水槽 透・2021-06-07
透明に染る夜汽車
波乱の赫茲
飛ぶように落ちた
指先は塩花に融けだす
今夜、スネルの窓に
手を伸ばしても
少女の花弁
衝動のまま
表情を濡す
ひとりの少女
ひとときに咲く花よ
ひとの口付けに紅く
未だ見ぬ空の色
深緑の翼はかつて
あの雲の上を望んだ
君との想い出は
つまらないほど
綺麗だったよね
私が死ぬ時は
必ず蝶を掴み壊して
道連れにしよう
お前にも罪があると
生きる勇気も
死ぬ覚悟も
私は無かった
蝶のノクターン
夢だったから
感触(ふ)れられていた
名/青争
職/学生
好/透明、水族館、夜、狐
住/幾何学的な夜明けの箱庭
人/いつまでも美しさに囚われている
月の軌跡と憶い出の残穢
誰かの眼に探される前に
壜に閉じ込めてしまおう
美しいものが
必ず棘を隠しているなら
私はたぶん
あの虫籠の蝶に殺される