はじめる

#最後の花火

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全10作品・

『最後の花火』




これが最後。


君は夏が終われば、許嫁と結婚してしまう。


家庭の差なんか無ければいいのに


そんなどうしようもない思いは捨てて


今日だけはどうか


私だけの君だって


ひとりじめさせてください。










慣れない浴衣は息が苦しい。


いや、慣れより緊張のせいかもしれない。


青くて広い海を紅くて小さい金魚が伸び伸びと漂うような浴衣


その金魚と同じ色の帯を巻いて着飾った。


そっと下駄に脚を通すと、指の間が痛む。


少し歩くだけで足が疲れそうだけれど仕方ない。


最後に玄関の全身鏡と向かい合って身なりを整える。


藍色の巾着


朱色の髪飾り


君の隣に並ぶ笑顔


今日の私は自信を持って君の隣に並べるだろうか。


そっとドアを開けば、浴衣姿の君の後ろ姿が目に入り、心臓が跳ねる。


ドアの音に気づいた君が振り返る。


18時


君は夕焼けのオレンジに照らされていつもより輝いて見えた。


信じられないくらいかっこよくて、その姿を見ただけで頭がおかしくなりそうだった。


「すげぇ似合ってる。可愛い」


恥ずかしげもなくさらりとそんな言葉が飛び出してきて頬が熱くなる。


でもそれはきっと夕焼けが隠してくれる。


「そっちも、似合ってる…かっこいい」


恥ずかしさを飲み込んで告げれば君は嬉しそうに微笑んだ。


いつもと違う君と私


夏の雰囲気に呑まれて


いつも言わないようなことを口走ってしまわないか、けれど口走ってしまいたいような


もどかしい思いを抱いた。


つかず離れず、並んで歩く


カランコロンと下駄の音が耳をくすぐる


花火大会は目前に迫っていた。







会場に着けば、空は暗さを増していた。


蒸し暑い温度が私たちを撫でる。


人混みが祭りの雰囲気を引き立てていた。





2人並んで歩けば


私たちは恋人に見えるだろうか


そんなことを考えて口角が上がる。


屋台の間をゆっくり進む。


人の並が押し寄せて


自然と距離が縮まる


触れる肩がむず痒くて


心臓が破裂しそうだった。


「…腕、掴んでなよ」


右側の君が、左の腕を指さしてそっぽ向いた。


照れてでも居るのだろうか。なんて。


弾む胸を抑えて


そっと、君の左腕を掴む。


「ありがとう…」


手に伝うは筋肉のついた左腕


こんなにがっしりしてたかな なんて考えてまた恥ずかしくなる。



どうしよう


大好きが溢れてしまいそうで


ぎゅっと腕を掴む手に力を込めた。








二人で食べた焼きそばもかき氷も


あまり味がしなかったのは


緊張のせいか君のせいか


冷やしパインの冷たさが少し冷静さを取り戻して


甘酸っぱさを飲み込む。


どの味もきっと


幸せの味だった。






ヒュゥ


と音を立てて花火が上がり始める。


大きな破裂音が闇夜に咲いて、人々は空を見上げその大輪に見惚れる。


隣の君を見上げれば、光に照らされた君の横顔が


あまりにもかっこよくて


また腕を掴む手に力を入れた。


「綺麗だね」


花火の音と混ざりあって聞き取りにくいけれど


きっとそう、言ったのだろう。


私を見下ろす瞳


ぶつかる視線が恥ずかしくて、空に目を逸らす。



ああ、私幸せ


この時間が


ずっと続けばいいのに


君の隣にずっといられればいいのに


そう大輪に願った。



火薬の匂いが宙を舞っていた。











「わっ」


足がもつれて少しコケたところを君が支えてくれる。


慣れない下駄はやはり疲れる

赤く腫れた指は、靴擦れかもしれない。


「大丈夫?」


君は、やれやれ手のかかる奴だ とでも言いたそうな顔でそっと左手を差し出してくれる。


暑さに濡れた手だけれど


それでも君の手に触れたくて手をとる。



汗ばんだ手の恥ずかしさよりも


繋がれた手から


私の想いが全部伝わればいいのにと思った。




遠くで鳴く虫の音も


道路を走る車の音も


からんころんと鳴る下駄も


心臓の音には負けてしまうんじゃないかと思った。








家の前に着いてそっと手がほどかれる


急に生ぬるい風が手を掠めて


寂しさが手を伝う


もっと、触れていたかった。


「…あの…さ、」


君を見上げれば、私の心の中なんて全部読まれているんじゃないか と思わせる大人っぽい笑みで


「またね」


そう呟いた。





ねぇもう終わりなの?


いやだよ。行かないで。


まだ一緒にいたい。


「好き」


溢れた言葉は


咲かない花火のように


空に伸びただけだった。


君は私の頭を優しく撫でて


「…知ってる」


と切なそうに笑った。


ねえ


君も好きなんでしょ?


私だって知ってるよ。




飲み込んで


溢れないように


蓋をして


「…またね」


手を振った。


君の後ろ姿が見えなくなるまで


振り続けた。



きっと闇夜に紛れて


零れる涙は光らないだろう。




触れていた手の感触がまだ残っている


君を照らした花火の音がまだ脳をよぎる


君の好きが、まだ心を抱きしめて離してくれない




来年も再来年も君の隣で花火を見たかった


ずっと君の隣にいるのは私が良かった



ただ、見えなくなった君の残像を追いながら


金魚が泳ぐ海に雫を落とすことしかできなかった。




広い広い海を


泳ぎきることを夢見ることしかできなかった。

Sena❁・2020-07-13
小説
夏恋
短編小説
最後の花火
恋愛小説
叶わぬ恋
花火大会
ただ花火大会の話書きたかっただけ
あっためていた話
やっと投稿できた
自己満
senaの小説
senaの短編

最後の花火なら
嬉しいお別れをしましょう

春くん・2024-08-25
最後の花火
ひとりぼっち
ポエム



たぶん…

絶対に……

無理よね……


ありえないことよ

貴方が、来てくれるなんて

ありえない


貴方が、連絡をくれるなんて

ありえない


悲しいけれど

それが、現実よね?


ここに

どんなに

私が願いを書いても

貴方は、見ていないのよ


どんなに窓辺で

カナリアが、お月さまに向かって

歌っても

届かないのと、同じなのよ


星に願いを……


そんな夢物語はないの

ため息、ついて

仕事に、戻ります


これまでの中の

最高のものを、作ります

あの華やかな会場で

ひときわ輝く

一番星に

きっと、なります


花火大会の

一番最後の花火が

ため息がでるほど

きらびやかなのと同じように

私は、私のすべてを

出し切ります



フランソワ




*

フランソワーズ・2017-10-29
最後の花火
一番星
きらめく
輝く
華やかな
カナリア
お月さま
願い
届かぬ願い
フランソワ
フランソワーズ

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に10作品あります

アプリでもっとみる

誰も知らない2人だけの夜
待ち焦がれてた景色と重なる
夏の空に未来と今繋がるように開く花火
君とここでほら あの夢をなぞる

琥々愛🧡🎀𓈒𓏸・12時間前
あの夢をなぞって
最後の花火
君とみた景色
忘れられない思い出
消えない恋

他に10作品あります

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