⚠こちらは、文豪ストレイドッグスの夢小説です。
文スト創作キャラの金子みすゞさんが、宮沢賢治くんに恋愛感情を抱いている描写があります。苦手な方は、お気を付けください。
賢治くんは、今回も名前だけです。
次の章か、その次の章で終わると思います。
【きみと花火を】
第一章
「はぁ…」
大きなため息が、部屋の中で響く。
「どうしましょうか…」
みすゞは、花火大会の件で頭を抱えていた。
まだ、賢治を誘えていないのだ。
与謝野に喝を入れられ、何度も勇気を出そうとしたのだ。
でも、社内で、大勢の前で誘うなんて、みすゞには到底無理。
つまり、二人きりになる時間を作らなければならない。
だが、近頃みすゞは、賢治と話をしていない。
任務で一緒になることがなく、帰る時間も別々。
もう花火大会までの時間がない。
「…明日、明日こそ誘ってみせます。」
そう決意し、みすゞは床についた。
だが、次の日が休みという事を、みすゞは忘れていた…。
「なんで、よりにもよって今日が休みなんですか…」
いつも通り、出勤する準備をしていたら、与謝野から、
『今日、アンタ休みだろ?楽しめよ』
といった内容のメールが送られてきた。
花火大会は2日後の日曜日。
土曜日は、近くのデパートの定休日だから、浴衣は今日中に買わないといけない。
みすゞは、敷いたままの布団にポテッと寝転んだ。
「私って本当ダメだな。」
(仕方ないですよね。誘えなかった私が悪い。)
(与謝野さんに、あんな事言ったのに。本当に意気地がないな。)
あぁダメだ。自己嫌悪感がどんどん湧いてくる。
みすゞは、このままではいけないと感じ、気分転換に本でも読もうかと、布団から起き上がった。
あぁ、これにしよう。
みすゞは、読みかけてあった1冊の小説を手に取った。
少女と、少年の、淡い恋の物語。
(私も、この物語の少女のように、可愛くて、素直な女の子になりたいな…)
そんな事を考えながら、ページをめくっていく。
物語の最後章に入ったころに、みすゞはふと時計をみた。
読み始めたのが10時くらいだ。
もう4時間ほど経っている。
(お昼食べなきゃ…。でも、あんまりお腹空いてないんですよね…)
なにかないかと、冷蔵庫を開けようとした時だ
家のチャイムが鳴った。
「みすゞ、居るかい?」
聞き覚えのある声…この声は与謝野だ。
タイミングが悪すぎないか、とみすゞは一瞬思ったが、誘えなかった事を言わなければ、と思い、少し躊躇ったものの扉を開けた。
「どうしました、与謝野先生。」
いつも通りに見えるよう、笑顔を作る。
手元を見ると、洒落た紙袋を持っている。
(もしかして、お菓子か何かのおすそ分けかな。)
「それ、何が入っているんですか?」
興味が湧き、与謝野に聞いてみる。
「あぁこれは…」
「浴衣だよ。アンタのね。」
一瞬、頭が真っ白になった。
だって、あの時言ったはずだ
「…浴衣は、賢治さんが了承してくれたら、と言ったじゃないですか。」
「私、まだ…!」
続きの言葉が出てこない。申し訳なさすぎる。俯いていると、
「…そうだっけ?忘れてたよ。済まないね。まぁでも、着るだけ着てくれよ。」
と、与謝野がみすゞの背中を押し、部屋に入っていく。
「ほら、こんなんだ。可愛いだろ。」
与謝野が紙袋から浴衣を取り出した。
みすゞは、それに目を奪われた。
浴衣の中で、金魚が泳いでいる。
「…流水紋ですか?」
紺を基調とし、白い流水紋の柄が描かれている。
そして、一番目を引くのが、所々に描かれている紅い金魚。
「あぁ、みすゞに似合うと思ってね。」
凄く、綺麗。
「…綺麗、ですね。凄く」
じっと、与謝野が手に持っている浴衣を眺めていると、
「…気に入って、くれたかい?」
と、与謝野が聞く。
「…でも、良いんですか。私…」
みすゞが続き言おうとすると、与謝野の手が口をふさいだ。
「これは、私がみすゞの言ったことを忘れて買ってきちまったやつだよ。」
「まぁ、だからさ。折角なんだし着てくれよ。」
な、と優しい笑顔でみすゞを見つめる。
(この人には、敵わないな)
そんな事を考えながら、みすゞは
「はい。是非、着させてください!」
と微笑んだ。