※この物語はフィクションです
※長編小説
※読まないで好き押すのNG
ゲームに
もう一回は存在するけど、
人生ゲームに
もう一回なんて存在しないんだよ
#死神サマ/後編
Episode 1,
『やっぱり俺は
あの作戦を却下する』
「なぜ?」
朝イチで話しかけられたと思ったら
耳を疑うような言葉をかけられて
戸惑わないはずがなかった
『リスクが大きすぎる』
「言ったはずよ、
私は諦めないって」
『何か別の方法を考えよう』
「そんなことを
している暇はないの」
『どうして?
焦るなよ、どうせなら
確実に捕まえた方がいいだろう』
「でも、こんなことをしてる間に
また人が殺されていくのよ」
『そうだけど…』
「私は1人でも実行する」
『ダメだ、危なすぎる
わかってるのか、
相手は殺しのプロだぞ?
素人がむやみに手を出したって
あっさり殺られるに決まってる』
「でも、」
『頼むから、
もう少しだけ待ってくれ』
その言葉に頷くことしかできなかった
Episode 2,
授業中も、
お弁当の時間も、
休み時間も考えた
そして私が出した答えは
1人で作戦を実行する事だった
ぱんだに言ったら止められることを
知っているから、
黙っていることに決めた
死神サマ のサイトを開く
意を決して必要事項を入力する
依頼者 : 戸神 日葵
依頼理由 : 私の好きな人と
仲がいいから
殺して欲しい人 : 〇〇 〇〇
実行日 : 2021,06,06 夜~夜中にかけて
______
依頼する
______
勿論、依頼者の部分は偽名だ
深呼吸をして依頼をボタンを押す
死神サマ の正体がわかるまで
あと4日
Episode 2,
『あひる、お前、凄い隈だぞ
寝てないのか?』
「ちょっとね」
『どうしたんだ?』
死神サマ から
依頼を引き受けると
昨日の夜、
メッセージが来たなんて
口が裂けても言えない
「何でもない」
『わかってると思うけど
単独行動だけはするなよ?』
「うん」
『…まあ、お前のことだから
どうせもう始めてるんだろ?
あの作戦』
「え?」
『隠さなくていいって、
左右で違う色の
靴下履いてくるほど
動揺することなんて 死神サマ の件
以外ないだろ』
驚いて足元を見る
右足に黒、左足に白の
靴下を履いている
「嘘…」
『パンダカラーだな笑』
「…ごめん」
『何が?』
「私、」
『言わなくていい、大丈夫だよ』
「…」
『作戦実行日は、いつ?』
「…3日後の6月6日」
『多少時間はあるんだな』
「心の準備をするために設けたの」
『 死神サマ は見事に
依頼を引き受けたってわけか』
「絶対に捕まえよう」
『だな』
Episode 3,
そして迎えた6月6日
夕方頃から2人で最終調整をした
私の部屋で窓際とドアの近くに
それぞれお父さんのゴルフクラブや
弟の野球バットを構えて
静かにその時を待つ
夜の11時
窓ガラスに人影が現れた
ぱんだと顔を見合わせる
人影は予め鍵を開けておいた
窓ガラスを開けると
慣れたような手つきで室内に入ってきた
緊張で手に汗が滲む
『今だ!!』
ぱんだの声に
ビビる人影
2人は同時に飛びかかって
その頭を殴った
バランスを崩して握っていた
刃物が手から落ちる
私は刃物を素早く蹴飛ばして
部屋の隅に追いやる
目を戻すとぱんだが
人影を押さえつけていた
『早くフードを取れ!』
「うん!」
パサッ
黒いサラサラな髪
愛嬌のある丸い瞳
シュッと整った鼻筋
その下にある小さな口
「ハトちゃん、?」
夢を見ているのだろうか
でも、人影は答えたのだ
〔そうだよ〕、と
Episode 4,
「冗談だよね?」
〔ううん、私が 死神サマ よ〕
「どうして?
だって殺されたんじゃ…」
〔死体は見つかってないでしょ?〕
「…」
〔…依頼の時から騙してたのね〕
「私は、ハトちゃんの為に
死神サマ を見つけようと_」
〔言い訳なんていらないわ〕
「…っ」
〔いつかこうなる日が
来ることはわかっていたけど、
それがまさか今日だなんてね…〕
「人を殺めた動機は?」
〔幸せにしてあげたかったから〕
「え?」
〔嫌いな人がいる人生なんて
つまらないでしょう?
だから、
皆が幸せになるためには
嫌いな人を消せばいい〕
パシンッ
〔っ…〕
思わずその頬を叩いていた
「この世に生まれた時点で、
この世に生きてる時点で、
みんな誰かにとって
必要とされてるの
だから
殺していい人なんていない」
〔それは綺麗事だよ〕
「そうかもしれない
でも事実なの
ハトちゃん、あなたは
人生で一番ダメな
選択肢を選んじゃったんだ」
『そんなくだらない理由で
俺の友達は殺されたのかよ』
〔そう〕
『この野郎っ』
鈍い音がして床に血が飛び散る
「ちょっと、」
〔もっと殴ればいい
いっそのこと殺してよ〕
『うわぁぁぁっ』
「やめて!」
ハトちゃんの前に立ちはだかる
ぱんだの拳が
私の顔面スレスレで止まった
〔どうして守るの?〕
「わかんない」
『どいてくれ』
「嫌だ」
〔どいて〕
「どかない」
〔なんでよ!〕
「ハトちゃん、ごめんね」
〔え?〕
「遅くなって」
〔何が?〕
「必ず 死神サマ のフードを取って、
その正体を暴く って
約束したじゃない
本当は私に
止めて欲しかったんでしょ?」
〔意味がわからない
なんで_〕
「わざわざフードっていう
単語を残したのも、
死神サマ の正体を
一緒に暴こう、じゃなくて
暴いてねって
少し投げやりな感じに言ったのも、
防犯カメラに映らないように
するほど用意周到なのに、
ぱんだに気付いてたのに
今日部屋に入ったのも、
わざとなんだよね?」
〔違う!〕
「私は知ってるよ
ハトちゃんは嘘をつく時
鼻の頭が赤くなること」
〔…〕
遠くでサイレンの音が聞こえる
「ハトちゃん、
助けてあげられなくてごめんね
その悩みに、心の痛みに、
気付いてあげれなくてごめんね」
そっと肩に手を回す
〔うぅっ…〕
堪えていたものが
一気に溢れ出したのだろう
ハトちゃんは子供のように
泣きじゃくった
「もう1人にしないから」
〔あ…が、と…〕
「うん」
〔ごめ…〕
「うん」
暫くしてハトちゃんは
パトカーに乗せられて行った
赤いテールランプが
私の脳裏に深く焼き付く
この出来事を
忘れる日は来ないだろう
Episode 5,
「協力してくれてありがとう」
『こちらこそ』
帰路を2人並んで歩く
「ぱんだがいたから解決できた」
『そんなそんな笑』
「お礼する、何か奢ろうか?」
『じゃあ…』
「なに?笑」
『俺と付き合ってくださ_』
ブワァッ
思わず目をつぶる
強い風が吹いた
「ごめん、聞こえなかった
もう一回お願い」
『…タピオカ、飲みたい』
「はいはい笑」
本当は聞こえてたよ、
タピオカ飲みたい の前のあの言葉
こんなこと言ったら
きっと怒られちゃうんだろうな笑
end___