#玉の葉

記憶の中に

閉じ込めた想い



花びらが舞う小川に

流したはずのそれは



さらさらと時を流れ

此処にまた辿り着いた

秋の風が頬を撫でる



風の行く先を追うように

空を見上げると



薄い水色の空に

葉が揺れていた



｢逢いたいな…｣

不意に零れた言葉は



風と共に

葉の揺れる音の中へと消えた

桜の花散りて


露玉に濡れし葉に触れたなら


涙を拭えと


言い聞かせる


我が身散るその時まで


また花を咲かせよと

玉の葉、結んだ絆は

今を彩る幸せへと変わりゆく

あの日も、そうだった



あなたの身を案じ

空を見上げた



涙は風に吹かれ

舞う葉の如く零れ落ちた

あの頃の笑い声


あの頃の想い


懐かしさとなって


今と重なる


出逢いに感謝を


めぐり逢いに悦びを


幸せと共に


もう一度動き出した運命が


もう二度と


止まってしまわないように


私たちはまた此処から


手を取って


歩いていく

私の心にある真の華


今、花開け


どんな闇が訪れようと


枯らすことなく


咲き誇れ




千代に八千代に


光の玉の葉と共に


生き続けた行く末は


加那の志しとなる




真理の果てに


見つけたものは


汚れなき幸せなり

赤く燃え立つ

志を胸に

里離れゆくその背は

生まれ持った運命への

覚悟を語る



ならば

風のしらべよ

愛しき彼らの道しるべとなれ



あらゆる全ての精霊よ

愛しき彼らを守り給え



静かに奮い立つ

己の胸の内

里守りゆくこの手は

生まれ持った運命への

覚悟を握る



故に

迷うことなかれ

ただ一心に前へと進め



振り返ってくれるな

ただ一心に陽の光を目指せ



力を纏い

信念のままに



大地を蹴り

高く飛べ



風のしらべよ

愛しき彼らの明日を照らせ



あらゆる全ての精霊よ

愛しき彼らを導き給え

朝露弾む新緑の葉に

あなたを送り出す寂しさひとつ

隠すように落としたの



〝これが最後にならぬよう…〟


いつの日も

祈りを胸に、空を見上げていた

文を握り

隠れ里

離れゆく

もう二度とは帰れぬ

里山を

遠くに眺め

別れに涙す



ただ一心に

赤煙上げてくれるなと

身を案ず



命燃ゆるその瞬間まで

一日たりとも

忘れぬと



玉の葉

散りて尚

心、此処に在らん

朝霧に輝く陽の光は

あまりに眩しく

背の高いあなたを

見上げることも出来なかった



葉に落とした涙は

朝露に溶け

この雫に気付いてくれるなと

あなたの行く末を

ただただ案じていたのです

玉の葉

夕焼けの中に舞う



風はそよぎ

頬をかすめれば

冷たい雫に触れるだろう



愛しいあの声は

耳に届かぬ

頼もしいあの背中は

そばには居らぬ

優しいあの手は

そのぬくもりも見せぬ



笑い声は

いつの間にか消え

玉の葉ひとつ

ひらひらと風に乗る



心に落とした影は

今宵、寂しさの中へ溶けていく



里の匂いを追い求め

富士の景色を心に描き

記憶の中へと身を隠す

玉の葉、里の山に散りゆけば

枯れたその姿見せまいと

風に揺られ彷徨う

君と笑い合う夜

なんだか懐かしくて


お互いの近況も報告して


｢今の方が少し落ち着いたけど

あの頃と声変わらないね｣


そう言って笑う君


君が笑うと嬉しいんだ

また話そ

それまでにまた

爆笑話、用意しとくよ

里に咲く花は

小川を桜色に染め



里に降る雨は

仲間たちの傷を癒し



里に吹く風は

大地に響く足音を乗せ



里に舞う雪は

遠くの地まで想いを届けてくれる



忘れないで

そこに笑顔溢れていたことを



忘れないで

力強く、生き抜いた生命を



古の空に葉こそ散れど

その魂は永遠の時をゆく

山々の向こう

忍ぶ夕暮れに映るは生命の光

陽に隠れ匂い立つ光の息吹