「花、言葉」
後
ただ、本に溢れた毎日を過ごしていた。
ふと自分が浮かんだ世界観などを
書き連ねるうちに俺の小説が
本になった。
俺なんかがと思ったが
正体不明の小説家
謎に包まれた新星の小説家
そんなキャッチコピーを見る度に
ニュースに採り上げられる度に
どこか自分の地位を上げてしまっていた。
デビュー作は、ある程度売れた。
けれど、重要なのは、2作目以降だった。
新人が通じないから。
続編の妄想にふけって
思わず、バイト先に持ち込んだあの日。
バレてしまった直後は、
笑われる、馬鹿にされる、失敗だ、
そう思っていた。
しかし、段々と心は冷めてった。
「枯れた花。」
それは確かに話題にもなったデビュー作、
つまり、世間からある程度の評価を受けた
という充分な武器になり得たからだ。
2人だけを閉じ込めた小さな空間で
日那から渡されたスマホに詰められた
たった500文字ほどの文章。
それには、確かに綺麗な線があり、
一気に読んでしまった。
気を取らない自然な語彙力
すっと染み込む内容
読者を離さない小説、
まさしくそれだった。
小説の世界には
指一本ほども触れていない自分だが
この小説が違うのは分かった。
俺とは、明らかに。
寒さが肌を震わせる季節の手前だった。
日那が病院から出て
呼び止められてから公園に向かう途中
何を話せばいいものかと
内側の方がモヤモヤとしていた。
公園の木々からの枯葉を
踏みつけにしながらベンチへ向かった。
日那が病気について話し出すと
表情が固まっていることに気づいた。
「健忘症」「言葉欠落型、忘却症候群」
「ステージ2」「右目から涙」「森川 日那」
淡々と話す中で聞き捨てならない言葉があった。
「どちらにせよ
本名だって偽名だって忘れますから」
湧き上がるものの正体は、明らかだった。
震えそうになる全身を落ち着かせ、
口にしそうな悪態を沈めた。
知っている。分かっている。
日那が良い奴だということくらいは。
先日の要注意の客と問題があった時、
半ばいじめのようなことをする先輩を
庇うように出てったくらいだ。
俺が北山 幸人と判明してからの
正直な感想を求める目。
今の俺には、到底、無理な目。
それでも人の心に住み着く部分が
消えてくれることは無いし、
日那の思考が自分と逆だったなら、
そう何度思ったことか。
俺が俺自身の作品が本になった時、
満足感が膨れ上がった時、
その事を思い出すと熱くなってしまう。
すぐ近くにいる日那に対して
とんでもないことを吐き出しそうになる。
たんぽぽの話を聞いていると
その心は自然と落ちてった。
何故だろう。
同じ歳で
俺の方が世間からの評価を受けたはず、
それなのに。
俺は、逃げた。
「上杉先輩、病気だったんですよ」
話すべきか迷っていた事だ。
話の流れを変えるにも十分だ。
「え、そうなんですか?」
いじめのようなことをされてる日那には
やはり、話した方がいいだろう。
「言葉過多摂取型」
「上杉 紀里子先輩の方が苦しんだ病気」
「それって、、、」
日那も聞いたことがあるらしい。
おおよそ、
自分の病気の説明と一緒に
聞いた名前なのだろう。
それでも、その病気について
俺は話し続けた。
風の冷たさは、増すばかりだった。
言葉過多摂取型
これは、日那と全く逆の病気だった。
周囲の声や音等が
必要以上に頭に入り込み、
重症化すれば
日常生活も困難なそうで。
上杉先輩に至っては、
重症化はしなかったものの、
聞きたくなかったことを
聞いてしまったとかで
精神的な面で病気が長引いたそうだ。
このことは、
坂上先輩と上杉 恭子先輩から話を受けた。
周囲を異常に気にする割に
会話を極力交わさないことを
俺が疑問に思い始めた辺りだった。
いじめのようなことをしたのは、
日那のヘッドホンや
普段の自信の無さ等からだろう。
周囲の音を遮断するために
ヘッドホンをしていたことも
聞いていた。
確かに口は悪かったかもしれないが、
上杉先輩なりの優しさでもあった。
人から言われて傷つく言葉は知っても
人を傷付けない言葉を知らなかったのだから。
ふと振り返ると日那は、
泣いていた。
右目からだった。
「ごめんなさい。
どう思えばいいか分からなくて、」
日那自身とても戸惑っているようで
母親らしかった人の元へ
日那を連れていき、別れた。
「あのっ、、」
僅かに聞こえたその声に
聞こえないフリをした。
目の前で感情をなくした人に
かける言葉ひとつ見つからなかった自分。
俺は、何者なのだろうか。
日那は、しばらくの間、
バイトに休みを入れた。
短い秋が終わりを迎えたかと
思い始めた辺りで
日那の姿がやっと見えた。
話しかけようと伸ばした手は、
すぐ下に降りた。
日那が久々にバイトへ来ると
坂上先輩辺りが騒いでいた。
いつものように持ち歩くお菓子をあげていた。
「今日、帰りどうですか?」
「すみません。
上杉先輩と話をしたいので、、」
やっとのことで掛けた声も
降りてった。
日那と上杉先輩はその日、
上がるタイミングも同じたった。
よそよそしそうに
お互い顔を伺いながら
一緒に帰っていた。
どちらからにしても次の日の
バイトの様子からして
2人の間に大きな溝は感じなかった。
上杉先輩、姉の方は、
仲良くなった2人を見て微笑んでいた。
それから1ヶ月後、
日那はバイトを辞めていった。
見慣れない番号にかけてから
3コール目、
向こう側から声が聞こえた。
「もしもし」
「もしもし、柴山です」
「電話越しではなんですし、
会いませんか?」
日那から指定された場所は、
あの病院だった。
4人部屋の右側の隅にいた。
相変わらずヘッドホンをつけていた。
「なんの曲ですか?」
少し強ばった笑みを日那は零した。
「なんも流れてないんですよ。これ。」
何となく察しはついていた。
上杉先輩もそうだったから。
「ただ、忘れる音を極力、減らしたくて」
「街中に溢れる流行りの曲」
「鳥や虫の自然の声」
「忘れてしまう前にこちらから」
日那の表情は、始終強ばっていた。
病が進行していることは
聞かずとも明らかだった。
面白みも感じないのに
俺の雑談に笑みを浮かべていた。
反射的なものだろうな。
日那が現状況について述べ始めた。
病が進行して
涙は時間に1回ほど出るらしい
中学時代は忘れたと言っていた。
なんとなく分かった。
日那が締めくくろうとする言葉が。
「私、そろそろ、、」
「小説見せてください」
被せるように声を上げた。
そして、日那とやっと目が合った。
もし、こんなことを小説に書いたなら。
読み手が自分のことをどう思うか。
恐らく、卑怯な奴。
もしくは、最低な奴。
日那の死を都合よく思い
小説を横取りするようなものだから。
日那の小説に関しては、
過大評価などはしていない。
日那の小説が出回ってしまえば
あっという間に俺は消える。
今、俺だけが日那の小説を知っていて
今、俺の続編が期待されて
今、俺が俺の小説に自信を無くして
今、目の前に未公表の素晴らしい小説がある。
日那は、もういらないからと言って
スマホを俺にくれた。
帰り道に寄ったスーパーも
クリスマスカラーに染まり
冬を感じた。
自室でひと呼吸おいてから
毎日、一作読んだ。
日那の小説は、10程あった。
スマホの画面を食い入るように見て
上手い表現を見る度、知る度、
痛むところがあったのは確かだった。
けれど、手と目は止まらなかった。
1文字も見逃すものかと目を走らせ
次へ次へとの衝動に駆られそうな手を抑えた。
完
という文字が最後に移る度に
俺は、笑った。
面白かった。
張り合おって方が無理だ。
完敗だ。
カーテンを閉めると
外は既に真っ暗だった。
特に忘れられなかったのは、
花言葉が鍵となる話だった。
「一緒に小説を書きませんか。」
日那は、なんのことだろうと
目を見開いていた。
少し表情が伺えてまだ時間はあると
希望を感じた。
「楽しそうですね。」
「私でよければ悔いを残さないためにも」
楽しそうという顔はしていなかった。
それから毎日、
あの生温い病室に通った。
日那は勿論、俺のことも忘れ始めた。
小説の下書きが終わる頃には、
俺は完全に忘れられていた。
「柴山海人です。」
「一緒に小説を書いています。」
けれど、この二言を伝えるだけで
日那は小説に協力してくれた。
「楽しそうですね。」
そう同じ顔を何度も浮かべて。
何も見ていなかったその目に
僅かなハイライトが入る。
小説が本当に好きなんだろうな。
いつもと同じように病室へ向かうと
日那の母親が俺を待っていたように
丁寧な会釈をした。
枯葉ひとつもない木を日那が
見つめていたのがその後ろで見えた。
母親に連れられ病室から少し離れた場所に出た。
会話を挟むことなく、
鞄を探ってから俺の前に手渡されたのは
手紙だった。
「日那に渡して欲しいと頼まれました。」
「本当はもう少し前に渡すよう頼まれたのですが。」
ここのところ日那の母親は、
ずっと顔色が悪いように見えたのに
さらに悲しそうな色まで見せていた。
「私は、先に戻ります。」
「無理して来なくてもいいのよ」
その言葉を聞いて足音がかなり遠くなるまで
手紙を見つめていた。
封筒も便箋もなんの特徴もなく、
そこらにあった紙切れを使ったように見えた。
だけど、便箋の端に薄ら黄色の花が咲いていた。
日那が故意に選んだのか
たんなる偶然なのか、
それは、たんぽぽの花だった。
便箋約2枚に渡って書かれていたこと。
それは、単純な事だった。
手紙の書き出しは、こうだった。
『もう、会いたくないです。』
日那のキッパリとした主張であり、
ほんの少しの強がりだった。
『友達になれて幸せでした。』
『いつか全てを忘れてしまう時に、』
『少しでも良い思い出を忘れてしまわないように』
『この関係を断ち切りたいです。』
『さようなら』
初めに小説を誘った時、
日那が楽しそうな顔をしなかったのは、
この手紙を書いたか
これからも書くところだったからだろう。
あの頃はまだ、日那の中に
きちんとした思いが存在していたんだ。
もう会いたくないという思いと
小説を書きたいという思いが。
手紙を読み終わっても
日那の母親の言葉を思い出しても
病室へ行くのを
日那に会うのを辞めようとは
少しも思わなかった。
なんなら、手紙を読んだからこそ
余計に会う気になった。
日那の母親がそれを止めることもなかった。
日那が本気で拒絶する様子もなかった。
完
という文字を打つ頃になると
日那が声を出すことは無かった。
ふいに近い未来を見たようで怖かった。
声の出し方も忘れて
いずれは、呼吸の仕方だって。
右目からの涙が止むことも無かった。
一方的に話すこともやめ、
ただ隣にいるだけになった。
最後だろうと思った。
朝起きたら、雨が窓を叩きつけて
気温が滅茶苦茶で
病室に流れる空気が冷たかった。
右目からの涙は止まって
ただ、真正面を見ていた。
ヘッドホンもなかった。
涙の跡が残っていた。
日那の母親がただ愛おしそうに
日那の頬をそっと撫でた。
我が子を思う母親の手だった。
数分後、立ち尽くす俺に気づき、
「ごめんなさい。今日もありがとうね。」
そう言って去っていった。
日那の母親はこんな俺にも
とても良くしてくれた。
日那は、母親似だろう。
目元や他人に向ける笑顔とか。
「日那」
そう壊れそうな名前を呟いた。
深呼吸を3回。
暖かく調整された病室で
鳥肌が身体中に走った。
ここからは、ひとりごとで
そのままを日那に告げた。
本当は、日那のことが嫌いだった。
いや、嫌いという表現は少し違うけど、
少なからず良い印象はなかった。
俺が小説を書いているとバレて
馬鹿にされると思った。
だけど、日那は、
『すごく良かった』そう笑った。
その時の
『早いうちにやりたいことがやれて良かった』
その言葉がずっと引っかかっていた。
本当にやりたいことをやり遂げたのか、
こんなものが小説なのか、
そうも思っていたから。
日那のたった500文字程度の小説が
俺を突き飛ばした。
完 という文字が初めて見た訳でのないのに
とても恐ろしく、嫌悪感さえ抱いた。
日那が自分の小説について
底辺のように言ったけどそんな必要はない。
日那の小説は、凄かった。
文章がというより、
言葉同士が綺麗な線を描き、
読み手の想像力をかきたて、
話の運び方、
主人公の繊細な変化の書き方、
わざとぼかした比喩、
どれもこれも凄かった。
こういう時に上手く言葉が使えないのは、
小説を書くのに向いていない証拠だな。
ただ、この感想をそのまま伝えたら
日那はきっと、満面の笑みを浮かべただろう。
俺は、それを避けた。
北山幸人として幼い書き手として
これが世に出てしまってから
俺の小説が消えることを悟ったから。
こんなことを言うと
とても大袈裟で馬鹿らしいかもしれない。
けれど、大真面目な話だ。
小説の世界は、広くて狭い。
名が知れる小説家なんて
小説志望者の中のひと握りにも満たない。
そんな中で掴めた
小さな小さなチャンスだ。
ここで引きこもる訳にはいかないんだ。
日那には見せなかった
俺の裏側は本当に汚い。
嫉妬がずっと渦巻いていた。
羨ましかった。
でも、それでも。
北山幸人としてでなく柴山海人として
角田花薫また森川日那という小説家を
心から尊敬していたから。
小説が好きだった。
いや、小説が好きだ。
そして、この小説を沢山の人に
教えたかった。
読んで貰いたかった。
小説を書く前にしていたように
誰かと小説の考察や感想を分け合い
日那の小説も深くまで読みたかった。
俺の小説が書店から消えたとしても
全然、良いと次第に思えた。
言葉はとても身近で
とても扱いが難しい。
ただ、日那自身が小説を書くことは
困難だろうと思った。
だから、俺なりに出した答えは、
日那と共に小説を書くことだった。
俺の続編を日那の小説と絡め
日那の小説を伝えたかった。
自分勝手と言われようが構わない。
俺の想像力なんてそんなもんだ。
日那、ごめん。
日那、ありがとう。
日那に俺の声がどれだけ届いたのか
それは分からなかった。
合ったはずの視線は、
いつの間にか床に落ちていた。
覚悟を決めて顔を上げた。
もう、ここに来ることはないだろうと。
見たことあるようで
圧倒的に今までと違う日那がいた。
日那は、涙を流していた。
ただ、右じゃない。
左だ。
名前を呼ぼうと立ち上がったはずなのに
言葉が詰まった。
担当医と母親を呼び、
病室に戻っても日那は涙を流していた。
日那は流しきってはずの涙を
またしきりに流した。
逆戻りするかのようだった。
日那は全てを思い出し始めた。
数日経つと母親も認識しはじめて
日那の目は、生きていた。
俺のことを思い出すまでには
少し時間がかかった。
でも、話し方を思い出すと
「おはよう」なんて挨拶を交わせた。
忘れた時間より倍以上の時間をかけるが
これから回復に向かうだろうと
担当医の言葉を母親伝いに聞いた。
元々が未知な病気なために
こういう例もあるのだと
とても珍しがっていたそうだ。
心から喜べることに
自身でも驚いてしまった。
雪に溺れた桜の芽が
少し顔を出し始めていた。
無名の小説家との共同小説
「枯れた花。」から2年
「残された種、」
北山幸人&M.H
「ここ!こっちこっちー!」
上杉 恭子先輩の声が
古びた居酒屋の入口付近に立っていた
俺と日那の元に届いた。
賑やかな人混みをかき分けながら
先輩方が緩く座った場所へ向かう。
右奥から上杉 恭子先輩、紀里子先輩、
左奥に坂上先輩が座っていた。
日那は、上杉先輩の隣へ
俺は、坂上先輩の隣へ
「お久しぶりです」
そう声をかけながら座った。
少しアルコールが入った
坂上先輩はいつも以上に上機嫌だ。
あの本が出回ってから
俺が連絡をとったのは、
この先輩方だった。
俺も日那も時間は関係なく、
お世話になったことに変わりはないし
先輩方は、信頼ができた。
俺が北山 幸人であったこと
日那が病気であったこと
全てを打ち明けた。
その頃の日那は、
日常会話が自然に交わすことが出来て
バイトのことも思い出しつつあった。
上杉先輩達は、病名を出しただけで
察しが着いていた。
坂上先輩は、ハテナを浮かべたが、
最後まで真剣に話を聞いてくれた。
何だかんだでいざと言う時に
信頼できるのはこの先輩だ。
先輩方はそれから
よく病室に足を運ぶようになった。
先輩方が押しかけるだけで
病室の温度がとても上がった気がした。
それから、日那の笑顔が
増えた気がした。
日那が全てを思い出し切るには
とても時間を使った。
それでも、日那が何か思い出す度に
周囲は笑顔になった。
3年後、
街がクリスマスカラーに染まる頃、
みんなで集まった。
坂上先輩オススメの
外見が少し古くさい居酒屋。
久しぶりのアルコールも良かったが
料理も中々の美味さで
次は、ひとりで来てもいいなと思った。
ひとりひとりが思い出話に花を咲かせ
周りと同じくらい賑やかな席になった。
一番驚いた話と言えば、
坂上先輩と上杉 恭子先輩の結婚だった。
2人がお揃いの指輪を見せた時には、
思わず叫びそうになった。
結婚式の話も進めている段階で
近々、招待状を送り付けると
坂上先輩が元気よく言った。
幸せそうでなによりだった。
上杉 紀里子先輩と日那は、
時折、2人でコソコソと話しては
笑っていた。
今では、あの2人が姉妹のようにも
見えてしまう。
本当に仲が良くなったなと思うと
少し感動した。
どうやら、俺はアルコールが入ると
気持ちの昂りが激しいらしい。
話はいつまでも止まる気がしなかった。
終電がなくなるっと声を上げたのは
上杉 紀里子先輩だった。
機嫌がとてもいい坂上先輩の奢りで
みんな帰路に着いた。
店を出ると外は真っ暗で
街の灯りも控えめのためか
空に沢山の星が並んでいた。
俺と日那は、同じ方向に歩いた。
息をする度に白い息が消えていく。
「寒いね」
日那がそう言うので右手を
ポケットの中で強く握り締めた。
それから、冬の寒さのせいで
僅かに震えながら
右手を日那の前に出した。
「ありがとう」
恋心が芽生えたのは、
いつだっただろうか。
はじめは、ただ憎いと思った相手だった。
良さを知る度に自分の醜いところを
隠したくなった。
でも、正直に打ち明けたあの日。
気持ちの整理が出来た。
だからこそ、
日那にまだ未来があるとわかった時に
心から喜ぶことが出来た。
日那の言葉は、感情を湧かせた。
日那の笑顔は、奇跡の証になった。
あの日から
日那が思い出す度に嬉しくて
日那が笑う度に笑えて
日那が全て思い出した後も
ずっと、日那の隣にいたいと思った。
冷たかった左手まで暖かくなってきた。