『愛があったら。』下
※大人要素あり
邪魔、しないでよ
言ってしまった
言って、しまった
嫌われた、終わった
私は怖くて
無言でその場を立ち去ろうとした
その時、蒼ちゃんが口を開いた
「邪魔やったか、ごめん。」
蒼ちゃんの顔は
悲しそうに歪んでいた
傷つけたのか
そんな想いでいっぱいだった
もちろん、そこには居れなくて
私は、家に帰った
いつもよりも寒い気がするのは
気の所為か
ご飯食べる気も何も無くて
私は眠りについた
その日から、五ヶ月経った
蒼ちゃんの店には行けてない
あの生活も、変わらない
今日は、初めての男と会う予定
場所は、蒼ちゃんのカフェ
着いてから、少しガッカリした
閉店中、と書いてあったからだ
帰ろうと思ってたその時
店が開く音がした
「…りーちゃん、俺。
頼んだの、俺。」
消え入りそうな声だった
私は何も言えないまま
久しぶりの
あのカフェへ入った
「…どうして?」
やっぱり、最初の言葉はそれだった
話を聞けば
私の事が気がかりで
Twitterを入れて
私の垢を探したらしい
私ばかだから、自撮りも載っけてて
それで見つけたらしい
あの時と、同じような気持ちになった
苦しい、ただ、苦しい
「…ね、する、の?」
いつまでもこのままじゃダメだから
私は蒼ちゃんにそう尋ねた
「…したい。でも、どうしよ。」
目が合うと、気まづそうに目を逸らして
少しの沈黙が流れた
「いいよ、しよ。」
私はそんな沈黙を破る為
初めて自分から
求めた
「お金、払うから。」
キスする寸前
蒼ちゃんのその言葉に
一歩、離れてしまった
乱れかけた服も治した
だって、だって
「…お金払ったら、愛じゃない。」
言っちゃった
愛なんて、最初から無いのに
でも、言葉は止まんなかった
「…今までの男と一緒じゃやだ…。
求めないで、?求めさせて、?
愛してよ…。私を。身体じゃやだ。」
バカなこと言ってるのは
分かってた
でも、蒼ちゃんだけは
今までの男と一緒じゃ嫌だった
「りーちゃん、愛しとる。
だから、助けたいから。
金は払うよ。絶対、払う。」
蒼ちゃんから返って来た言葉は
私の求めるものじゃなかった
おいで、と言うように
手を広げる蒼ちゃんの元に
自分から行く事は出来なかった
だから、同じように手を広げた
蒼ちゃんは直ぐに来て
直ぐに求めた
初めて、私からも求めた
零れる涙が止まらなくなって
寂しさで沢山な私を
蒼ちゃんは、抱き締めた
強く、強く抱き締めて
壊した
「…ね、あ…し、て?」
嗚咽で上手く喋れない私に
「愛してるよ。」
そう返してくれた
でも、本当の意味で
心は満たされなかった
終わった後
乱れた服を治す私に
蒼ちゃんは、お金を渡して来た
それも、10万も
「…ね、愛してないの?」
「言ったでしょ、愛してるからだよ。」
私は、全ては受け取れないと
半分だけ、受け取った
その日は
泣きながら帰った
受け取ったお金が
愛だとはどうしても思えなかった
家に帰って
急に吐き気が来て
吐いた
吐きまくった
ぐしゃぐしゃになったメイクを
ちゃんと落として
蒼ちゃんの垢をブロックしようと
Twitterを開いた
ホームに、蒼ちゃんのtweetが
流れてきた
「愛してる」
たった一言
その言葉を見て、泣いた
何となく、もう会えないと悟った
もう依頼も来ないと思った
だから、ブロックは辞めた
高校は卒業出来なかった
パパ活をしている事がバレて
いじめが始まった
だから、退学した
それからもパパ活はしたけど
途中で気持ち悪くなって辞めた
19になって、就活を始めた
面接先は、カフェだ
「ダメだったか。」
ふぅ、と息を吐いて
たまたまそこにあった
電気屋を眺めた
ニュース番組なんて
何年ぶりに見ただろうか
「本日は近頃話題の
カフェ、LoveisLeeの魅力を
徹底解説致します!
ここのカフェのオーナーは
たった一人でこの店を開業し
そんな中で出会った
ある女性を待っているとかなんとか。
そんな話題のカフェ
LoveisLeeのオーナー
新庄 蒼雅さんに
話を聞いてみましょう!」
「えーっと、新庄です。
こんなに人気なるなんて
思ってもみなかったですけど
嬉しいです。
この店の名前のりーは
僕が、一目惚れした人のあだ名で
傷つけてしまった、女の人です。
いや、子供なのかも。
そんな、りーちゃんの為に
僕は、23になった今でも
この店を離れてません。」
気付いたら、夢中になってた
少し髪の伸びた蒼ちゃん
少し声の低くなった蒼ちゃん
少し髭が生えた蒼ちゃん
少し変わった蒼ちゃんから
目が離せなくなった
私は、ヒールを履いてるのも気にせず
走った
私の記憶が正しければ
ここから10分程の所に
蒼ちゃんの店があるはず
しばらく走った所に
行列が見えてきた
きっと、ここだ
私は、お客さんの注意を無視して
店の扉を開けた
そして、注目を浴びてるのも
全部無視して
ただ1人
蒼ちゃんの元へ向かった
「…蒼ちゃん!」
広くなったカウンターの奥に
アルバイトの人と話している
蒼ちゃんを見つけた
蒼ちゃんは、私の声が届いたのか
カウンターから走って来て
私の事を抱き締めてくれた
「…りーちゃ…。りー、ちゃん、?」
「ただいま…蒼ちゃん!」
抱きしめ合う私達を見て
周りのお客さんが
私がLoveisLeeの
Leeだと気付いたのか
拍手が起こった
私と蒼ちゃんは
ここじゃ目立つからと
外に出た
「ごめん、あの金さ。
愛だった、本当に。
いや、愛ってか独占欲かも。
これ以上他の男に渡したくなくて…。
本当、ごめん。」
「…ううん、愛なんて無いって。
愛があったら、って、
勝手に思ってただけだから。
愛があったんなら、良かった。
私の方こそ、ごめんね。本当。
ねぇ、愛してるよ。蒼ちゃんは?」
「愛してるよ。愛してる。」
きっとここは
泣くシーンなんだろうけど
私と蒼ちゃんは、大爆笑した
それから、キスをした
カフェ、LoveisLeeは
奇跡の恋をした夫婦の運営する
少し、ロマンチックな
カフェになった
このカフェの人気メニュー
「愛はあったよ。」
と言う名のついたケーキを食べると
恋が成就するという
噂が出来てからは
更に盛り上がった
「愛してる?」
「愛してるよ。」
「私も、愛してるよ。」
愛は、ちゃんとあった
愛は、あったよ
こんなにも沢山の愛が、ここに
END