり。」
「……久しぶり。」
「元気…だった…?」
「うん…そっちは?」
「私も…」
開始早々、話が止まってしまった。
「……あのさ、」
彼女が話をし始める。
「私、彼氏出来たんだよね、」
やっぱりな、という感じだ。
元はと言えば、綺莉と俺は高校の同級生。
成人式の同窓会で会って、そんな雰囲気になって……で、気づいたら付き合ってた。彼女は昔からモテるサバサバ系女子。何回も告られているのにも関わらず、誰とも付き合うことはなかった。
「そっか、おめでとう。」
「綺莉。」
「あ、ごめん、行くね。じゃあ、元気で。」
その新しい彼氏は言うまでもなく、中高とモテモテだったサッカー部の真城(ましろ)。

ああ、ドラマみたいな綺麗な恋みたいに上手くいくわけないよな。同棲してもしかしたら…、って少しでも期待してしまった自分が馬鹿馬鹿しい。
なんで、大切にしなかったんだろう。
なんで、ゲームばっかしてしまったのだろう。
考えれば考えるほど、後悔しか生まれない。
君はもう、新しい彼氏がいる。

気づいた頃には綺莉と同棲していた部屋に戻っていた。

「なんで…なんで…」
「帰って来いよ、」
1人だけ残された部屋に独り言と泣き声がやけに綺麗に響く。
誰ももう帰ってこないこの冷たい空間に、
俺、ただ1人の声が。
もう前を向かないといけないとは思うけど、
ほんとにこれで良かったのか。
こんな思いするならば、
最初っから会わなければ良かったのに。
好意なんか持たなければよかったのに。

何も温もりもないダンボールを抱いて思う。
もう終わりにしよう、全てを。
どれだけ時間かかっても、
君との恋を終わらせよう。これで良い。
今頃、君は新しい彼氏と幸せになる家を探しているだろう。

お互い割れた日々の中で徐々にズレた恋から
束縛も決まりも無い自由になった恋を
探すための旅に出よう。
前の恋を忘れずに失敗から学んでいこう。
この愛を何年後の同窓会で話し合おう。
それまで忘れずに、サヨナラ。

俺らの恋は赤い糸か何かの糸で
結ばれていたわけでもなく、
糸より遥かに脆いガムテープで
結ばれていただけだった。

曲→Gum Tape/SixTONES

海麗_・2022-10-30
海麗の小説。
海麗の歌詞小説。

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