深波・2022-03-28
詩
這いつくばう為の翼が欲しい
空を駆ける力があれば
あの孤独な手のひらを
ぎゅっと握りしめることも
その指に小さな傷をつけることも
すとんとできてしまえたはずなのに
生憎、私にはそれがないから
空を見上げながらずっと
泣くことすらできないで
そのままの顔で笑っている
空を飛ぶのって
どんな感覚なのだろう
私はきっと空では泣ける
這いつくばう為の翼が欲しい
それさえあれば私は
パズルがきちんとはまるみたいに
幸せになれた
そう、幸せになれた
私はすぐに手を伸ばせば
幸せになれる立場の人
それなのにそうしないのは
不幸に浸っていたいから
そうじゃないとあの手のひらの
その指の、瞳の
良さに気が付けなかったって
なんとなくの予感がするから
だからこれからも力を手にせず
地上を飛んだままでいれば
新しい懐かしさに
出逢える気がしてる
夢から醒めたとき
あなたのことを
忘れていますように
淡いゆめもみんな溶けて
空を飛ぶことさえ億劫になる
悪魔と神の狭間でいるより私は
地を這う俗な失望でありたい
同意して欲しいだけの感情が
風化してゆく夏、
遮光カーテンに隠れて
本音は揺蕩うのね
引っ越しで亡くした浴衣は
綺麗な朝顔だった
柔らかな風の
吹く予感すらなく
ただひたすらに洞窟を
彷徨い歩きながら
わざと後退してみたり
それを暗さのせいにしてみたり
情けなくなって転んで
立ち上がる気力すらないから
太陽を見つけるのは
もうお終いね
だって本当は私
光なんて求めていないから
どこにでも希望はあるなんて
そんなのまっぴらな嘘
いつでも私に差し込んでくるのは
真っ白な闇、ただそれだけ
でもそれなりに歩いてみたら
なんだかんだで
岩壁が明るく照らされて
鬱々、小雨、ぜんぶ晴れて
洞窟の出口には
うそみたいに綺麗な桜が
はらりと咲いていましたとさ
私は花びらを
ぎゅっと踏みつけて
希望の唄を
口ずさみました
蛾の羽ばたきをみたときみたいに
胸騒ぎがキュッとして
どこかで生きているくらいなら
死んでしまえばいいのに、と
愛を込めて呪いました
誰かの泣き声で
今にも音割れしそうだった青
只中にいるときは
わからなかったのに
振り返って見てみると
それは鮮やかな色をしていた
どこにいるのか知っているのに
どこにいるの?ってとぼけてみたり
それは私が弱いからだね
幻のエンディングを
いつまでもなぞっていることを
馬鹿らしいと言って
笑ってくれる人なら
どれほどよかったかな
鬱屈したアスファルトは
雨に濡れて黒かったね
コミカルさつじんき
あかいゆめをみよう?
わたしが泣き叫ぶのは
ロボットのためではなく
炎を増やすため
極彩色の絶望で
塗り固められた市民たちを
救う気すらないのに王族気取りで
通学鞄の形さえ
忘れてしまいました
低血圧気味で
満員電車に揺られる
セーラー服のぼくは
どこまでが夢なのかも
わからぬまま
不安定な命の価値に
ずっと怯えていたような
でもそれは
守りだったのかもしれませんね
するりとこぼれ落ちるときの
臓器の浮遊感が心地よくて
もう這い上がることさえ
やめてしまった
それでも平等に
空が掲げられていることを
嬉しくも悔しく思うよ
ひとみの奥に凝縮された
たましいみたいなかたまりを
信じて、その上で
さらに受け入れたくて
でも手に取ることは
最後までできませんでした
リセットボタンはなかったし
私は余生を謳歌してる
初めから知っていたのかも、
本当は空が続くことを
でも、怖くて、
だからこそ刹那を愛すため
利用したのだろうな
きっと私たちは
二人して同じように
未来についてそんなふうに
捉えていたんでしょうね
つくりたいうんめいなくて
たまたまついてるバラエティ
わたしも価値なくなるし
そのうち勝ち目なくなるし
こいつもどうせいなくなる
だったら端から付与すんな
お願い神様わたしなんか
いらない奴と言ってくれ
何かが違ったはずなのに
その何かは実は何もなくて
違ったはずなのに、の
思いだけ抱いて
気持ち良く死ねるのを
今か今かと
待ち望んでいる
そんな生に意味はなくて
でもバズった命にも意味はないし
天使みたいに綺麗な
あの女優の命にも意味はない
私たちはどこへ逝くのかな
ぼくの存在なんて
すべての命に忘れられたとて
証は消えやしないんだよ?
過去の泥をきらめき補正
それだけが趣味です
衝突事故に憧れている
好きな人のために
カレーライスを作りたい
何もかもが無縁です
ぼくは電車で
寝るような人ですから
ふうと息を吹けば
飛んで行ってしまいそうな
涙の粒たち
ひとつひとつのひとみには
ちがった彩りがあるはずなのね
ねえカムパネルラ
自己犠牲はうつくしいのかな
冬に咲く花火はなくて
水晶も金剛石もずっと綺麗よ
もうあの日の私には
ログインできません
私の傷の
美しさを知っていた人たちは
みんな私を
夜まで泣かせます
風が吹いただけで寒がるくせに
刺されても痛くなかったあの頃の私は
今もどこかで
電車を待っています
ネイルでつけ上がり
まつ毛はとこしえ
皮膚がプラスチックならよかったのに
からだは福袋
どうして使い道
レクチャーしてくれないの
おしえてよ神さま
そんなのだってあまりにも