はじめる

#入江

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全12作品・

「何処へ行く?」
「着いてくればわかるよ」

「まさか、また秘密の場所?」
「そうだよ、秘密の場所だ」

「一体いくつ秘密の場所があるのだ」
「自由に生きる為に必要なだけかな」


俺に手を引かれた彼女は
可笑しそうに微笑んだ。


幼い頃から
自分だけのものに憧れた。


全てが兄弟たちと共有だったからだ。


自分だけの場所
それが嬉しかった。

だから島のあちこちに
俺は秘密基地を作り続けた。

隠れ家のつもりで
探し当てた自分だけの居場所。

その場所に案内するだけで
まさかここまで彼女に
幸せな笑顔をさせられるとは
思いもしなかった。


彼女の笑顔がまぶしい。


「ほら、此処だよ」
「崖…」
「ただの崖ではないよ。
これを使うと、小さな天の国へご案内だ」

俺は少し芝居がけて
ボウボウと生える草の中を
這う縄を手にとった。


「縄?降りる?小さな、天の国?」


彼女は首を傾げた。

「こうするんだ、よく見ていて」

俺は縄をしっかりと手に持つと
後ろ向きに崖の下へと飛んだ。

「!!」

彼女は一瞬、言葉にならない悲鳴をあげた。
俺は縄を頼りに
あっという間に崖下へと辿り着いた。


「今度はお前の番だ、さあおいで」
「私にそのような事をさせる気か」
「宮廷を抜け出したお前は
もう姫ではないのだろう?」
「それは…そうだが」
「なんでもやってみればいい」
「しかし」


なかなか降りようとしない。

考えてもみれば
縄で崖をおりるなど
躊躇ないのは
俺ぐらいかもしれない。


「大丈夫だ、何かあれば俺が助ける」


安心出来るよう、笑顔で声をかけた。

俺は足元の白い砂を見下げて
後方に広がる海の青さを感じた。




この景色を、お前にも見せたい。



「…わかった」

決意したような声が
頭上から聞こえた。


俺は崖上を眺める。


照りつける太陽が目に痛い。


額に手を当てて俺は
彼女が降りてくるのを待った。


彼女は縄にしがみつくように
ゆっくりと、降りてくる。

えぐれるようになった崖壁。
堀下がった場所に足が届かず
彼女は声をあげた。


「ど、どうすればよいのだ」
「そのまま、手を緩めて」
「緩め…っ!!」


おそるおそる縄から
手を離そうとした瞬間
縄を手放した彼女は落下する。


俺めがけて落ちてきた彼女を
俺はしっかりと抱き留めた。

ひとひら☘☽・2019-08-08
riyu
riyuの物語
追憶/TruthDragon
自由
岸壁
入江
独り言
小さな島国
ポエム

「気に入った?」
「とても」
「では、ここに家を建てようか」
俺は岩に腰をおろして笑った。



「家?」
「そうだ、俺とお前の居場所だ」
「居場所…」

彼女は息を飲んで目を潤ませた。




生まれながらに自由だらけの俺だ。


自由のない暮らしがどれ程窮屈で
苦しいものなのか思い至りもしない。

その事に彼女が嘆くのならば
自由しか知らない俺が
この世界に引き込んでやろう。


「料理は任せたぞ」
「料理などした事がない」
「これから覚えればいいさ」
「これから」
「ああ、未来は、無限だ」
「無限…」

そう言ったあとで彼女は笑んだ。
嬉しそうに笑んでこう呟いた。


「そうだな」





未来


本当は無限大に広がる
未来などあるわけがない


この場所に家を建て
宮廷に住まう彼女に料理をさせる事など
絵空事に等しいのかもしれない。


環境や周囲に押し潰されて
望まぬ未来を送る者の方が
遥かに多いのだろう。


けれど
目の前の彼女が嬉しそうに笑うから。
崖を降りる勇気を持つ彼女だから。
彼女は秘めた強さを感じさせるから。

不自由や理不尽を乗り越えて
跳ね除けて自由を手にする


そう、信じたかった。

自由に羽ばたいて欲しかった。


俺は、その手伝いがしたかったのだ。

ひとひら☘☽・2019-08-09
riyu
riyuの物語
追憶/TruthDragon
自由
独り言
ポエム
入江
不自由
理不尽
幸せ
2人の家
居場所
小さな島国


固く瞑った目。
それをいい事に俺は
彼女の顔を丹念に見つめた。


一日中灼熱の太陽が
照りつける島に住む彼女の
肌には僅かたりとも焼けはない。



紅をさした唇は潤む。
頬はほんのりと赤く蒸気していた。


俺の心臓は途端に
馬が駆けるより速く動き出す。


「大丈夫か」


恐らくは紅くなったであろう顔を
空へ向けながら彼女に聞いた。


「な、何をするっ」
目を開いた彼女は
抱き留められている事に焦ったか
離せ、離せと、俺に言う。

言う通りおろしてやると
彼女は着物の乱れを直した。


「手は痛くないか」

おもむろに彼女の手をとると
か細い手のひらには
くっきりと縄のあとがついていた。


「こんな事になるとは…すまん」
「大丈夫、気にするな」


彼女はそう言った後でようやく
目の前の景色をその瞳にうつすと
感嘆の声をあげた。


「うわあ…」


広がる大海原
崖に囲まれた小さな小さな入江。
驚くほど白き砂。青く澄み渡る海の水。


穏やかな波は陽射しを浴びて
キラキラと光っていた。

水面近くには
美しい色をした魚が
沢山泳いでいる。


崖を降りる勇気がなければ
辿り着けない、とっておきの国。




「ここが天の国」
「そうだ」

「お父上の島に、こんな所があるとは。
…この様な場所どうやって見つけたのだ」

「ぶらりと釣りに出かけたら
誤って釣り糸を踏んで転んでな
そこの崖から落ちたんだ」

「こんな高い崖から落ちた?
それで大丈夫だったのか…?」

「腰は痛かったが
砂浜に守られて大きな怪我はなし
結果俺は自分だけの城を手に出来た」

「…城か」
「ああ、この島は俺の城だらけだ。
宮廷よりずっといいだろ?」
「うん…ずっと素敵」


彼女は切なそうに微笑む。
何度かの逢瀬で、緊張もほぐれてきたか。
彼女の表情が柔らかく感じる。

ひとひら☘☽・2019-08-09
riyu
riyuの物語
追憶/TruthDragon
小さな島国
入江
天国
自由
とっておきの国
riyu
riyuの物語
追憶/TruthDragon
小さな島国
入江
天国
自由
とっておきの国

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

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入江の海の
向こう側の海に

冴え渡る空から
黄昏が舞い降りる

さざめく波は
脈打つ鼓動のように

水面はまるで
匂艶(にじいろ)の鏡のように

浮き世を離れた
幻想的な光景は

黄泉(よみ)へ誘う旅の入り口

逢瀬・15時間前
幻想的
感動
ポエム
入江
黄昏
黄泉の国

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