はじめる

#チーフ

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全20作品・

99%叶わない恋でも、
残りの1%に期待したい😌

ゆうか・2022-09-08
24歳差
年の差恋愛
バイト先の人
チーフ
好きな人



【Real Me 性別のない人~第九話 急接近】



ガシャガシャガッシャンッ



バイト中


客が食べ残した皿を重ねて


運んでいた最中のこと。



奈々との事が頭を離れない。


その事で頭がいっぱいだった俺は


汚れた皿を一気に


床に叩き落としてしまった。




客の目が一気にこちらに注がれる。



「も、申し訳ありませんでしたっ」



楽しく呑んでいた客に


丁重な謝りを入れ


片付けを始めようと


ロッカー室へ入ろうとした時


千祐さんがホウキと


ちりとり、モップを


持ってきてくれた。



俺の掃く割れた瀬戸皿を


千祐さんはちりとりで


受け止めながら


声をひそめる。



「想」


「はい」


「お前らしくないな、大丈夫か?」


「……すいません」


「上がったらルームに来い」


「うっす…、わかりました」



きっと、怒られる。


そう思っただけで


胸は締め付けられて


店の床を眺める目に


涙が滲んだ。


それでも


涙を必死に堪えたのは



この涙に気付かれたくない…


そんな意地だった。






「想くん、おつかれさまー」


「おつかれっす」


「また明日な」



高校生のバイトは


22時の上がりが


義務付けられている。



もっと働きたいけど


法律が物をいう世界だ。



スタッフが未だ


忙しく働き詰める中


俺は、


チーフルームのある


店の2階へと上がった。



コンコン


拳でノックすると


俺の気持ちとは裏腹に


軽快な音が響く。



「どーぞ」


返ってきた気の抜けたような


千祐さんの声に


心が跳ねた。



「失礼します」


一応の挨拶を済ませ


中に入ると


千祐さんは黒縁の眼鏡をかけ


店の書類に


目を通しているところだった。



部屋の戸を閉めると


書類を置いた千祐さんは


「呼び出して悪かったな」


と、柔らかく笑った。



その笑顔が痛い……。


「あの、お店のお皿割っちゃって……あの分、バイト代から差し引いといてください」


俺が勢いよく頭を下げると


千祐さんは笑み声のまま


俺に近寄り、頭を


ぐしゃぐしゃと撫でた。



「皿代なんかいいさ」


「え、でも」


「悪いことしたって思ってねえ奴からは天引きすっけど、想はちゃんと反省してんだからいーの」


ミスした時の


人の優しさが


こんなにも


心を温めて


こんなにも


涙を誘うのは


一体どうしてだろう。




千祐さんの優しさが


心を包み込む。




さっきの意地はどこへやら。



目を潤ませた涙は


容赦なく床に落ちた。



やばい



情緒不安定。


プラス


意味不明。



それなのに


千祐さんは


俺の頭に手を置いたまま


心配そうに眉を下げる。




「想、やっぱお前なんかあったろ?」


「なんでも、ない……っす」


「お前嘘下手な」



千祐さんは俺の反応を待つように


しばらく無言で様子を窺っていた。



だけど


どう言っていいのか


わからない。



俺が本当に


嘘が下手な人間なら


とっくに


奈々にも「MTF」だと知られ


千祐さんにもこの想い


伝わっているでしょう?



彼女がいるということも


千祐さんに咄嗟に秘密にした。


友達にも親にも


体と心の性別が


真逆であるという事を


話せていない。



嘘、嘘、嘘、嘘だらけ。



何処が嘘下手な人間だろう。



何も言えず突っ立って


涙を落とし続ける俺に


千祐さんはとうとう


ため息をついて


こう、呟いた。



「……ま、俺じゃ頼りになんねえか」


「え…ちが、そんなわけじゃ」


「わかってるわかってる、コウコや兄貴の方が物腰柔らかいから、相談しやすいよな」


そんな風に笑う千祐さんは


どこかとても寂しそうで…



やがてその心中を物語るように


千祐さんの手のひらは


俺の頭から離れていく。



「……やっ」


咄嗟に俺は


その腕を両手で掴んで


そう、声をあげていた。


「想……?」


「あ、あ、頭……な、撫でて下さい」


「は……?」


「す、すんげええ気持ちいいんでっ!」




何を血迷った、俺っ。


さすがにこんな事、言うなんて


男が男に……おかしいだろ。


自問すると血液は


一気に上へと昇り


俺の顔を熱くさせる。



「え、あ、……おう」



ところがどうだ。


驚きながらも千祐さんは


俺の「変な要求」を優しく受け入れ


俺の頭を撫で続けてくれた。



涙は、まだ止まらない。


それでも伝えたい事。



「俺が……そ、尊敬してるのは、紗季さんでもコウコさんでもなく……千祐さんです。自分から2人と比べて、勝手に……落ち込まないで下さい。俺はちゃんと千祐さんのこと……」


ありったけの気持ち。


まっすぐではないけれど


伝えられるだけの最大級の表現。



「お、想ってますから」



落ち込んで欲しくなくて


ここにちゃんと


千祐さんを敬愛する奴が


一人はいるんだってこと


わかってほしくて


口にしたはずの言葉。



だけど伝えた直後の


ウラハ
心恥ずかしさが


とてつもない後悔を連れてきた。



ドキドキと


心臓の音ばかりが


耳に響く中……


千祐さんは


頭を小さくかくと


真剣な眼差しで


俺を見つめ、言った。




「……あー……どー…しよ」



やっぱり


引くよな……。



「お。男が、男に、ははは、な、何気持ちわりーこと言ってんしょーね」



気がつけば俺は


伝えたくて伝えた言葉を否定し


また自分の気持ちに


蓋をしようとしていた。




でも、嫌われるより


ずっと、いい。



涙を飲み込んで


俺は無理に笑って見せる。



「いや」


千祐さんはそう呟いて


「え…?」


言葉を繋ぐ。



「今、なんか俺……すげえ、」


「……はい?」


「ドキドキしてるわ」


「……は?」



「心臓の音…聞いてみるか?」




唖然とした俺の答えを待たずして


千祐さんは俺をトンっと


優しい手のひらで抱き寄せた。



途端に、跳ね上がる心音。


どくどくなんて


生易しいものじゃない。



ドドドドドド


騎馬隊が身体中を駆け巡る。



でも、本当だ……。


千祐さんの鼓動も


負けちゃいない。




「な、すげえだろ」


内部から耳に響く、


くぐもった千祐さんの声


決して背丈が

大きい方ではない俺が


長身の千祐さんに


すっぽりと包まれる。



仮病を使ったあの日より


ずっと近くに感じる息遣い


優しい体温。


仕事服からふんわり香る


店の料理の匂い。


俺と千祐さんの服が


衣擦れる音……。



「ち、千祐……さん」


やばい。


心臓、止まりそう。


頭に血が昇ってふらついた。


俺が裏返った声をあげると


千祐さんは我に返ったように


すぐさま俺を引き離す。



「はっ、あは、あはは……おっ男が男に、何してんだ!!あほか、俺は!」


どこかで聞いたような台詞を


慌てふためきながら


復唱する千祐さんの顔は


俺と同じくらい赤かった。




「そ、想、お前、顔赤すぎだぞ」


「なっ、千祐さんこそっ!」


「あ?そ、そうか…?」


「そー…っすよ」


「……おう、そいつは悪かっ…た」



嫌な汗をかきながら


俺は左


千祐さんは右


互いに


ちぐはぐな方向を見ゆる。



異様な雰囲気が


部屋中に漂っていた。



これは気まずい。



「あ、あの、俺」


この場を逃れるべく


俺は声をあげた。



「お、う。なんだ」


「か、帰ります」


なんて捻りのない逃れ方だろう。


それでも千祐さんも


俺が捻り出した駄策に


乗っかってきてくれた。


「そうだな、親御さんも心配するから」


「うっす」


じっと、千祐さんを見つめる。



理由はどうあれ温もりをくれた。


その事が嬉しかった。



言葉にはできない代わりに


俺は千祐さんに


深深と頭を下げて


踵を返すと


チーフルームの


戸を開く。



「あ、想っ」


呼び止められて


振り返ると


未だ茹で上がった顔をした千祐さんが


黒縁メガネをかけ直しながら



「気をつけて帰れよ」


そう、優しく


微笑んだところだった。




ああもう…かわいい。




いつものしっかり者の千祐さんとの


ギャップにやられ込んで


俺は、店を後にしたのだった。


【Real Me 性別のない人~第九話 急接近(終)】

ひとひら☘☽・2020-04-07
幸介
幸介による小さな物語
RealMe~性別のない人
幸介/性と言う名の鳥籠シリーズ
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学校

何かの間違いで、
好きになってくれないかなぁ

ゆうか・2022-10-27
24歳差
歳の差恋愛
好きな人
チーフ
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叶わない恋
叶わぬ恋
片思い

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チーフと付き合いたい💑

ゆうか・2022-10-27
24歳差
歳の差恋愛
好きな人
彼氏になって欲しい
チーフ
付き合いたい
職場恋愛
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叶わぬ恋
デートしたい

年の差恋愛辛い😢🌊

ゆうか・2022-09-08
24歳差
バイト先の人
チーフ
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あなたは正社員、私はただのバイト、
釣り合うわけないよね?

ゆうか・2022-08-01
バイト先の人
チーフ
正社員
好き
付き合いたい

【Real Me 性別のない人~第十八話 知られた性】




夕暮れが夜闇に変わる頃


街灯の光に照らされて


ふたつの影が揺れていた。



「じゃあなー想」


「うん、じゃあな」


「明日、学校来いよー?」


「わかった!」


眉を下げて笑いながら


わざわざ家まで送ってくれた、


奏斗に手を振った。







あの後、時間を潰して


奏斗と一緒に戻った教室は


ガヤガヤと騒がしかった。



いつもと変わらないその雰囲気に


僅かに安堵して


一歩足を踏み入れた瞬間


見事な程に教室内は


シンッと静まり返った。




席に戻るまでの僅か十数歩



昨日まで笑顔で


話してたクラスメートが


俺の体を避けたあの瞬間が


とても、苦しかった。




その後は担任に呼ばれて


騒動の発端を聞かれたけれど


奈々を悪者にしたくなくて


俺は終始無言を貫いた。




嘘をつき続けてきた


俺が、悪いんだ。




大きなため息をついて


玄関の戸をあけると


母さんが涙目でリビングから


駆け出してきた。




「な、何?」



靴も脱がずに聞くなり、



母はわなわなと震え出す。




「想…今日学校で……」






先生が、言ったのか


それは想定外だった。



軽く混乱しながら、平常を装う。



母に背を向け、靴を脱ぎながら


どうすべきかを考える。




「想……こっち向いて」


「ちょっと待ってー、靴、脱が」


わざと笑みながら告げた言葉は


頭の中がパンク状態の母には


なんの安らぎにもならなかったらしい。



「想…茶化さないで!」



聞いたこともないような


母の、泣き出しそうな声に


心の芯が痛む。



それでも俺は


茶らける事くらいしか出来ない。



「はいはい、何さ?母さん今日、恐いよ」


そう、母へと向き直る。


すると、母は


とうとう涙を零しながら


俺にやっと告げた。



「……性同一性障害、って……」



今まで、愛情を一心に注いで


育ててくれた。




男の子として。



それが突然崩れる……


全てが根本から入れ替わる



俺が、私になっても


同じように接してくれる?



眠れぬ夜更けにその瞬間を


何度も想像しては恐怖に打ち震えた。



いつか、両親には想いを声にして


話したいと思い始めてたのに。



先生に言われるとはね。


軽く笑いが込み上げる。




どの道


ここまで知っているんだ。


隠し通せるとは思えない。





「母さん、ごめんね」



もう、嘘の上塗りはしない。



「……俺、女の子になりたいんだ」



眼差し強く、そう告げた。



怒られてもいい。


反対されても仕方ない。


理解して貰えるまで


これまで嘘をつき続けた、


17年間の倍、かける気だった。



でも、母は泣き崩れるように


壁にもたれてこう呟いたんだ。










「ちゃんと産んであげられなくて…ごめんね」









思いがけない母の言葉が


心に突き刺さった。




ちゃんと、って、


何……?



学校での事が


一気に蘇る。



差別的な視線


母の視線はどうだろう



正常な判断が、出来ない。



なのに涙は溢れた。



息の根を止める程の


母の言葉に重ねて


心の叫びをそのまま返した…。





「ちゃんと……?ごめん、て……何?やっぱり俺……普通じゃ、ない、の?母さんも……俺の事やっぱり異常だって……そう思う、の?」



「想……あのね」



何か言おうとした母に踵を返して


俺は、家を飛び出した。


次に母が口にする言葉が


どんな悲痛な想いなのか


浴びることが、震える程、恐かった。




俺はやっぱり、意気地無しだ。



男にもなれない。



女にもなれない。



中途半端なままだ。




いっそのこと性別なんて



無ければよかったのに。




家を飛び出して、


何処をどう走ったのか


涙ばかりが溢れて


心の中が苦しくて



ふと見上げれば



辿り着いた先は



千祐さんがいるだろう



バイト先の居酒屋だった…。




「ち、ひろ……さ」



助けて、助けて



千祐さん、助けて



泣きじゃくりながら



何度も何度も



千祐さんを乞う。



仕事中なのに。


出てきてくれるわけないのに。



諦めながらも


千祐さんに会いたくて


千祐さんに撫でてほしくて


千祐さんの姿を


一目でいいから見たくて


裏口の階段で膝を抱え続けてた。




涙は止まらない。


ポケットが震える。


きっと母から


電話がきているのだろう。



何度も止んでは


繰り返し、震える。


悪い事しか考えられず


電話には出たくなかった…。



「千…祐さ」



空を見上げれば


長四角の、狭い空があった。



漆黒の闇夜に


雲に隠れた月がぼんやりと


光を放っている。



その景色の溢れる情緒が


また涙を止まらなくさせた。



「うー……どうしたら、いいんだよぅ」



必死に自分の性別と向き合ってきたのに


必死に闘ったはずだったのに



悔しい…苦しい、悲しい…寂しい




パンクしそうな想いを抱えて


もう一度



「千……祐さん……会いたいよ……っ」


そう、独白した時だった。





きぃぃ、裏口の錆び付いたドアが





開いた。

ひとひら☘☽・2020-05-04
幸介
幸介による小さな物語
RealMe~性別のない人
幸介/性と言う名の鳥籠シリーズ
トランスジェンダー
トランスセクシュアル
FTM
MTF
MTFを超えて
片想い
独り言
幸せとは
バイト
先輩
チーフ
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苦しい
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ねぇ、チーフ、私はあなたのことが
好きになってしまったみたいです💓

ゆうか・2022-08-01
バイト先の人
チーフ
好き

【Real Me 性別のない人~第十五話 寄り添うと決めたから】




「想……おま、なんで……?」



涙いっぱいの目で


しゃがみ込んだ千祐さんが


きょとんと俺を見つめてる。



「ストーカーみたいな真似してすんません……でも、体調、悪そうだったし、気になって……」


乱れた息を整えながら


千祐さんの側に膝をついた。



ぽろん、と


一粒の涙を落とした千祐さんが


俺の心臓を、締め付ける。


「千祐…さん……」



もう、放っておけない。



「……そ、う?」


千祐さんの、低い涙声。



俺は、思わず


千祐さんを抱き締めていた。



「おい、ちょっ」


「俺っ、見てませんからっ」


「……え?」


「だから、だからっ、思い切り泣いていいっすよ!!」



俺は、そう言うと


一層強く、千祐さんを抱き締める。


少しでも


傷付いた心が癒えるように。



千祐さんの特別にはなれなくても


千祐さんが疲れた時に


肩を預けられる、


宿り木みたいな存在になりたい。




やがて


千祐さんの手は


おずおずと俺の背に回った。



強くて、


優しくて


大きな千祐さんが


こんなに震えて


こんなに辛そうで


こんなに頼りない。





俺は、見てしまった。



躊躇いがちにコウコさんの


肩を抱く千祐さんの腕を。


その髪を梳く、


愛しそうな千祐さんの目を。



紗季さんとコウコさんが


乗ったタクシーを見つめる、


千祐さんの引きつった笑顔を。




千祐さんは本気で


コウコさんの事が好きなんだ…


その想いの深さに


改めて愕然としたけれど



ともすれば


俺に出来ることは


たったひとつ。



千祐さんの涙に


寄り添う事。



そう、決めたから。



俺は千祐さんの頭に


静かに頬を寄せ


母親が赤ん坊を抱くように


とん、とんと


千祐さんの背中を


優しく撫でる。



「う……っ、もー……かっこわりぃ……」


「気にしなくて、いいです」


千祐さんの涙が、痛くて


愛しかった。



知らず知らずに


俺の目にも、涙が浮かぶ。



俺の身体が柔らかかったら


もっと、千祐さんは


癒されてくれたのかな。



俺がもしコウコさんみたいに


強くて綺麗になれたら


乗り換えてくれたり


すんのかな……。


代わりでいいとさえ思えた。




どれくらいの間


人の目から


千祐さんの涙を


守り続けていただろう。


千祐さんの嗚咽が止んで


息遣いが変わった。



なんだか、苦しそうだ。




「……千祐…さん?」



抱き留めていた身体を


僅かに引き離して


千祐さんに呼びかけるも


応答はなし。


くったりと


俺の腕にもたれかかり


涙を流したまま目を閉じている。


わずかに眉間に寄ったしわと


苦しそうな呼吸が気になって、


千祐さんの額に手を当てる。



「あちっ、ち、千祐さん!?熱あるじゃないっすか!」



「あー…やべぇ……世界がぐるぐる回……」



最後は言葉にならず


千祐さんは首をがくっと落とした。



「ち、千祐さん、」


「想……」


「は、はい」


「わ、わりぃけどタクシー拾って乗せてくんねえかな……そっからは自力で…なん、とか」


「こんな体じゃ無理っすよ、俺、送ります」


いつもなら


断るはずの千祐さんは


「あー……すまん、想…恩に着る」


と、告げるなり


またぐったりと俺にもたれかかる。



相当、体調が悪そうだ。




俺より背丈の高い千祐さんを


担ぎ上げる。



こんな筋肉質な身体


嫌だと思っていたけれど


こんなところで役に立つとは。


普通の女だったら


担いだり出来ない。



劣等感だらけの俺が


そこ往く女の子に


ちょっとした優越感。





「うわっ、お、重っ」


俺だって今まで17年間


男と偽って生きてきた人間だ。



スポーツは人より出来た方だし


父親がずっと柔道をやっていたから


腕っ節は鍛えられた。


そんな俺でもよろめく程、


千祐さんは“男”の身体をしている。



千祐さんの筋肉の弾力を


首に回した腕から感じ


背から脇腹に回した、


俺の手のひらは


鍛え上げられた腹筋を知った。



千祐さんに男、を感じる度


俺の内の“女”が反応して


顔を紅く染め上げる。



「あー…もう。こんなに…なるなんて」


こんなに好きになるなんて。



俺は苦笑いで


タクシーに乗り込み


前に一度コウコさんの車で


迎えに行ったことのある、


千祐さんのアパートへと向かった。







バタンと、


タクシーのドアが閉まる音が


俺の後方で聴こえた。





「千祐さん、ちーひーろーさん」


「んー……」


「着きましたよー!?」



俺は千祐さんの耳元で


声を張って帰宅を知らせる。



千祐さんは


だるそうに腕を動かせたが


手に力が入らないのか


ポケットから取り出した


鍵の束を


コンクリートの階段に


落としてしまった。



千祐さんの部屋に


入ることは


さすがに失礼かと思い


気が引けたけれど


状況が状況だ。


このまま


部屋の前に千祐さんを


放置して


帰るわけにもいかない。




「よっ、と」



俺は千祐さんを担いだまま、


鍵の束を拾い上げると


彼の家の扉を開く。



その瞬間


ふわっと千祐さんの匂いがして


頭の中が弾け飛ぶかと思った。



「お、じゃましまー…す」




家人が隣にいるにも関わらず


おじゃましますとは


何とも変な感じだ。



千祐さんの部屋は



綺麗に整頓されていた。



だけど、ところどころに


脱ぎっぱなしの靴下が


転がっていたり


ビールの空き缶が


飲みっぱなしになっている、


テーブルを見ると


俺の頬は緩む。



しっかり者の千祐さんが


とても、可愛らしく感じた。



黒いカバーがかけられた、


ベッド上の上掛け布団を取り去り


やっとのことで


千祐さんを寝かせる。



熱がまだ出るんだろう。



いまだ震え続ける千祐さんに


俺はしっかりと布団を掛けた。



「冷えピタとか…あった方がいいのかな」


部屋の中を見渡すも


まさか物色するわけにもいかず


俺は思いたって


ドラックストアへ


買い物に出ることにした。




「千祐さーん」


「ん……」


「俺、ちょっと買い物行ってきますね」



そう言い残して


千祐さんの眠るベッドを


後にしようとした時だった。



ぐんっ


突然、手首を無造作に引かれ


俺はあっという間に


千祐さんの眠るベッドへ逆戻り。



それどころか力の弾みで


千祐さんの胸に頭がぶつかり


そのまま俺は


千祐さんに抱き締められる。



「ち、ちひ、ろさん……」


呼びかけると千祐さんは


蚊の鳴くような声で呟いた。



「いかないで……くれよ」


ズキンと、胸が痛む。


これはきっと


あの桟橋の上で


千祐さんが


コウコさんに


伝えたかった言葉だろうと


思ったからだ。



でも、千祐さんは


こう、独白を繋げたのだ。



「想……」



全身の血液が沸騰した。


じたばたすればするほど


抱き締められる…。


ぎゅっと


心臓の音さえ


耳に響くように。



「 ね、ねぼ、ねぼけて…るんすか」


「想……」


「ち、千祐さん……」


「……かわい」



もう、


なんなんだよっ



こんなこと言われたら


期待……しちゃう、じゃないか。



俺は困り果てて


抵抗する気をなくし



今だけ、今だけと


千祐さんの胸に


身体を預けた。



【Real Me 性別のない人~第十五話 寄り添うと決めたから(終)】

ひとひら☘☽・2020-04-23
幸介
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どうやって撮ればいいか分からない…

ゆうか・2022-10-27
24歳差
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叶わない恋
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「恋」って言ったから
「愛」に来たよ💕

ゆうか・2023-08-09
チーフ
職場恋愛
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チーフと一緒にご飯行きたいな~😋🍴💕

ゆうか・2022-11-27
チーフ
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『好きです』

この一言が言えたらどんなに楽か

ゆうか・2日前
歳の差
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かっこいいから好きなんじゃない。
好きだからかっこいいんだー。

ゆうか・2日前
歳の差
24歳差
チーフ
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上司が好き
社員とバイト

おとといのチーフと私の会話。

私「チーフ、私本当にこどもの日仕事お休みでいいんですか?」

チーフ「おう、ゆっくり休め休め!」

私「他の全員出勤なのに申し訳ない...」

チーフ「大丈夫。大丈夫だがら(だから)!...んだ!あれだ!おれじゃねぐ(なく)神様からこどもの日は休んでいいって許しがでだ(でた)ごとにせば(すれば)いい。そしたら悪ぃって思う気持ちも少しはすぐねぐなる(少なくなる)べ。 なんとへばへば(まぁまぁ)心配性だおめ(お前)は。俺が作ったシフトだがらほが(ほか)の奴らが文句言ってきたらとっちめでやっから!心配さね(しない)でちゃんと休め!」

私「は、はい...」

チーフ「返事がちっせぇ(小さい)!!」

私「じゃあ、お言葉に甘えて休みます(><)」

チーフ「んだんだ(そうだそうだ)‼休め休め。普段から沢山仕事してける(くれる)おめ(お前)の事だがらこーゆー時だば(だと)自分の許容範囲以上にやろうとするべ??無理させだぐ(させたく)無ぇがら。頑張ろうとしてける(くれる)気持ちはわがっけど(わかるけど)倒れたら元も子もねぇべ??つーか前のチーフん時具合わりぐ(悪く)なったんだべ?ほがの(他の)人から聞いたっけおめ(お前)さばし(ばかり)仕事振ったったって聞いだがらよ。周りもおめ(お前)さ甘ぇでる(てる)部分もあるがら。」

私「・・・・・・(><)」

チーフ「ほら図星だべ(だろ)!!だがらこーゆー時ぐれぇ(くらい)仕事のごど(こと)忘れでゆっくりせ(しろ)!!これは命令。」

私「ありがとうございます(;o;)」


という一連の会話があり今日に至る。
チーフの鈍りが凄いので以前の投稿は標準語に直してたけど今回の会話の内容があまりに嬉しかったから...見づらいけど訳してみた。
分かりにくかったらすみません。

さくさく・2018-05-05
仕事
チーフ
感謝
方言

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