深波.・2日前
小説
【ボイス】
1.
大丈夫?って聞かれなきゃ自分が大丈夫じゃないことを話せない人が苦手だし、大丈夫?って聞かれて、大丈夫じゃないのに大丈夫だよって笑って答えておきながら闇抱えてる人はもっと苦手。
不誠実なコミュニケーションだなって思う。
私のこと信用してないから本当のこと言わないんだろうな、って悲しくなるよ。
誰かのために死ぬのってそんなに美しいことなのかなって、もしもカンパネルラとザネリがいたら尋ねてみたい。
おでこにちゅーしてくれたら全部つながれるのにね。
複雑な言葉も行為も、実はなんにも意味をなさないから。
春野君はあんまり話さない。
特定の友達といるときしか声を発さない。
発表の時間があるときも、小さな声で、しかも身体を少し震わせながら、それでも気丈なふりをして、必死に声を張り上げてる。
今の時代、珍しいよな。
ああいう誠実な人。
誠実っていうのは、自分の感情に嘘がつけない不器用な人って意味で。
だから春野君に激突して怒らせてみたいんだけど、でも私は春野君との接点なんてひとつも持ち合わせていないから、そんなことしたらただのテロリストでしかない。
『ボイス』