深唯弥・2025-05-04
多分彼女
愛されたい
ポエム
なんでみんな幸せになれるんだろう
傷つかないと思ってるでしょ?
心を壊しただけだよ
私って
あなたの中では
どうでもいい女みたいだから
あなたからの冷たい言葉を聞かなくていいように
私は耳を壊しました
あなたが私を見ていないことを知らなくていいように
私は目を壊しました
あなたが私を思っていないことを気づかなくていいように
私は脳を壊しました
あなたを思った私がもう傷つかないように
私は今日、“心”を壊しました
【鶴は捻くれ者】
「ねえ、顔見せて?」
「見ないで」
「みーせーて」
「嫌…」
「どうして?」
「綺麗じゃないから…」
「そんなの見ないと分からないよ」
「メイク上手くいかなかったんだもん…」
「それはそれで見たい」
「嫌!」
「見るなって言われると見たくなるんだよ」
「…」
「僕は愚かな老人でも何も知らない青年でもないよ」
「…」
「ほーら」
パッ
「…!」
「ほら、可愛い」
「嘘だ…」
「僕は、老人じゃなければ青年でもない、“亀”だよ」
「馬鹿じゃないの…」
「そう?“鶴”とだいぶ相性いいと思うけど」
「うるさいアホ…」
「こーら、口が悪いよ、鶴ちゃん」
「…」
「亀は心が広いからね、鶴がどんな姿でも好きだよ」
「信じない…」
「ひねくれてるなー笑、鶴は千年かもしれないけど、亀は万年だよ?」
「だから…?」
「鶴が例え、千年で僕に飽きても、僕は君を万年好きでいるよ」
「…嫌いにならない、多分」
「多分ね笑」
よしよしっ
「…」
ギュッ
【鶴は千年、亀は万年、2人は永遠】
愛しているなら
証明してよ
可愛いあの子が気に入らなゐ
もっとちゃんと僕を見ててよ
もっとちゃんとって……
【シンデレラは魔法を解く】
「どうして、ガラスの靴を割ったのさ!王子がもう君を見つける手立てがほぼ無いに等しいになったじゃないか!」
「ごめんなさい、でも私がお城に暮らすなんて似合わないわ」
「あんなに夢見てたのにか!?」
「舞踏会に行ってわかったの、私には場違いだって……」
「じゃ、じゃあせめて、この家を出るくらい王子に頼めばできたんじゃないか!?それほどまでに、王子は君に惚れてたはずだ!」
「ええ、誰かを想うことはあっても、誰かに想われた事はなかった、とても幸せな事だったわ」
「じゃあなんで!?」
「想い慕う方ができたの」
「……王子よりもか?」
「ええ」
「……」
「私ね、王宮での暮らしよりも、自然に囲まれて毎日その人とのんびり暮らしたいと思うの」
「……そうか、ならその男に今から会いに行くか」
「その必要は無いわ」
「……?」
「好きよ、“魔法使いさん”」
「なっ……!」
「私、ずっと舞踏会へ行って王子と踊ることが夢だったわ
でも、あの日あなたに会って……一目惚れだったわ……」
「……僕がなんであの日、君の前に現れたかわかる?」
「哀れんだからじゃないの?」
「ずっと、君に幸せになって欲しかった……
君がまだ、お父上と暮らしている時、僕は君の家の裏の森で暮らしてた
初めて君を見た時に、心を奪われたよ
でも、君はまだ少し幼かったから僕は諦めてたんだ
それでも諦めきれなくて、偶に君が庭にいる時に盗み見てた
そんなことを続けてたら、ある日から君があいつらにこき使われるようになっていた
僕は、どうにかしたかったけど、他の人間にバレる訳にはいかないからどうにもできなかった……
そうしたら、君はいつの日か王子を夢見るようになっていた……
当然だ、何も出来なかったんだから…
それでも僕は、君にせめて幸せになって欲しかった
だから、あの日、君に魔法をかけたんだ、もう会えないことを覚悟して……」
「……ふふっ」
「?」
「嬉しい、私たち想いあっていたのね」
「……///」
「私、もっと早くあなたと出会いたかったわ
そうしたら、もっと早く一緒になれていたかもしれない」
「……もう遅い?」
「ふふっ、いいえ」
「後悔しない?」
「あなたとなら、きっと素敵な毎日が送れるわ」
「なら、僕と一緒に僕の森で暮らそう
きっと不自由にはさせない」
「ええ、喜んで」
《君に僕との祝福を》
泣くことも許されないこんな世界に
私が存在する必要なんてない
笑えばいいが
笑わせないさ
愚かなくらいがちょうどいい
あなたからの「愛してる」をください
大事にされないなら
私も大事にする必要ないよね
【精霊は罪を犯す】
「あぁ、なぜ君は僕を避けるんだい?」
ナルキッソスは問うた
水面に映る自分自身に
「僕が微笑めば誰もが心奪われ、僕が歩けば誰もが足を止めるというのに、なぜ君だけは僕に触れてはくれないのだ……?」
何も不思議なことは無い
水面に映っているだけなのだから
「とても嫌われているとは思えないんだ…!僕が手を伸ばせば、君も僕に手を伸ばす、僕が微笑めば、君だって微笑んでくれるじゃないか…!なのに、どうして…」
(私も、あなたが好きよ…)
そう、囁きのような声が聞こえた
「…!そうだろう…!だったらなぜ…!?」
それは、ナルキッソスが手酷く振った風の精霊の声だった
彼女は手酷く振られたショックで、衰弱し、とうとう声だけの存在になってしまったのだ
(私ね、ここから動けないの…)
だが、今や彼にバカにされた見た目すらない状態
今なら、彼のそばにいても怒られない
見えないのだから…
だから、彼女は彼の想い人のフリをした
「そうか、ならば僕も君と共にずっとここにいよう!」
ずっと彼といられる、そう思った
それからずっと2人は話し続けた
だが、彼は人間だ
飲まず食わずで衰弱し始めた
それでも彼は、ここを離れようとしなかった
「…愛おしいな君は、弱ってる姿も美しい…」
“わかってる…私じゃない”
(ねえ、家に帰らないの…?)
「嫌だ、君がここにいるのなら、僕も君と共に在る…!」
(でも、あなたこのままじゃ死んでしまうわ…)
「君を見て死ねるなら本望だ…」
“あぁ、私じゃこんなに愛されない…”
(なら、もうあなたとは口を聞かないわ…!)
「な…!どうして…!?」
(だってそうでもしないと、あなた本当に死んでしまうもの…)
「嫌だ、お願いだから…」
(なら、何か食べてちょうだい…私を愛しているのなら…)
“もう、今日で最後にしよう…”
「わかった、最低限の生活はする…」
(それから、もう、ここには来ないでちょうだい…)
“もう、あなたのことは忘れるから”
「どうして!?こんなにも愛しているのに…!」
(愛しているからよ…)
“さようなら”
それ以降、精霊は声を発さなかった
そうして、ナルキッソスは、半ば絶望し、おぼつかない足取りでその場を去った
その日から、彼は来なかった
そして、精霊は何も映らない水面に向かって、ポツポツと喋り出した
(好きだったな…)
“今も好き”
(会いたい…)
“あなたは私を嫌いなはずなのに…”
そうして、声だけだった精霊はさらに衰弱していった
やがて、声すらもはっきり聞こえないほどになっていった
衰弱しながら、精霊は悔やんだ
“あぁ、なんて愚かだったんだろう
こんなことで彼に好かれるわけもないのに”
それでも、彼のそばにいたかった、言葉を交わしたかった
それほどまでに、必死だったのだ
きっともうすぐ、消えてなくなるだろう
ザっ
「ごめん、約束、守れそうにないや…」
“あぁ、なんで今”
「もう君は、声を発してくれないだろうけど、どうしても忘れられなかったんだ」
“わかってる、私のせいだ、そんなの、わかってるよ”
「だから、僕は今ここで死のうと思う」
“…!”
「そしたら、もうここから動かなくてもいい、何も気にしなくていい、ずっと君のそばにいられる」
“あぁ、なんて、なんて罰だろう
結局私は、好きな男の死を見て終わるのね”
「だから、僕は今日、僕の罪も吐こうと思う」
“…?”
「君は、僕が愛した人ではなかったんだろう…?」
“!”
「家に帰って、みんなに話したんだ、そうしたら、水面に映る自分だって、教えられたんだ…なんて滑稽だったんだろうね」
“…”
「でも、声は違うだろう?君がいた」
“知らないままで良かったのに…”
「僕に君は見えない、声しか知らないでも
少なくとも、僕は、好ましく思ったよ」
“…!”
「夢を見せてくれてありがとう…」
グサッ
ドサッ
“あぁ、なんて酷い人なんだ
こっぴどく人を振っておいて
なのになんで、私は、嬉しくてたまらないのだろう”
そうして、ナルキッソスは息を引き取り
精霊は世界に還った
《ナルキッソスの罪と罰》
結局努力する子が一番
なんて戯言には騙されない
少女漫画の最後笑うのは
綺麗な顔したヒロインだから