カナタ✡️ナイト・2019-03-16
春に
谷川俊太郎
明日と明後日が一度に来るといい
僕はもどかしい
《詩》
あの青い空の波の音が聞こえるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまったらしい
透明な過去の駅で
遺失物係の目の前に立ったら
僕は余計悲しくなってしまった
ー谷川 俊太郎ー
かっぱ かっぱらった かっぱ らっぱ かっぱらった
イメージとかけ離れた文から面白さを
音から楽しさを産み出す
谷川俊太郎はやっぱり天才、
だから いまは ただひとりにしておいて
ほんのすこしだけ しんでいたいの
ほんとにしぬのは わるいことだから
おんがくもきかずに あおぞらもみずに
わたし ひとりで もくせいまでいってくるわ
地雷を踏んで足をなくした
子供の写真目を逸らさずに
1960年代に書かれたものらしいですが
小学生だった私の心にも響いた詩でした。
時代を超えても人が「生きている」ことが
どういうことか心に響くなって思い載せて
みました。
生きる
谷川俊太郎
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
生きる・.。*・.。*
生きているということ
今生きているということ
それは喉が渇くということ
木漏れ日が眩しいということ
ふっとあるメロディを思い出すということ
くしゃみすること
貴方と手を繋ぐこと
生きているということ
今生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
全ての美しいものに出逢うということ
そして
隠された悪を注意深く拒むこと
生きているということ
今生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
今生きているということ
今遠くで犬が吠えるということ
今地球がまわっているということ
今どこかで産声があがるということ
今どこかで兵士が傷つくということ
今ブランコが揺れているということ
今いまが過ぎていくこと
生きているということ
今生きているということ
鳥は羽ばたくということ
海は轟くということ
かたつむりは這うということ
人は愛するということ
貴方の手のぬくみ
命ということ
かなしみ/谷川俊太郎
あの青い空の波の音が聞こえるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまったらしい
透明な過去の駅で
遺失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった
カムチャッカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球で
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交換で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
「花」という言葉が
花を覆い隠している。
デッサンは
花という言葉を剥ぎ取って
花という得体の知れない存在に
近づこうとする。
紙の上にワープして
花は「花」という言葉から
自由になる。
花が生きるように
沈黙のうちに線も生きる。
それがデッサンではないか。
谷川俊太郎
どっかに行こうと私が言う
どこ行こうかとあなたが言う
ここもいいなと私が言う
ここでもいいねとあなたが言う
言ってるうちに日が暮れて
ここがどこかになっていく
信じる♪合唱・谷川俊太郎
笑うときには おおぐち あけて
おこるときには 本気で おこる
自分に うそが つけない私
そんな私を 私は信じる
信じることに理由はいらない②
地雷を踏んで足をなくした子供の写真
目をそらさずに黙って涙を流した あなた
そんな あなたを 私は信じる
信じることでよみがえる いのち
葉末の露がきらめく朝に
何を見つめる小鹿のひとみ
すべてのものが日々新しい
そんな世界を私は信じる
信じることは生きるみなもと
私は信じる
何か分からんけど
凄いなって思った詩。
未来へ
谷川俊太郎
道端のこのスミレが今日咲くまでに
どれだけの時が必要だったことだろう
この形この色この香りは計り知れぬ過去から来た
遠く地平へと続くこの道ができるまでに
どれだけのけものが人々か通ったことだろう
足元の土に無数の生と死が埋もれている
照りつけるこの太陽がいつか冷え切るまでに
目に見えないどんなに力が働くのだろう
私たちもまたその力によって生れてきた
人は限りないものを知ることはできない
だか人はそれを生きることができる
限りある日々の彼方を見つめて
未だ来ないものを人は待ちながら創っていく
誰もきみに未来を贈ることはできない
何故ならきみが未来だから
私はあなたに恋し
あなたはそれを笑い飛ばし
一緒にカラオケを歌いに行き
そうして私たちは『友達』になった
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ