幼稚園の頃、
一度も話したことのない
“くらすめいと”に、
初めての恋をした。
あれはまさに一目惚れ。
背が低くめで、細身で、
照れ屋さんで、
『かわいいね』と言われると、
すぐに顔が真っ赤になり、
首を傾げて照れ笑いをする。
そんな彼を、
私はいつも遠くから彼を見つめていた気がする。
そしてそのまま、
一度も話したことがないまま卒園した。
私たちは、
それぞれ別の小学校、
そして中学校へと進学した。
友達に初恋相手を聞かれれば、
彼のことを話していた。
その頃には私にとって彼は、
“思い出の中のあの子”だった。
中学校で私は剣道部に入部した。
うちの中学は剣道弱小校で、
よく他校の選手や顧問に馬鹿にされていた。
とある大会のとき、
弱小選手特有の憂鬱を紛らわせるために、
ウォーミングアップを終わらせたあと、
友達とプログラムを開いた。
そしてプログラムの選手一覧を見て衝撃をくらった。
そこに初恋の彼の名前があったからだ。
しかも、県内でも1、2を争う強豪校のところに。
私はすぐに、彼を知る仲間に教えると、
『え、今頃?』と苦笑いされた。
私以外の子はみんな知っていたらしい。
私はすぐに、その仲間たちと、
彼の名字が刺繍された垂れネームを探し、見つけだした。
そして、数年ぶりに彼の姿を見て驚いた。
身長がとても高く、肩幅もガッチリとしていて、
まるであの頃の面影がなかった。
だけど、顔を見ると、
私の知っている“あの頃の面影”がしっかり残っていた。
彼の姿を大会で見かける度に、
『大人になったなぁ…』と思った。
そして3年生になり、
最後の大会(中体連)を迎えた。
部活を今日で引退する緊張と寂しさ、
そして部活を引退したら、
もう二度と彼に会うことはないと思うと少し寂しく思った。
けれどその時の私は、
大人になった彼を一目見ることができて嬉しかったし、
彼も剣道をやっていたという事実が純粋に嬉しかった。
それだけで十分だと思った。
そして1年後、
高校に入学すると1年生の教室に『奴』がいた。
私と同じ制服を着て。
部活動組織会のため部室に向かうとそこには『奴』がいた。
私と同じ入部届を持って。
懐かしくも新しい恋の始まりと、
もどかしくてじれったい片思いが始まる予感がした瞬間だった。