三日月葉月・7時間前
祖母
無い思い出
物心ついた頃には
病に臥していた私の祖母。
思い出はほとんどない。
でも多才な人だったのは
知っている。
書道教室の先生をしていた。
絵も教えていたらしい。
自分でいうのもアレだけど、
私は祖母の多才さを
少しだけ受け継いでいる。
中学の頃は毎年、
絵で表彰された。
筆はまるで扱えないけれど、
字はそこそこ綺麗。
「遺伝だな」と最も強く感じたのは
祖母がアコースティックギターを
弾くことがあったと聞いた時。
祖母が亡くなったのは
私が小学1年の時。
私がアコギを習い始めたのは
小学5年の時。
祖母がギターを弾けたと知ったのは
私が中学1年の時。
そういうことだ。
父でも滅多に聞けなかった演奏。
従姉妹の家に眠るギターを構える姿。
聞きたかったし、見たかったし
一緒に演奏したかった。
貴方はどんな人間だったのだろう。
私はもう、声も顔も覚えてない。