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#路上ライブ

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全10作品・



【蒼の空と灰の雲~第二話 路上ライブ】


ライブ場所は路上。


腕試しには丁度いい。


天気は快晴。


頭上には蒼空が広がっていた。



僕たちは駅前の


ペデストリアンデッキに陣取った。




「一条……」


「ん?」


「客がいない」


「は?」


「なんか物足りないよねぇ」


大江と佐野が


楽器を用意しながら


こんな馬鹿なことを吐かす。



「路上なんだから当たり前だろ?」


ギターを担ぎながら


僕がぶっきらぼうに言うと


珍しく佐野も大江も楯突いた。



「でもさぁもう少し宣伝すればよかったのかなぁ」


「やる気がなくなるよな、あんなに練習頑張ったのに」


「路上って俺らにしたら小さ過ぎたのかも」


「思った、思った」



人前で演奏したこともないくせに


やる前から……


こいつら、馬鹿なのか。


何処までも


成金の七光り脳しているようだ。


僕はほとほと呆れながら


チューニングしていた手をとめ


眼光鋭く、2人に舌を打つ。




「やめたいならやめれば?」




睨みつけるように告げた、


冷ややかな言葉に


大江と佐野は顔を見合わせ


「いやー…本気じゃないし」


「なぁにマジになってんの」



そう言いつつ僕に苦笑いを向けた。



ったく、しょうがないヤツら。


僕は大きく息を吸い込むと


心機一転、声をあげる。




「さぁ、始めようぜ」


「おー」


「りょーかいっ」



僕たちは


ギターを思いきり


かき鳴らし始めた。



練習で使っていた、スタジオとは違う。


音の響きはまるでない。



蒼い空に


音が吸い込まれていくようだ。



気持ちがいい。




この日の為に1曲だけ


唄を書いた。



辞書を片手に歌詞も


捻り出した。



題材は片想いだ。


女はそういう歌詞に弱い。


そういう流行りみたいなものに


上手く沿った歌詞だと思う。



オリジナル曲を披露するのは


それぞれの


好きなアーティストの


コピー三曲の後。


最後のトリだった。



演奏が進む度


僅かずつ高まっていく


高揚感



僕ははじめて


認められるかもしれない



お父様の「ご子息」でも


一条家の「跡取り」でもない、


この、僕が。





ところが


どうだろう。


すれ違う人と人。


目はこちらに向けるのに


立ち止まってはくれない。


見向きもしない人もいた。



どうして。


どうしてだ。


こんなに一生懸命


やっているのに。



感じていた高揚は


一気に焦りと羞恥に変わる。



大江と佐野も


僕と同じ気持ちのようだった。


焦りは平常を乱し、


演奏を逸らせた。


せっかく考えてきた


パフォーマンスだって


恥の上塗りだ。



そうなれば


クスクスと笑いながら


僕たちを横目に


流し見ていく人もいた。



とてつもない屈辱が


身体中を駆け巡り


後悔すら生まれる。



やっぱり


無理だったんだ。



僕が一条の名を捨て


認められる事など


出来るはずもない。




涙が溢れんばかりにたまって


雑踏は揺らぐ。


声も震え裏返る。



いっそもう、


やめてしまおうか。


全部、無かったことに



根性なくそんな事を


思い始めたその時だった。



ペデストリアンデッキの


柵の方から一人の男が


僕達の前に飛び入ってきた。




櫛も通していない様な


もさもさの髪。


その奥の目を


窺い知ることは出来ない。


ホームレスとも紛うような


汚い身なり。


距離があるのに


少し、匂う。



僕達は驚いて


演奏をやめ、


先頭に立つそいつに


言葉をぶつけた。



「おい、なにしてんだ」


「邪魔なんだよ」


内心…三人とも


助かった……


そんな思いがあるくせに。



何も言わないそいつに


ひどく腹が立って


僕はその肩を


無造作に叩き引く。



ところがどうだ。



そいつは僕の手を振り払い


アカペラで


高らかに歌い始めた。









__つまんねえな、つまんねえなぁ
「やりたいことなんかなかった」
世の中に流されてさぁ、生きてきた
Ah馬鹿みたいだなぁAhAhAhhaha


教科書の偉人さん
顔合わせても
何がわかるって言うんだ

たった一人で生きてる事と
何が変わるって言うんだ

AhAhAhhaha


不条理に文句並べるくらいなら
地べたを舐めてやらないか

その砂ひとつぶ
どれほど苦いか知ってるか

知ったもん勝ち逃げんなよ
「やりたいことなんかなかった」
そんなの嘘だろ向き合えよ

俺は行く
行く行く行くんだ行くぞ

その先闇でも
一歩前の未来へAh






低音なのに


透き通る声


飾らない歌詞


型に嵌らない曲調


パフォーマンスなんか


何一つない


ギターの音もベースの音もない。



マイクも存在しない。



喉ひとつで歌っているのは


ホームレスのような


汚らしい男、ひとり。



僕らが演奏している時には


1人たりとも


足をとめてくれなかったのに


道行く人はホームレスの唄に


その足をとめ


あっという間に


僕達の周りには人集りが出来た。



男は歌い終えると


集まった客の期待の眼差しも


無視して歩み出す。




僕はたまらずに声をかけた。



「おい!」


男はピタッと


足を止める。



「これ、どうすんだよっ」


そう声を荒らげると


男は振り向きもせず


こう、呟いた。





「中身のない恋の唄でも聞かせてやれば?」


「な…っ」


「俺はただ、歌いたかっただけだよ」


そう言い残して去っていく。



客が集まったところで


もう一度、あの演奏を


やれるもんか。



悔しい…。


僕たちは辛酸を舐めながら


呆然とその男を見つめた。



ひどい敗北感に打ちひしがれる、


僕の耳に女子高生の声が届く。



「ねえ、灰厘なんでこんな所に居たんだろ?」


「私も思った!堤防少年なのに!」




灰……厘……?


名を聞くなり僕は


その二人組に


掴みかからん勢いで


言葉を投げた。


「灰厘って、高橋灰厘のことか!?」


驚いた二人組は


身を引きがちに


目を見合わせる。


「さ、あ。苗字までは……」


「でもよくそこの川の堤防で歌ってますよ、ね?」


「うん、結構、有名、だよね」


「無口だけど唄う歌がすごく良くて…私達ファンなんです」


二人は次第に黄色い声をあげて


ファンだという「灰厘」のあれこれを


語り始めたが



僕の額には


玉のような汗がふつふつと


湧き出していた。




「灰厘……」



僕の呟きは


蒼い空に上り


そして消えた。





-------------------


文中で


灰厘が歌っている歌の歌詞は


ライブやってる月霞さんに


ちょっと力を貸してもらいました


(*´ω`*)


楽しんでいただけたら


嬉しいです♪



幸介

ひとひら☘☽・2020-04-13
幸介
幸介による小さな物語
蒼の空と灰の雲
幸介の連載小説
金持ち
資産家
七光り
老舗
老舗の息子
独り言
ライブ
路上ライブ
LIVE
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友情
ホームレス
出逢い
再会
会いたかった人
私立高校
小説
物語
大切な人に伝えたい事
学校に行く理由
好きな人
友達
ポエム
成金

小さな輪に囲まれた

薄暗い中のひとつの光

顔も見えない君が奏でた

下手で拙いギターの音が

荒んだ心には温かくて

君が想い人に届けようとした

優しい唄が僕を揺らした

水縹・2019-04-06
路上ライブ


素敵なハモリに惹かれて立ち止まった駅前

ギーターを片手に歌うふたりは

まるで闇夜に落ちた光。

美しい音色が花を咲かせ

疲れた心を癒す透き通ったハモリ

また会いたいな

琥珀川 有栖 ꒰ঌ⸜‪‪❤︎⸝‬‪‪໒꒱・2019-11-21
路上ライブ

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に10作品あります

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推しのライブ幸せ過ぎました!

momo(推し=酸素)・2020-03-21
YouTuber
路上ライブ


火曜日


今日も一日あなたを待つ
集合時間も、場所も
何も言ってない
来るはずのないあなたを待つ

今日は駅前で待つ
仕事終わりのスーツの男性、
キャリーケースを転がす観光客、
多くの人が行き来する改札前
今日は路上ライブをしていた
ギターを持った男性2人組
素敵な歌を聞いた人達が
自然と笑顔が溢れていく

聞いてるうちに僕も自然と笑顔が溢れる
これからもうひと頑張り
あなた達のおかげで出来そうだ
この2人もやがて、
栄光の架橋へと進んでいくのだろう

anthob!🐻・2019-04-09
待ちぼうけでも大丈夫
駅前
路上ライブ
笑顔
栄光の架橋

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