天使 珀・2020-10-12
空の青さが僕を笑う
笑って
笑って
笑って
笑う事しか出来ないから
僕は今日も笑顔を創る
生きている理由を問うのではなく
この世に生まれてきた事自体が堪らなく尊いのです
君に貰った幸せの形を知りたくて
僕はそれを牛乳と一緒に飲み干した
水の中で泣いてる人の
涙に気づける人になりなさい
この恋のあらすじは2万行
愛らしいあの子の話
誰も知らない話の結末
花のような魅惑の彼女
彼女が奏でる音は
僕の心を色っぽく濡らす
今日の天気をお知らせします
“晴れのち恋”
君は前だけ見ててよ
背中は僕が支えるからさ
本当の僕なんて
僕だけが知ってれば充分なのです
【 これは罰だ 】
僕はあの夏
先輩と野球をして
先輩と恋をした
手も繋いだ
キスもした
ずっと大切にしてくれていたのに
最後の日最後の一線
僕は怖くなって逃げた
その後先輩はプロになって
一年後僕は大学に進んだ
それからはどうにも
先輩に合わせる顔がなく
もうずっと連絡を取っていない
ほんの一度さえも
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佐藤先輩
貴方は今どこで何をしていますか
プロになった佐藤先輩の活躍は
日々欠かさず目に焼き付けています
もしもう一度会えたなら
貴方に言いたい事が沢山あります
もし貴方が僕を許してくれるのなら
また…もう一度…
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「ふーっ」
暗い夜道
沢山の車が行き来する中
僕は一人壁にもたれてかかりながら歩いていた
「くっそーあいつら
今日やたらと飲ませやがって」
大学のサークルの仲間と打ち上げをやった
帰りだった
時計の針はもう深夜一時を回っていた
「げっ…終電…!」
ふらふらの状態で
立つのもやっとだった僕に
家まで三駅の距離を歩ける訳がなかった
「やばぃすげぇ眠い」
とても寒い夜だった
冷たい風が僕を吹き付けた
「こんなんじゃ死んじまう…
どっかに泊まるしかねぇな…」
独り言を言いながら
横断歩道を渡っていた
前を見ていなかった僕には
今信号が何色を示しているかは分からなかった
キキッー
耳をつんざく異音と共に
視界に飛び込んで来たのは車だった
動けない
跳ね上がるスリップ音
動こうとしても動かない
グシャッ
赤信号の中道路を渡った僕を避けようとして
車が電柱に突っ込んだ
「大丈夫ですか!?」
車から降りてきた人に
僕はすぐ様駆け着いた
『いってぇ…』
ボコボコになった車
煙が空を舞う
酷い有様だ
『あーあーひでぇなこりゃ』
「すみませんっ!!
僕っ…ボーッとしてて…!」
精一杯頭を下げる
『…は?お前死にてぇのかよ
どうすんだよこれ』
「本当にすみませんっ!!
そのっ…」
『ごめんなさいで済むと思ってんのか!』
低く下げた頭の上を
低く凍るような冷たい怒声が通り過ぎる
あれ…?
この声…
その瞬間僕の頭に
ある人が思い浮かんだ
「さっ…」
顔を上げる
「さ、とう…先輩?」
『あ…?』
あぁそうだ佐藤先輩だ
僕が大好きな佐藤先輩
『!!』
『…野山…!?』
「先輩っ…」
そのまま僕は気を失った
先輩と会えた喜びからか
それとも恐怖からなのか
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身体にズキンッと痛みが走って
僕は横になった身体をゆっくり起こした
「ここは…?」
『あー起きたか野山
ここは俺ん家だ』
どうやら先輩の家らしい
重い頭を回しながら
僕は周りを見た
「凄いとこ住んでるんですね」
マンションの最上階らしい
窓から見る夜景は格別だった
『あんま帰んねぇけどな
それよりも…』
先輩がソファーに乱暴に腰掛ける
『いやー事故った瞬間最悪だと思ったけど
まさか三年間ずっと連絡の取れなかったお前に
あんな形で会えるなんてな…ははっ』
ネクタイを手慣れた手つきで
ほどきながら先輩は僕を見た
怖かった
先輩は僕の事をどう思ってるんだろうか
怒っているだろうか
憎んでいるだろうか
軽蔑しているだろうか
『でも本当気つけろよ
あんなの死んでてもおかしくなかったぞ』
口が思ったように開かない
『どうした。
酔っていたのか?』
謝らなきゃ
言わなきゃ
と頭ではちゃんと分かっていた
『危ないぞ
あんな時間に…』
言わなきゃ!!
「あのっ…!!」
先輩は平然とをしていたが
僕を見つめるその目線はどこか冷たかった
「あの…
その、俺…」
服をギュッと握った
胸を掴みあげられる様な
緊張が僕を襲う
「き…今日の事も勿論だけど
あん時の事…」
じっと先輩は僕を見つめる
「…ずっと逃げちゃってて
謝りたくて」
大丈夫だ
思っている事をそのまま
正直に伝えるんだ
「でも勇気なくて
僕…何をすればいいか思いつかないけど
あの時のこと償えるなら
何でもします…」
心臓が爆発しそうだ
「本当にすいませんでしたっ…!!」
もう一度深く頭を下げる
許して…佐藤先輩…
『…野山』
その時確かに先輩の温もりを感じた
「…えっ!?」
ぎゅうっ…
先輩が僕を抱きしめている
許してくれたのか…?
『じゃあさ脱いで』
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事後
野山が疲れきって寝ている時
俺は野山にそっと
耳と首筋に
キスをした
ドロドロになった野山の身体に
俺は酷く興奮した
野山の髪がさらりと垂れる
本当は償いなんてどうでも良かったんだ
きっかけは最悪だとしても
こいつと出会えた
話をしてもう一度やり直したい
…でも
三年ぶりにあった野山は
それでもまだ怯えた目をしていた
駄目だ
きっとまたこいつは逃げる
俺の直感がそう読み取った
どれだけ優しくしたって
どれだけ大事にしたって
どれだけ愛したって
俺の元に帰ってくる保証はない
それなら罪悪感でも恐怖でも何でもいい
縛り付ける物が欲しかった
お前のその優しい
笑顔を俺だけに向けて欲しかった
お前の全部が
欲しかった
美しい夜景を背景に
俺は野山を抱きしめた
…もう二度と俺から離れないでくれ
逃げたのは俺も同じだ
きっともう
正しくお前を愛してはやれない
これは罰だ
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END
︎︎
「ぎゅー」
っと何かを強く握る音がする
時にはその音が
恋人と手を繋ぐ音だったり
時にはその音が
赤い糸を掴む音だったり
時にはその音が
自分の首を絞める音だったり
明日の君へ
笑っているだろうか
泣いているだろうか
明日の君はまだ分からない
ただ僕は君が笑っている明日の夢を見たい
もし泣いていたら
僕が笑わせてあげるような僕でいたい
おやすみ
今日もありがとう
今日の僕より