ずー・2018-04-26
難聴*
耳を澄まして
聞こえて来るものが
私の世界の全てだった
私の 世界は狭い
半分しか聞こえないからね
本当は世界は
もっと広いなんて
知りもしなかった
みんなそうだと思ってた
目に見える世界は広いのに
広いと思っていたのに
実際の私を取り巻く世界は狭い
今 聞き逃した言葉は
なんだったの?
私が持つ言葉の網の目は粗く
言葉をポロポロと取りこぼす
ようやく取りこぼさずに
掬い取った言葉を
繋ぎ合わせて
相槌をうつ私
わかってください
わかってください
頭が悪いのではありません
気が弱いのではありません
無口なのではありません
大人しいのではありません
ただ聞こえないのです
あなたの言葉に
応えるすべがないのです
世界は本当は
もっと鮮明で
どこまでも
音が
声が
届くのかもしれない
私が
聴いている音は
本当は
不完全で
世界は狭い
モノラルな私
遠くから
呼ぶ声が
聴こえない
聴こえないの
あの時
モノラルな私を
ちゃんと説明出来てたら
みんな
離れて行かなかったのかな
より強い絆を
持つことが出来たのかな
だけど
私もわからなかった
自分のことが
自分でわからないのだから
なんて
言えば良かったの?
なんで私なんだろう?
今日も空耳に弄ばれる
教室の中の喧騒は
ひと塊の騒音になって
もう会話にはならなかった
みんなただ口が動いてるだけの
お喋り人形のよう
頭の中は意味のない雑音が
ただワンワンと響くだけ
不思議だった
こんな騒音の中で
なんでみんな
平気でいられるんだろう?
私には
音は迷路
会話についていこうとすれば
聞き間違えて
行き止まり
言葉の洪水の中で
溺れてしまうよ
そうやって
聞き逃したことが
またひとつ増えて
永遠に取りもどせない
言葉
私 本当は前向きになんて
ならなくてもよかった
ちょっと愚痴を言って
朝 目覚まし時計の音が聞こえないの
ホント困るよね~って
共通の話が出来たら
それで良かった
だってそんな話
出来る人が
ずっといなかったから
いいことも
悪いことも
ひっくるめて
それが私なんだって
言えたら
それで良かった
特別なことじゃない
ああ わかる~って
その言葉が
ほしかっただけ