#常連さんにはきっとタグでオチがバレてしまう

【君の疲れは僕のせい】



『私…つかれてるみたい』

ビデオ通話のくせに声が篭るくらいに顔を近づけた君は、深刻そうに言った。

「大丈夫？」

僕は君の顔色を確認してみるけれど、頬の血色は良く、いつも通りとても可愛い。


『最近、肩が重い気がして。耳鳴りもするし、寝つきも良くない』

こういう症状はよくストレスだとか言われる類のものではないだろうか。

かなり心配だ。


「今日は早く寝なよ」

君は眉根を寄せる。

早寝はあまり好きではないのだろうか。



ポツリと呟く。

『…やっぱり凄く寂しい』


すぐには言葉がなかった。



僕は不甲斐ない所為で、君に寂しい思いをさせてしまっている事実にどうにもならない苛立ちを覚える。

寂しい、と眉根を寄せる彼女を抱きしめることすら出来ない距離が本当にもどかしい。

画面に向かう君を影が纏う。

よく見ると、君の右手には僕との思い出の写真が握られていた。

『会いたいなぁ…』

「僕もだよ」

被せるように言う。

『…』

君からは声が返ってこない。

果たして、この本気度が君に伝わるだろうか。


ひとつ、君が涙を流した。


今の僕にとって、当たり前のように手をつなげる環境にいる、そんな恋人たちが羨ましくてたまらない。それは、きっと君も同じなのだろう。


「君が僕の隣を願ってくれることだけが、今の僕の存在意義なんだよ」

君の涙と同等の価値がある言葉なんて僕には思いつかないけれど、これが、今の僕が君に言える精一杯の愛の言葉だ。


ひとつの涙を合図に、次々と君の目から雫が落ちた。


『でもね…』

くぐもった声で君は話す。

『側に居てくれている気がするの』

きっと、今も私のことを凄く心配してくれているんでしょう？と。

『大好きなの』

これだけは確かだと、君は笑った。


『だから、もっと頑張らなきゃ』



なぜ、君はこんなにも愛おしいのだろう。

きっと僕の方が好きだ。

気を使うのが上手なところも、素直に言ってくれた我儘も。
忘れっぽいけれど、記念日は絶対に祝ってくれるところも僕を揶揄う時の声も。


全部、君に伝えよう。

あの日作ってくれたクッキーをパサパサだと笑ったのは嘘で、本当は凄く嬉しかったことも。

実はまだサプライズプレゼントを渡せていないことや、もし君が微生物になっても愛し抜けることまで。




ねぇ、本当に、心の底から、今まで出会った誰よりも君のことが大好きだよ。
















『…明日で四十九日かぁ』

今まで黙って君の話を聞いていた、君の友人がそう呟いた。

























拝啓　神様

彼女に憑いていられる最後の今日は

夢に出るのを許してください。

　　　　　　　　　　　　　敬具