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#虹彩のパルス

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全125作品・


虹彩のパルス
103/160

話し合いという建前の

おしゃべり会は

午後3時で幕を閉じる

あれだけ喋って

笑ったのに

それでも満足しないのが

高校生なので

みんなで体を動かして

友情を深める

体育館に集合したら

二重に半円を描く

主催者の代表が

疲れ果てるまで

みんなで踊るぞ

そのかけ声に

みんなこぶしを挙げ

声を上げて応える

まず内側の半円の

主催校の生徒が

踊りの手本を見せる

手は使わずに

足だけを動かす

シンプルなその踊りは

ジェンカという名の

フィンランドのダンスだった

同じ夕焼けを・2024-09-23
虹彩のパルス


虹彩のパルス
101/160

綺麗なお姉さんに

囲まれているからじゃない

彼女が楽しそうに言った

他のみんなも

そうそうとニヤけている

そんなことは

そう口ごもったら

彼女はボクの脇腹を

突いたので

ボクはそうですと

思わず言ってしまった

みんなはフフフフッと

笑いながらボクを見つめる

ボクは肩をすくめて

丸まってしまった

これぐらいに

してあげようよ

彼女は笑いながら

ボクの背中を

撫でていた

目は合わなくても

こころは素直だね

真っ直ぐな目なのに

何か企んでいる人より

信頼できるんじゃない

他校の生徒が

そんな言葉をかけてくれた

同じ夕焼けを・2024-09-22
虹彩のパルス


虹彩のパルス
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確かに彼女の言うとおり

淋しい学校だと思う

ではなぜ彼女はこの学校を

選んでしまったのか

その答えは他校の生徒が

導き出した

この学校は治安が良い

荒くれ者もいない

授業を退屈と

思う者さえもいない

退屈と思わないから

刺激が欲しいと

思ったりしない

むしろいつもの平穏を

邪魔されたくない

そして人には干渉しない

自分が自分でいられる

そんな校風で

のびのびと毎日を

過ごしていたい

そう願う者には

心地良い環境なのだ

成り行きでこの学校を

選んだボクも

無意識にそれを望んだのか

事実人と目を合わせられない

ボクのような者には

居心地は良いのだった

同じ夕焼けを・2024-09-20
虹彩のパルス

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に125作品あります

アプリでもっとみる


虹彩のパルス
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交流会はグループ別に

議題が決められている

このグルーブは

学校行事について

それぞれの学校が抱える

問題などを話し合う

そして時節柄

体育祭が引き合いに出される

ボクの通う学校は

体育祭は先週開催された

でも祭の文字を従えながら

内容は陸上競技会だった

種目は陸上部の大会で

競技されているものばかり

楽しむような種目はない

フォークダンスや

組み体操もない

ただ個人の運動能力を

競い合うだけだった

運動が長けた

一部の生徒のための大会

少なくともボクに

活躍の場などなかった

そんな体育祭を

彼女も嘆いていた

同じ夕焼けを・2024-09-19
虹彩のパルス


虹彩のパルス
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話し合いは

いつしか議題を逸れて

流行りの歌とか

好きなアイドルとか

見ているドラマの話に

なっていた

初対面の他校の生徒と

こんな風に楽しい話題に

花を咲かせるのは

心地の良いものだ

もっともボクには

あまり興味がないのだけど

知ったかぶりせずに

見たことがないと

素直な気持ちを告げると

その人物や話の魅力を

楽しそうに教えてくれる

ボクは頭の中で

想像を広げて

無理に理解するのではなく

ひとつひとつをしっかりと

確かめることで

相手が何に魅力を感じているか

自然と理解出来ることが

楽しいと思う

だからボクは今

この楽しげな場で

機会をうかがって

自分の持つ悩みを

打ち明けてみたのだった

同じ夕焼けを・2024-09-21
虹彩のパルス


虹彩のパルス
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住宅街を抜け

川の堤防に出ると

視界が大きく広がった

彼女は思いっきり伸びをして

ハーッと大きな息をついた

ボクもつられて

伸びをしたら

秋の空気が肺に流れ込んで

頭の中に涼風が吹いた

空をぐるりと見渡すと

もう日は落ちていて

西の空は残光で

オレンジ色に輝いていた

東の空は透明な青色で

凪いでいた

その中間は

紫色のパステルカラーで

光彩を放っていた

入り日色のトンボたちが

グライダーのように

滑空していた

秋を詰め込んだ空は

閉ざされた感情を

胸の内から解き放ちたい

そんな気分にさせてくれた

その時彼女はボクに向かって

そろそろだよと言った

同じ夕焼けを・2024-09-26
虹彩のパルス


虹彩のパルス
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なぜこんな内容なの

他校の生徒は

当然の疑問を投げかける

彼女の話によると

この学校では

受験に関係ない行事は

重要視されていない

卒業アルバムに

花を添える程度に

開催しておけば

それで十分だと考えている

生徒会としても

このままではいけないと

毎年何とかしたいと

署名を集めたりして

学校側と話し合っているけど

どんなに楽しい想い出も

志望する大学に行けなかったら

全ては虚無の一点張りで

取り付く島もないとのことだ

現に学校行事に

興味のない生徒には

今の内容で大歓迎なのだ

彼女は淋しい学校だね

呆れ顔で嘆いていた

同じ夕焼けを・2024-09-19
虹彩のパルス


虹彩のパルス
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完全に彼女の罠に

はめられてしまった

彼女はボクに

好意がありながら

好きな人がいないか

探りを入れるために

こんな罠をしかけたのか

悔しいはずなのに

嬉しくて顔がニヤける

こんな顔は見せられない

ボクは口を真一文字に結び

表情が崩れないように堪えて

何事もないフリをする

どんな人なの

彼女は楽しげに尋問する

ボクはなぜか

キミの存在を伝えたくて

うずうずしている

でも恥ずかしいので

歩きながら話そう

彼女に願い出ると

彼女はしたり顔で

フフフフッと笑って

快諾してくれた

同じ夕焼けを・2024-09-27
虹彩のパルス


虹彩のパルス
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もしもボクではなくて

他の一年生の男子生徒なら

上級生の女子生徒に

囲まれた状況で

どのように振る舞うだろう

やはりボクのように

何も言えずに沈黙するのか

場を乱さないためにも

必死で何かを言おうと

足掻くのだろうか

そんなことを考えていたら

ふと彼が脳内に現れた

彼ならばこの状況でも

全く動じることなく

むしろまたとない機会を

喜々としながら

おどけたりふざけたりして

みんなの人気を

欲しいままに拐っている

そんな光景が目に浮かぶ

同時に自分の不甲斐なさを

唇を噛んで悔しがっている

ボクの姿を重ねて

やるせない気持ちになった

そんなボクに

彼女は大丈夫だよと

励ましの声をかけてくれた

この声にボクは

ようやく意識を現実に据える

覚悟を決めたのだ

同じ夕焼けを・2024-09-18
虹彩のパルス


虹彩のパルス
102/160

その言葉でボクは

自分を受け入れることが

できそうになった

目が合わなくても

冷たい印象を与えても

ボクの本心は伝わる

それはボクが

目が合わないことを

素直に曝け出したから

みんな信頼してくれた

そんな些細なことが

今までできなかったのは

過去に悲しい思いを

繰り返し重ねてきたから

目が合わないことを

自らが受け入れて

それを受け止めてくれる

そんな人がいる限り

ボクは胸を張って

生きて行ける

不確かながら

こころの拠り所が

持てたような気がした

ボクは彼女の優しさに

人さし指で脇腹を突いて

応えてみた

彼女は驚きながらも

ボクに頬笑んでくれた

同じ夕焼けを・2024-09-22
虹彩のパルス


虹彩のパルス
117/160

彼女は振り返って

ボクの目を見つめた

ボクは反射的に

目を逸らせてしまう

そんなボクを見て

彼女はフフフフッと笑って

正直な目だねと言った

気にしていることを

躊躇なく言われて

少し拗ねていると

自分に正直に毎日が

過ごすことができるから

昇りゆく満月を眺めて

穏やかに彼女は言った

どういうこと

キミの言葉の意味が

分からずに

問いかけてみた

彼女は満月を

遠い目で見つめて

しみじみと語り出した

中学校の時は

大人しかったんだよ

意外な返事が返ってきて

ボクは言葉が出なかった

同じ夕焼けを・2024-09-30
虹彩のパルス


虹彩のパルス
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キミや彼女にとっては

さらに彼にとっては

この学校はどう感じるのか

活発でいつも楽しげで

そんなキミたちには

この学校は物足りないだろう

学校行事も充実していれば

もっと楽しい学校生活を

送れていたことだろう

それともこの位の

穏やかさ加減が

心地良いのだろうか

賑やかなことは

むしろ苦手で

静かな方がこころ弾む

盛り上げようと

趣向を凝らすよりも

与えられた場面を

自然体で過ごすこと

本当の心地良さとは

そういうことなのか

作られた雰囲気に

自分のこころを

合わせにいくのではなくて

楽しいと思えるから

素直に楽しい

当たり前のようで

いつか忘れられた感覚

なんとなく分かる気もする

同じ夕焼けを・2024-09-20
虹彩のパルス


虹彩のパルス
114/160

秋の黄昏時の空気に

感情を預けたので

恥ずかしくて

言えないことを

一切の躊躇いも偽りもなく

素直に話してしまった

彼女は振り返らずに

素敵な人だね

きっと男子から

モテモテなんじゃない

穏やかに言った

その問いかけに

代議員会の夜に

同学年の生徒が

気になる女子の話で

盛り上がっているのを

盗み聞きしていたこと

その話の中で

キミの名前が

出てこなかったこと

そのことに安心したのに

なぜか淋しさを

感じていたこと

ボクの感情をそのままに

彼女に言った

同じ夕焼けを・2024-09-28
虹彩のパルス


虹彩のパルス
108/160

夕暮れの住宅街を

秋の透明な空気を引き連れて

彼女と歩いていた

彼女はボクに

一緒に帰ろうと言ったけど

何も話しかけてこない

ただ穏やかな

笑みを浮かべている

ボクも何か話したいことが

あるわけではないので

斜め下を向いて

黙って歩いていた

コツコツという

ふたりの靴音が

乾いた音を響かせる

その音を愉快に聞きながら

凌ぎやすい季節を

どこか懐かしい心持ちで

穏やかに歩いていた

会話はないのに

気まずくはない

これが心地良い関係なのか

そんなことを考えていたら

なんだか恥ずかしくなって

一歩下がって

夕日で燦めく

彼女の後ろ髪を見つめていた

同じ夕焼けを・2024-09-25
虹彩のパルス


虹彩のパルス
105/160

1時間は踊っただろうか

みんな汗だくになっていた

体育館を出ると

日は大きく傾いていた

もう夜の時間の方が

長いんだな

いつしか過ぎていた季節が

ボクの目に映り出されていた

交流会は終わり

みんな校門で握手をしたり

ハイタッチしたりして

友情を固めていた

ボクも照れながら

同じグループのみんなと

握手をしていた

その手は洗ったら

駄目なんだよ

そんな楽しい意地悪を

言われたりした

ふと気づいたら

彼女の姿がないので

周囲をうかがうと

彼女は生徒会長と

何やら話しをしていた

やがてボクの姿に気づき

右手を大きく振って

駆けつけてきた

同じ夕焼けを・2024-09-24
虹彩のパルス

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