#慟哭

カナリアの月、そして幸せ



今日、カナリアは

かごの中で、うとうとしていました


夜風に吹かれて

ふと、目を覚ますと

冴え渡った夜空に

とても、きれいな三日月お月さま


いつもより、大きくて

手が届きそうでした


そして

三日月お月さまの色は

カナリアと、同じ黄色でした


カナリアは、今夜の月は

｢カナリアの月｣だと、思いました



『三日月お月さま…』

『カナリアのお月さま…』


呼ぼうとしても

声になりませんでした



ハッと、我にかえり

カナリアは、跳び上がりながら

叫びました


お月さま、私は、ここよ！！

ここにいるのよ！！

ここにいるの！！気がついて！！

気がついて！！


でも

気付いてもらえませんでしたので

カナリアは、声の限り

歌い始めました



思いのたけを

歌って、歌って、歌ったころ


なんとなく

お月さまが、少し

微笑んだように思えました


カナリアは、嬉しくて

羽ばたきました

今、行きますからね！！


でも、どの方向に飛んでも

かごにぶつかるだけで

お月さまの方には

飛べませんでした


傷だらけになった

カナリアは

諦めて

また、歌い初めました


美しく、優しく

一番、すき透る声で、歌い続けました


行かないで！！行かないで！！

私も一緒に連れてって！！

私は、ここなの！！

私は、ここにいるの！！


叫びながら、歌い

歌いながら、叫びました


けれども、三日月お月さまは

ゆっくり、ゆっくり

右手の山の方へ……


歌うことしかできないカナリアは

去ってゆく、カナリア色のお月さまに

懇願して、歌い続けました


行かないで！！行かないで！！

私も一緒に、連れてって！！


泣きながら、歌いました


お願い……

私をひとりにしないで……

置いて行かないで……


一緒に連れてって……

独りぼっちにしないで……


カナリア色の三日月お月さまは

とうとう、山に隠れてしまいました


カナリアは

最後の願いをこめて

泣きながら、歌いました


お願い

もう一度、姿を見せて……

私を一緒に、連れてって……


もちろん

一度、沈んだ月が

戻る訳など、ありませんでした



カナリアは

哭きました

生まれて初めて

慟哭しました

哭いて、哭いて

哭き続けました


哭き続けて、カナリアは

疲れて

いつのまにか、眠ってしまいました



カナリアは、夢をみました

かごがなくなり

お月さまを追いかけて

飛んで、飛んで

お月さまに追い付く夢でした




カナリアは、いつの間にか

黄色い小さな星に

なっていました


そして

くるくる、くるくる

カナリア色の三日月お月さまの回りを

歌いながら、回っていました




お月さま

もう、ずっと、ずっと

一緒よ！！

私、嬉しい！！




お月さまは、にっこりしました


カナリアは

今、とても幸せでした



寝顔は、涙のあとはありましたが

カナリアは、微笑みを

浮かべて、とても幸せそうでした






おやすみ、カナリア

明日の朝まで

いい夢をみて…










フランソワ



*

誰も知らない秘密の場所へ

貴方を想い慟哭するために

揺れる視界に映るは幻視

激しい慟哭と共に消えた命

避けられてる予感がしても期待を込めて

笑いたいから今は泣かせて

雨のように君が泣いてるって想うんだ

凪いだ海に立ち

涙する人

帰らない時を

戻らない人を

悔やんで待って…

ぶつけようの無い思いを

波にのせて

ただ祈り続ける

愛に会えると震えて涙が止まらなかった

夜の闇の中
あなたの胸の中で
トロける


優しく
交わす愛の囁きと


あなたを
誰にも渡したくない
声にならない
慟哭

冬の告白は慟哭から億千の星になった

わたし に 。


“だいきらい” って


言わせ る あなた が …


だいっきらい … 。