はじめる

#警官

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全5作品・

【ForGetMe~クロとユキ~杉浦の章*第六話邪な志し】



“お前ほんと何で刑事なんか目指したんだよ”


ふぅーっと煙草の煙を吐きながら


クロのあの言葉を思い出す。




「知らぬは当人だけか…」


「えー?」


ベランダへ出て


煙草を吸う俺を


六花がベランダ柵から


身を乗り出すようにして


覗き込んだ。



「なんだよ」


「何ぶつぶつ言ってるのかなーって?」


「お前にはじめて押し倒された時の話だよ」


「えー?」


「忘れたのかよ」


全く、これだから


忘れっぽい女は困る。


「俺が警察官になった理由」


「ああ、あれか」


六花は、ふふっと微笑むと


俺の腕に絡みつく。



心地いい胸が


二の腕でぽよぽよと弾んだ。


「胸、わざとか、コラ」


「どっちだと思う?」



六花の挑発的な態度が


サディスティックに火をつける。


顔を傾け、臨戦態勢


唇をもらおうと


近づけば


ぐっ、と頬の辺りを


押しのけられた。




「いってぇ、何すんだよ」


「煙草吸った後は駄目」


「なんなんだよ一体、少し前まで煙草の匂いが好きだっつってたくせに」


「自由にキスしたいなら素直に煙草やめればぁ?」


またそんな可愛くもない言い方で


物を言う六花に


俺は少々いじけて


彼女の腰をぐっと寄せた。




「こら、友紀」


「うるさい、黙れ」


「ん、、もう」


一思いに唇を塞ぐと


さっきまで六花が頬張っていた


アイスクリームの甘みが


舌先に優しく触れた。










__俺が警察官を志した理由


それは大義の為ではなかった。



何のことは無い。


好きな女が


懇願してきたからだ。



ただそれだけの理由。



だけど俺にとっては


人生を賭けるには


十分過ぎる程の理由だった。



***

クロ、杉浦…高校三年生
六花、高校一年生の頃




「入れて?」


「……仕方ねえな」


六花はその日泣きべそをかいて


俺の家を尋ねてきた。



パジャマにしてる、


白い長Tシャツ姿に


裸足という刺激満点の


格好を見た瞬間


全身を巡る血液が


沸騰したかと思った。



田舎とはいえ


夜中にこんな格好して無防備に


外をほっつき歩かれたんじゃ


心配を越えて不愉快極まりない。



なんとか気持ちを抑えつつ


俺の部屋に招き入れるなり


俺は六花に尋ねた。




「つーか、何その服装。その辺のオヤジに襲って欲しいわけ?」


「お兄ちゃんと……喧嘩したの」


「クロと?何で」


「……やっぱり警察官の夢、諦められないんだって」


「親はなんて言ってんの」


「……大賛成してる」


「六花はまだ反対してんの?」


「だって、危ないじゃん…、拳銃扱う仕事なんだよ?お兄ちゃんボーッとしてるし、すっごく心配…」



六花は筋金入りのブラコンだ。


高校二年の時


クロにはじめて彼女が出来た時も


俺のところに泣きじゃくりに来て


そのまま勢いで俺たちは関係を持った。




俺はクロと親友になって


六花を妹と紹介された時


一目でその愛らしさに


心奪われていたから


願ったり叶ったりだったわけだが



時折、思う。





俺は面倒臭がりだし


三度の飯より


寝ることが好きな怠惰な性格で


はつらつとしてもいなければ


幼い時に手術をした事もあるような


不健康不育男子なのだ。



一方クロはいつもほがらかで


部活も意欲的に参加し


スポーツにおいても勉学においても



努力家で非の打ち所がない。



俺とは、正反対の性格だ。





…六花は俺なんかで


本当に良かったんだろうか。




それでも嫌いにはなれない。


愛情は増していく。


六花には、泣いて欲しくない。




「クロは、正義感すげえ強いし、警察官向きだと、俺は思うよ」


「友紀まで、そんな事…言う……」


「いいじゃん、好きなことやらせりゃ。俺は警察官なんかにゃ絶対ならないし、いつも六花と一緒に…」


そこまで言った時


六花は目をきらきらと輝かせて


押し倒さんばかりの勢いで


俺に詰め寄った。



「それだ!それ!友紀、それだよ!」


「……は?」


「友紀もお兄ちゃんと一緒に警察官になってくれたら私すっごく安心!」



とんでもない事を言い出した。


兄可愛さのあまり


彼氏の俺の人生を


兄のお守り役にしようとしている。



「おい、待て。俺をそっち側に引っ張るな…」


「友紀は何か夢はある?」


「俺にはサラリーマンになって平凡な毎日を楽しむという夢が……」


「えー……私、友紀の警官服姿、見てみたいなぁ。かっこいいだろうなぁ。惚れ直しちゃうなぁ」



惚れ直すだの、


見てみたいだの、


彼氏心をくすぐる六花の言葉に


まんまと絆され俺は黙り込む。



「友紀がね、警察官になったらずーっと一緒にいられるよ?」


「あ?どういうこと」


「私もお兄ちゃんと友紀追いかけて警察官になるから!」


「は!?」


「悪いやつ捕まえるの!ヤクザとか、犯罪者とか、殺人犯とか、いーーーーっぱい捕まえるんだ」


とんだ将来設計だ。


計画性がない上に


危なっかしいにも程がある。



困ったことにこの六花…



言い出したらきかない。




「……俺が警官にならねえっつっても、お前は」


「なるよ」


「だよなぁ…」


呆れたため息を


吐く俺とは対照的に


六花は満足気な表情だ。


あーあ。


とんだ女に惚れたもんだ。



「わかったよ、クロと心中覚悟でなりゃいいんだろ、警察官に」

「ほんと!?」

「六花の事も…守りてえし」


珍しく自分の感情に素直に


言葉に表せば六花は


嬉しそうに微笑む。



この笑顔がずっと


俺に向けられるなら。



この時、俺は


邪な進路を志す事に決めた。



***


「あー……早まったなぁ」


「んー?」


キスの合間に


呟く言葉。



「やっぱ俺、警官向いてねえよ」


「そう?」


「相変わらず寝るの好きだし、体力ねえし、今日なんかすんげえ傾斜角の寺目指して階段のぼってさ、死にそうだった」


「またまたそんなこと言って、お兄ちゃんフル活用したんでしょー?」


「ご明解」


俺が笑んで六花の耳元に


そう囁くと


こそばゆそうに肩を竦めて


やはり、笑った。



「俺は正義感ゼロだからな」


「そう?」


「一言多いみてえだし。昨日は危うく狭い店の店主に、店ちっちぇなって言おうとしてクロにお小言くらった」


六花は腹を抱えて笑うと


涙まで拭い


俺に絶え絶えな息を吐く。


「それは友紀が悪い。お兄ちゃんが口うるさくてよかったじゃない。お兄ちゃんがいなかったらきっと友紀、始末書だらけだよね」


「うるせーよ、こっち向け」


「もう。うがいくらいし……っ」



風向きが悪いと知るや


俺は六花とまた唇を繋げる。


六花の細い指先に


格好の悪い俺の指を絡めながら


ずっと繋がっていたいと


身体中で語った。



女性警官は150センチ以上という


身長制限がある。


六花はその制限を


ギリギリ0·9ミリ越えで通過した。



抱き締めると小さな身体。



こんな身体で警官とはね。



交通課と言えど、


切符を切る時、柄の悪い輩に


絡まれる事もあるだろう。



「なあ、六花」


「ん?」


「交通課はどうだ」


「すんんんごく楽しいよ!速度違反者とか取り締まる時ドキドキしちゃう」



この正義感の強さが


裏目に出なきゃいい。



心配が胸を締め付けて


身動きがとれずに


あぐねて俺は


六花をいっそう強く抱き締める。



すると六花は


ため息をひとつつき


「しーんぱいしょう♪」


と、俺の尻を揉んだ。



「おい、やめろよ痴女!」



普段、触られなれている場所でもない。


俺が焦って声を大にすると


六花はまるでオヤジの様に


ねっとりとした喋り方を演じた。


「なぁによぅ、痴漢じみたこといつもするのはだぁれぇ?」


「俺のケツは高いんだぞ」


「へぇ?いくらするの?」


「一億万円!」


「ぼったくり!!」


二人で目を見合わせて笑う。


そんなひとときがとても好きだった。

ひとひら☘☽・2020-05-08
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【ForGetMe~クロとユキ~第五話住職】




「次は、ここか……」


俺たちの前に聳えるのは


最大勾配37%の


日本一の坂とも見紛うような


石階段だった。



杉浦は、耳の穴を


ほじり倒して呟く。



「あー…クロ、頼むわ」


「は!?」


「俺、病弱だから、こんな階段無理」


「お、俺だって嫌ですけどぉ!?」


「へぇ、奇遇だな」


「ここは2人でだな」


嫌がっていても仕方がないと


俺が言葉を吐くと


杉浦は気が乗らない、と言う。


「ここはスルーして次に行くという手もあるぞ」


「仕事!ほら行く」


「あー俺、何で刑事になったんだろうな…完全に早まった」


本気でそんな事を呟く、


杉浦の腕を力いっぱい引っ張り


俺は一言、声を張った。



「それな!お前ほんと、何で警察なんか目指したんだよ」


「…さぁ?」


「ったく、初心すら忘れてたら世話ねえよ」


「ごもっともで」



杉浦は自嘲して、


俺のベルトに手を引っ掛け


他力に半分身を預けて


急な石段をやっと登る。



俺は杉浦の重みで


後ろに倒れそうになる体を



必死に堪え、


その筋トレの様な一歩一歩に


力を込めた。





ゼェゼェと息があがる。


身体は鍛えているはずなのに


これは、きつい。


あと少しという所で


俺は立ち止まり息を整えた。



「情けねえ、刑事の名折れだな」


杉浦は片口を上げて軽く俺を貶した。


「おま……人の力っ、借りて……ここまで登ってきたくせにっ、卑怯なっ」


「天才策士と呼んでくれ」


そう歯を見せ笑うと


未だ息の整わない俺を置いて


トントントン、と


リズムを刻むように登っていく。




「くそっ、杉……浦っ、待て、」


俺は悠然と石段を登っていく杉浦を


死に物狂いで、追った。





「こ、こんにちは」


ようやくついた寺は


昔ながらの薄硝子の引き戸。


勿論、インターホンもない。


戸を勢いよく引いて


俺は中目掛けて声を張った。



「はい、自坊に何か御用で?」


すると、袈裟を着て


頭を剃り上げた男が出てきた。



「…こういう者です」


警察手帳を見せると


お務めご苦労様で御座いますと


床に頭を擦り付ける坊主に問う。



「失礼ですが、立庵和尚様はご在宅でいらっしゃいますか」


俺は河原で聞いた仏の第3の名を告げた。


すると、坊主はかぶりを振り言う。



「立庵は、もう。八年前に亡くなった先代です。私は、立庵の息子の雪庵と申します」



また…亡くなっている……。



俺は、思わず杉浦の顔を見るが


杉浦は平然としたもので


玄関脇の長押に立てられた、


写真を見上げ、言の葉を投げかけた。



「あれが、先代か」


「はい、先代の立庵に御座います」


二人に倣い、


俺も先代と目を合わせる。


お寺のご住職らしく


丸めた頭と袈裟姿だ。


だが証明写真のように


口を結んではいない。


朗らかに微笑んでいて


まるで先代自身が


釈迦の様な面立ちをしていた。



「申し訳ないが、先代が映った写真を数枚見せて欲しい」


杉浦は、そう言う。



「宜しいですよ、少々お待ち下さい」



雪庵は、父譲りの


釈迦のような面持ちで笑うと


奥へと戻り、やがて一冊の


アルバムを抱えて


すり歩いてきた。



「申し訳ない」


「いえ、暫く出しても居なかった物なので、父も喜んで居ると思います」


雪庵にどうぞと差し出され


アルバムを開く杉浦の手元を


俺も覗き込んだ。



「これは自坊の檀家様方です」

「こちらは説法会の時に撮って頂いた写真です」

「こっちは従兄弟会で……」


説明を聴きながら見る立庵は


やはりどれも笑っていた。


いつの写真も


檀家の人達や


家族の中心におり


その中の誰一人として


笑顔でないものはない。


こんな生き方が出来たらと


思わずには居られない程だった。



「立庵さんは、いいご住職さんだったんですね」


心からの言葉が溢れると


雪庵は嬉しそうな笑顔を作り、語った。



「ええ、それはもう。10年前に大きな地震があった際に、御本尊を収めている御堂が一部半壊しましてね、檀家さん方に修繕費を求めようかという話にもなったのですが、結局先代は皆も苦しい時なのだからと、最後まで首を縦には振りませんでした。それどころか、備蓄していた米などを境内で炊き出して、近所の人に配って歩いたりなんかしましてね」


雪庵は、目を細めると


遠い日を思い出すかの様に


言葉を繋ぐ。



「そこの石段、登って来られる事もお辛かったでしょう?」


「ええ、ま……」


「そうだな、死ぬかと思った」


俺は言葉を濁そうとしたが


またも杉浦の本音が爆発した。


すると、雪庵は緩やかに笑む。



「私も外への務めの際にはとても苦労致します。恥ずかしながら出たくないと思う事もしばしばですが、先代は檀家様の家で病人が出たとあれば、札を持って出向き、1日何度となくあの階段を上り下りしていました。晩年は病に侵されながらも、そういった務めは続けておりましたので、私の事など仏の元から不届き者と怒っておいででしょうね」



人柄も、人望も厚い


何よりそれが雪庵の口ぶりから


憧れとなって示されている。






期待はしていなかったものの


第三の寺の住職も、空振り。



現場に幾つか不審点はあるものの


同僚も当日あの河川敷で


何かを見たという目撃者を探せずに


困窮している。



上は、どうせホームレスだろう


そんな顔を隠さず


着々と自殺の方面で


捜査を打ち切ろうという構えだ。




あの仏は、


一体どこの誰なんだ。



日は翳る。


聳えて見えた山寺の上から見えたのは


橙色の見事な夕日だ。



一瞬、


袈裟を着た立庵和尚が


見下ろす険しい石段を


ひとつずつ登る姿が


見えた気がした。




「なあ、クロ」


「ん?」


「手でも、合わせておくか」


珍しくセンチメンタルな


杉浦に同調した俺は


立庵和尚の幻と


美しい夕焼け空に


手を合わせて祈る。




人の為に笑う人間が


どうか損をしない世界を、と


祈らずにはいられなかった。

ひとひら☘☽・2020-05-05
幸介
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心根
優しい
温かい
推理
どうして
好きな人
幸せとは

彼はいつも自分を痛めつけていた。

なぜなら彼は

そうすること以外の救いを知らないからだ。

:.゚✾☂・゚・。花吐き。・゚・☂✾゚.:・2018-12-11
キツツキとフクロウ
警官
自傷癖
自傷
無知
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劣等感
最終便の花弁
黒薔薇の無常

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折れそうなくらい細い腕で
彼女はねるねるねるねを
練っている。
彼女が何者なのか
誰も知らない。
悪いことを
してるわけじゃないので
警官も黙って
見ているしかないのだ。

伊田よしのり・18時間前
ポエム
彼女
ねるねるねるね
警官

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