何度も、呼び止めようと思ったのよ。
私から離れていく背中を。
けれども、そんなことをしては、
私という過去の駅を出発して、
幸せ行きの切符を
握りしめた 彼に、
水を差すような気がしてしまって。
声には、成らなかったわ。
もう、彼が進む線路の先に、
私がいられる駅は、ないの。
寂しいけれど、
私のこの手に残るのは、
隣に座って、
彼と お弁当を食べた、
淡い記憶だけ。
STK・2025-12-04 #私の中の住人が言う
