桐・2021-08-23
迎えに来て
étincelle
真っ暗で
つめたくてあつくて
時間が眠って
朝が来なくて
ひとりぼっちで
君がいないだけで、僕の部屋はこんなにも
幸せってきっと、
長い長い人生のうちのすこしを、
きみと共有できることを言うんだね
忘れないで、なんて言いたいけれど
忘れることで前に進めるのなら
忘れたことが前進の証なら
僕のことなんてもう、思い出さずに笑っていて
守るとか守られるとかどうでもよくて
ただ君を傷つけて
君だけに傷つけられたかったんだ
顔を顰めて太陽に背を向けて
夜へと歩き出す
そんな夏でもいいじゃない
異端者の振りをして
今日もまた、正当化
この気持ちが
「好きだった」に変わったら
どれだけ楽になるだろうか。
未だに、わたしの心を奪って離してくれない
鮮烈に輝いて わたしを焦がしてしまいそうで
ページをめくる瞬間
窓の外を眺める時間
新しい靴で地面を踏みしめる、第一歩
心が躍る音がする
ガラスみたいな瞳が
陶器のような指先が
真夜中よりも黒い髪が
薔薇よりも赤い唇が
それでも確かに鼓動する心の臓が
微かにあたたかい頬が
僕の視覚を奪って、夜に引き摺り込む
そんな錯覚
蝶のように、風のようにゆらめいて
アルコールみたいにくすぐって
いつしか視線が交差して
世界に2人しかいないみたいに
ラムネ瓶のような瞳も
花火のような笑顔も
朝顔のような儚さも
水面みたいに煌めく髪も
炭酸のような笑い声も
全部、僕だけが知ってるはずだった
手を繋いで眠れば
夢の世界にきみを呼べる気がしたの
「死にたい」を吐き出して喉を傷つけ
だれかの「頑張れ」に心を抉られた
明日なんてこなくても
希望なんてなくても
この部屋に光が差し込まなくても
繋がった手の温もりだけで満たされる
そんな幻想に溺れていた
閉じ込めた青色 きみとの青色
まぶたの裏でちかちか
吸い込むと
身体の中に青が廻る
次の青も
ふたりで 探しに行こうね