本作は閲覧注意小説になります。
先日ファイナルを迎えた、
ForGetMeの自供報告書編2
本作で起こった事件の全容小説です。
ForGetMe本編とは
関係のない内容となっております。
柏沖という人物を知りたい方のみ
お進み下さい。
なお残酷、残忍な言葉
またはそれを想像させる表現が
多く出てきますので
苦手な方
年齢的に相応しくないと思われる方は
迷わず読まない選択肢をとって下さい
あとは自己責任です。
↓それではどうぞ↓
【ForGetMe 番外*自供報告書編~柏沖亮・第二話 両親さつ害の謎(楠木目線)】
柏沖の異常性は、尋常ではない。
サイコパスなんて言葉があるが
そんな生半可なものでもなかった。
柏沖が起こした事件は
身勝手な我欲を
満たすだけのものに過ぎない。
更には自己顕示欲
独占欲が非常に強いようだ。
「冴ちゃんをやって、二年経った頃さ、大二郎先生が仕事を辞めて、ホームレスになったんだよね。何かに感づいて俺から離れようと仕事を辞めたんじゃないかと思ったんだ。だから親父を監視のために家から追い出して大二郎先生のすぐ側でホームレスをやらせた。仕事を失くしたばっかりだったからさ、失踪するにはちょうど良かったし」
「磯辺大二郎もお前がやったのか」
「大二郎先生は6年も経ってさ、真相に感づき始めた。俺と親父の匂いが同じ事に気がついたんだ。冴ちゃんが遺した言葉?それと結びつけちゃった。だから……親父にやらせた」
「実の、父親に……やらせたのか」
「だってバレちゃったのは親父のミスだもん。誤魔化すようにあんなにスルメイカ買ってあげたのに、臭いのこと、突っ込まれた時、口ごもっちゃったんだって」
柏沖はまるで子どものように
口を尖らせ怒ってみせる。
つくづく、気味の悪い男だ。
「どうして、父親はお前に従った?」
父親まで利用して
罪の沼に引きずり込むとは…
いつも冷静にと取り調べに臨むが
柏沖を前にすると
どうも、眼光が鋭くなってしまう。
まあ、当たり前のことか。
こいつのおかげで身内が二人も重体だ。
「少し凄んだら了承してくれた。快諾に近かったよ。親父はいつも俺に怯えてた。あの時のことがあってから、俺の事異常だと思っていたみたい。ビクビクしてたよ、いつかやられるとでも思っていたのかな。男に興味はなかったのに」
忍び笑いを一頻り。
拳を握り締めて、柏沖を見やる。
「そうは言ってもな柏沖…お前結局、父親のこともやってるじゃないか」
すると柏沖は興奮気味に
パイプの椅子と拘束されてある体を
ぐっと持ち上げ
俺の目を食い入って凝視し言う。
「無能だからさ!親父はやられて当然だ」
血走った眼が、目の奥を焼く。
俺は
24の年に念願の刑事になった。
それから14年間ずっと
事件と顔を付き合わせてきたが
平気な顔をして
何十人もの人間をやったと
吐けるホシはそう居るものじゃない。
少なくても俺は初めての経験だった。
人をやる事になんの躊躇いも持たない。
自分より優秀な人間などいないと思っている。
人様を舐め腐った態度に
いちいち腹が立つ。
「懇願してきたよ、最後の時。助けてくださいって、息子にさ。でも親父は杉浦さんと黒須さんに勘づかれた。大二郎先生にバレた時次はないといったのに。うまくやれと言ったのに…っ。きっと親父は俺を警察に売ったんだ。だから、生きながらにして剥いでやった!頭の皮をひんむいてやったんだ」
柏沖は精神状態を乱したのか
「んんーー、んんー」
と、濁った唸りをあげながら
取り調べ室の事務机のヘリを
一心不乱にガジガジと噛んだ。
その様は、異常、という言葉が
もっとも相応しいのだろう。
常軌を逸脱していた。
「……母親はどうした?」
充分に間を置いて
そう問い正せば柏沖はまた
気を取り戻したかのように
質問に応じる。
「親父がいなくなってすぐに、家に女の子連れ込んだ時に、母親にバレちゃった。部屋を見た途端、青ざめて自首しろとか言うから」
「たったそれだけで……やったのか?仮にも母親だろう?」
「あの女は親としての本分を忘れたゲスだよ。だって、刑事さん……親はさ、何があっても我が子を守らなきゃなんないものでしょう?」
目を細め、
唇が裂けるのでは無いかと思うほど
口角をあげた柏沖が不気味だった。
「……子どもの間違いを正すことも親の役割だ。お前の母親は、自首させる事でお前を守ろうとした。多くはそれが普通のことだ」
「間違い?普通……?まさか」
柏沖は笑った。
鼻で嘲るように。
「俺はねずっとそんな温室で育ってきたよ。あの時だってそうだったんだから。だから冴ちゃんの時もほかの女のことも話したら、守ってもらえると思ったのに……なのに」
今度は血が出るほど唇を噛み締めると
柏沖は長い長い、独白に興じた。
***
「亮ちゃん……なんてこと、したの……」
急に、部屋に入ってきたお母さんは
息絶えたばかりの女の子を見つめて
呆然としてた。
血だらけのベッド
俺の好きな女の子の
抜け殻だった。
冴ちゃんを失った悲しみを
癒してくれた子だった。
名前は……ああ、忘れちゃった。
「お母さん、これからこの子と遊ぶんだ。恥ずかしいから出ていってよ」
せっかくの興が削がれちゃう。
俺は我慢できずにベルトを外した。
お母さんは俺に泣きすがった。
「だめ、だめよ亮ちゃん、こんな事をしてはだめ」
「どうして?」
「人の命を奪うことも亡骸をそうして弄ぶ事もしてはいけないこと」
「お母さんなら俺の事、守ってくれるでしょ?」
「当たり前じゃない…ずっと守るから、だから自首、しよう?」
自首。
守ってくれると思った母親が
そんなゲスだったとは思いもしなかった。
「自首……?親父は俺を守る為に出ていったのに、お母さんは息子に自首、すすめるんだ?」
「お、とうさん、?出ていった……?どういうこと?」
今にも泣きそうな
皺に満ちた肌
ひどい顔をした母親に
嫌気が差した。
「あー……めんど、お母さん、いっかい死んどく?」
「え……?」
持っていたハンマーをスイングして
お母さんの頭をぶん殴った。
一瞬でごとん、と落ちた。
「どうして自首なんかしなきゃならないんだよ」
もう、お母さんの返事は還らない。
「今の俺を咎めるなら……どうしてあの時……見て見ぬふりしたの?俺……あの時、言ったよね?」
お母さんは俺の手で葬った。
「なのに、どうしてあの子は今も、あそこで」
……眠ってるの?
一瞬……ざらついた感覚があったけれど
すぐに言いようのない支配感が
快哉を呼び覚ました。
***
「ああ、そうだ、刑事さん」
「……なんだ」
「誤解しないでほしいんだ」
「何を」
「俺、母親とは遊んで、ないからね」
高笑いを響かせながら
目を剥き出した柏沖に
吐き気すら、催した。
ホシは大抵、嘘をつく。
嘘をついては
己の罪を軽くしようと
悪知恵を働かすものだ。
だが柏沖は
ペラペラとよく喋る。
良くも悪くも
真実しか語らない。
職務としては楽だが、
柏沖の闇が俺の心にも
とりつく様だった。
この闇は、一体何処から来るのだろう。
生まれついてのものか
それとも……。
「なあ、柏沖、ひとつ聞いていいか」
「なぁーにぃー?」
蛇の様な視線を向けられながら
俺は核心と思われる部分に触れた。
「あの子って……誰だ?」
柏沖の眉がぴくりと動く。
ビンゴか。
「あの時、ってなんだ?」
顔色が変わった。
一度闇の中へ追い詰め
一気に引きずり出してやる。
「何があったんだ、柏沖」
俺はゆっくりと、笑った。