ゆきま 情緒不安定・10時間前
ゆきと✖️さくら
助けられなかった。
あの場でなにもできなかった。
あとから来る後悔が俺を押しつぶす。
俺を━━━━━━。
「違うだろ!」
「遅い!」
部屋中に広がるするどい声。
広がる度に、アニメみたいな効果音。
殴る音。蹴る音。叩く音。
「いやっ…ごめんなさい…」
部屋に吸い取られるくらいの小さな声。
本を読んで誤魔化してた。
妹の綺麗な髪がどんどん赤く染って。
体中、人形のようになって。
助けたい。
助けたい。
思っても無駄。
言ったら…
俺が殺される…
妹も…殺される
「パチンコ行ってくる、逃げんなよ。」
父が消えたあと、妹はいつも俺によってくる。
兄の役目も果たせない俺がどんどん虚しくなった。
「やめてください!お父さんっ…やめて!」
部屋中に響き渡る悲鳴。
「役立たず、お前なんか殺してやる!」
殺す……?なに言ってるんだ…?
「父さん!桜に手を出すのはやめてっ…!」
遅かった。
さくらは…
気を失っていて…
「(救急車呼ばなきゃっ…)」
すぐさま携帯を取ろうとした。
でも
「逃げれると思うなよ。」
俺も気絶されられた。
気づくと桜は息絶えていた。
俺のせいだ。
俺が悪いんだ。
俺が死ねば…
俺が…
死ねばいいんだ…
「役立たず、酒も買ってこれねぇのかよ。」
殴られる、死ねる、思ったのに。
「死ねるとか思ったか?」
死ねない。
なにも手段がない。
それからしばらくして、俺は開放された。
…でも、俺は死ななきゃダメなんだ。
ごめん。ゆきま。けー。
さようなら。
「待って!お兄ちゃん!」
…さ…く……ら?
走馬灯かな。
幻覚かな。
「私生き返ったから!ほら触れるでしょ!」
桜が生きてる。なんでだ。
桜をすぐに抱きしめた。
「ごめんっ…こんなやつで…」
「お兄ちゃんが助けてくれても、私は死んでたよ。」