燈向・10時間前
潰滅
里奈
#潰滅
私の思想は被害妄想らしい。
そんな事に気付いたのは
残念な事に遅くも高校入学してからだ。
小学校の頃から一応続けていたバレーは
高校の部活ではやらない事を決めた。
それを聞いた母が無理矢理
弟の通うクラブチームへ引っ張った。
中学生しかいない練習場で
私は一人浮いた存在となった。
周りの視線はやけに怖かった。
痛かった。鋭かった。
もう無理かななんて弱音を吐くことは
私にとって珍しくはなかった。
行きたくもない所に通い
居場所も感じられないところは
嫌だと母に相談した。
みんな私を馬鹿にしている。
そう言ってみた。
被害妄想だと言われた。
誰も思っちゃいないなんて
無神経なことを言われた。
そうだったのかと感心した。
初めて知った事実だった。
言葉を口にする時には
悲観的な言葉がないか考えた。
同時に利己的な言葉も避けた。
被害を与えることも怖く思った。
そうすると今度は言われた。
考えることをしないと。
考えることは好きだ。
ただ口にするのが怖いのだ。
人と違うその考えが
否定されることも怖かった。
それでも私は無表情にはなれなかった。
きっと顔がものを言う。
それがまた怖かった。
この人は違う種類の人だって
そう思われるのが嫌だった。
少しでも自分の話をしてしまうと
誰も君に興味はないという。
酷い家族だと思う反面
その通りだとも思う。
冷静になれば私にも分かる。
嗚呼、私って困った人間だな。
普通の生活が出来ていた時は
少し異常に憧れた。
その異常が訪れてしまった今
普通に憧れてしまうものだ。
普通はこうだと言われる言葉に
これほどに嫌悪感を抱くのは初めてで。
きっとクズな人間だったと
思い知らされるものだった。
意思表示しないことは何かと不便で
友達にも言われるほどだった。
そもそも友達と言えるかと問われると
危うい関係とも言えるが。
さておき
意思がないのかと問われたこともあり
逃げていると恨まれたこともある。
自分が普通側だと信じていた時の
私のように
きっと大方理解し難いのかもしれない。
私が出来ることは
逃げることしか出来なかった。
自分の気持ちからも。
この世の言葉からも。
自らの自由からも。
今出る言葉は潰滅か。