「100日間の年月」
幼い頃に両親は離婚していて、私はずっと母と二人で暮らしていた。
はっきり言えば母も父もだらしのない人だった。定職につかずギャンブルばかりと、父に対する母の愚痴をよく耳にした。
そんな母は彼氏と思われる人がコロコロと変わっていた。
父と離婚してから母は、ますます私のことが邪魔になってきたようだった。
離婚する前から子供がいなければいいのにと、私のことを負担に思っていたことは幼いながらに気づいてたし、戸籍上では親子だけど私は一度も母から愛情を感じたことはなかった。
『これを持って沙智おばさんのところに行きなさい』
あの日、唐突に渡されたのはすでに用意されていたリュックとバス代と、細長くて白い封筒に入れられた手紙だけ。私のことを捨てた母がいまどこにいるのか、それは誰も知らない。生きているのかも、わからない。でも正直私は、興味がない。
いつもイライラしていた人という認識しかなくて、母親だと思ったことは一度もなかったから。
「ねえ、花怜。今日三年の先輩に花怜の連絡先知りたいって言われたよ。本当にモテすぎ。これで何人目よ?」
ホームルームが終わった教室はまた一気にうるさくなった。自分から席を立たなくても花怜の周りには人が集まってくる。
「えー、教えてないよ」
花怜はモテる。というか、モテるために自分をかわいく見せる方法をわかってると言ったほうが正しい。家でもつねにスマホを手放さないし、メッセージアプリの通知もひっきりなしに届く。
スマホを目覚まし時計としか思ってない私とは大違い。
「ねえ、水野さんこっち見てるよ」
花怜を取り巻いている女子に見つかってしまい、私はあわてて視線を逸らした。
「花怜と友達になりたいんじゃない?」
「同じ名字だから親近感わいたりして?」
「はは、超勘違い。ってか、花怜と同じ名字とか運がないよね。地味な左藤さんと一緒だったら比較されることもないのに。」
※この話には実話もあります
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