蝶番・2024-08-28
discovery
あの人は
嘘をついたんじゃなくて
おまじないをくれたんだ
そうして
毒にも薬にもならない
ぎりぎりの優しさを
この身に収め続けて
わたしは今日も生かされている
今年も
あなたたちの声に射ぬかれた
「そこにいるだけで尊い」
そういうものの証明は
歩いて観て聴く
実存の中にある
まさかわたしが
夜の住人になるとは思わなかった
悪い習慣は調整していきたいけど
変わるわたしもざっくり許して
ひとりで生きてない
一人の夜に包まれる
それぞれのやり方で
見つめている眼と眼と眼と眼
正義は声高であってはいけない
徒党を組んではならない
それぞれの心の奥に揺らめき
だからこそ大事に磨くもの
雑多で生き生きとした気持ちを
言葉に表そうとしても
なんだかうまくまとまらないんだ
それでも十分満足だから
喜びは言葉少な
口角がきゅっと上がり開かないしね
どんどん時計を早送りして
半ば意識を飛ばしとく
違う物語のたくさんの生を
少し遠くから眺めるうち
時には自分事のように撃ち込まれたり
でも、それって
回すつまみがあったからできたこと
もう回らないかもしれないと気づいた日
その先は断崖だ
雲ひとつない空
はっきりするって
やっぱり満たされる
わたしには暴きたい欲があるんだな
心は曖昧なままで
許容できるようになった
むしろそれを美徳と微笑めるけど
体の中は見透かしたい
細部まで開いて
真にわたしの体をわたしのものに
いかにも綺麗事に見えるフレーズが
絶望をくぐり抜けた末の境地だったりする
言葉を適切に用いるのは難しい
でも、正しく受け取るのはもっと難しい
それはとっくのとうに過ぎてたんだ
なつかしさと手をつないでるから
絶望のにおいは甘い
楽しくなきゃやるわけないよ
きみの声にはっとする
「楽しい」が当たり前に一番の人は
そうじゃない嗜好性を持った人間を
理解できないのは仕方ないのかもしれない
それくらい楽しいは正しく強い
健全なる鈍感
そんな視線と評価は笑みで切って
好きなものを大事にしよう
好きなものを好きな自分を確かに守ろう
長く終わりを夢想してきても
いざ目の前にすると恐れが立つ
経験してみないとわからなかったことが
これから年々続いていくのだろう
振り落とされないよう
飲み込まれないよう
己を叱咤し赦しながら歩を進める
どれだけ心は鍛えられるだろう
これを成長期と言わずして何と言うのだ
離れるからわかる
気忙しく窮屈な日々が
ことり、と音を立て
鈍く光る宝物になる
そんないつか
風に沿って行っても
いつかは引き返す必要がある
帰るつもりならば
どこまでも歩いているうちに
風向きが変わることもあるだろう
でも、それがいつかは誰にもわからないこと
寝込んでも
鏡に映るシルエットに
思わずパワーチャージ
夢みたいな朝の虹も
ちゃんと受け取って
どんな光も反射する
わたしだって確かにここにいるよ
自分の世話をすること
その日が来るまで
なだめたり 励ましたり
いつも見ている
一緒に歩いていく
きっと最初にした約束
わたしとわたしの指切り