はじめる

#迷霧の連弾

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全77作品・


迷霧の連弾
55/260

キミの近くに座って

様子をうかがえば

きっとチャンスはある

そう考えていたけど

都合よくいかない

キミはバスでも

保健の先生と

寄り添って座っている

ボクはキミと同列の

前方に座る羽目になり

キミの姿を

眺めることもできない

貸切バスではないので

マナーを守らねばならず

みんな窮屈な思いで

バスの中で

かしこまっている

でもその方がボクには

ありがたかった

今は他の生徒と

談笑する気には

なれなかったので

静かに過ごしていたかった

そしてバス内での

静かな時間の反動で

キャンプ場に着いたら

こころがはずんで

開放的になることを期待した

同じ夕焼けを・2024-11-13
迷霧の連弾


迷霧の連弾
70/260

シダと言っても

何も日陰の

鬱蒼とした場所に

生えているとは限らない

日常的に目にするスギナも

シダ植物に属している

その胞子茎が

春の訪れを告げる

ツクシである

今では食べることは

珍しいけど

ツクシは食用にもなり

食べ物の少ない

早春の季節に

人々の生活の

助けになっていた

他にもワラビやゼンマイも

食用にしている

シダ植物なんだよ

そして食べるだけでなく

お正月の飾りつけにする

ウラジロもシダ植物だ

シダは日本人の生活とは

大いに関わりがあるんだね

もはや先生は

シダ植物に導かれ

自分の世界に

浸っていた

そしてキミも先生の世界に

入り込んでいた

同じ夕焼けを・3日前
迷霧の連弾


迷霧の連弾
49/260

でもキミとこころ通ったら

想像もしなかった

素敵な未来が待っていることを

期待することを

否定などされたくない

人との出会いは

一人では築けない

大きな未来を

築き上げる奇跡を

起こし得ることもある

キミとならば

そんなことがありそうだ

そして反作用として

失うモノなどは

想像すらできない

例えあったとしても

取るに足りないものだから

そんなことを

考えている間に

ホールルームは

終わっていた

キミは坂道から

転がり落ちるように

勢いよく教室を

飛び出していた

そんなキミの背中を

見送ったボクは

こころが揺らいでいた

キミと信頼を築くこと

ボクにできる自信は

初めからなかった

あったのはそれを

認めまいとする

自分のプライドだけだった

同じ夕焼けを・2024-11-09
迷霧の連弾

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に77作品あります

アプリでもっとみる


迷霧の連弾
64/260

先生といえども

異性なので

じっと見つめられると

どこか照れくさい

だからこそ尚更

黙々とテントを

組み立てていた

でも時折キミが

先生と楽しそうに

話している声が

聞こえてくるので

どうしてもキミの方に

視線が向いてしまう

その様子を

保健の先生が

めざとく見つけて

ボクに小声で

キミのことが気になるの

そんなことを

問いかけてきた

何の前触れもなかったので

ボクは肩を

大きく弾ませて

保健の先生を

何も言わず見つめた

やっぱり気になるんだね

保健の先生は

楽しそうに言った

ボクは少し顔を染めて

俯き加減に作業を続けた

保健の先生は

キミの方を眺めながら

気にかけてくれる人がいて

良かったね

しみじみと呟いていた

同じ夕焼けを・2024-11-16
迷霧の連弾


迷霧の連弾
67/260

物足りない昼食を終え

植物観察が始まった

みんな汗だくの体と

満たされないお腹で

気怠げだった

それでも他に

何もすることはない

気を紛らわすには

都合が良かった

先生は今日は

シダ植物の観察をする

みんなの前で

何か凄いことを

思いついたかのように

高らかに宣言する

山奥に来て

この地でしか

見るとこが出来ない

可憐な山野草を

観察するものと

思っていただけに

華やかさのない

シダ植物の観察だから

みんな不満そうだった

同じ夕焼けを・2024-11-17
迷霧の連弾


迷霧の連弾
51/260

教室は独特の喧騒だった

明日から夏休み

それが理由に違いはない

それほどまでに

夏休みの存在は

偉大だということだ

部活動の最後の大会が

間近に控えていても

重量級の宿題を

抱えさせられても

高校受験に向けた

様々な業が待ち受けても

夏休みという空気が

苦しみを紛らわせてくれる

キミを見つけて

席に向かった

キミは特に何も

想いはなさそうに

いつものように

静かに席に鎮座していた

ボクはおはようと挨拶して

キミにキャンプの

参加申込書を

提出したか尋ねた

キミは視線だけを

ボクに向けて

軽く首をたてに振った

素っ気なくても

何か言葉を返されると

期待していただけに

少し残念だったけど

キミとキャンプに行ける

そのことが確認出来て

嬉しさが満ちてきた

同じ夕焼けを・2024-11-10
迷霧の連弾


迷霧の連弾
53/260

駅に着いたら

先生と数人の生徒が

既に着いていた

その中にキミの姿もあった

キミは女性の先生に

ピタリと寄りそっていた

キミに話しかけて

良いものだろうか

こころは葛藤するだけで

答えは出やしない

とりあえず

朝の挨拶でもしよう

そう考えて

いざキミにおはようと

声を発しようとした

でも声が出ない

終業日のように

素っ気ない態度で

あしらわれようなら

キャンプに行くのが

辛くなってしまう

開放的な季節とは裏腹に

閉鎖的な考えが

こころを凍えさせた

同じ夕焼けを・2024-11-12
迷霧の連弾


迷霧の連弾
76/260

先生から出された課題を

生徒たちが提出にきた

全て正解で

歓喜の叫びをあげる者

間違ったシダを提出し

悲鳴をあげて

再び探しに行く者

ボクたちは

他人事のように

眺めてたら

先生はもうあと一人で

夕ご飯の仕事が

しなくて済む枠が

なくなってしまうぞ

ボクたちに向けて言った

キミは全く慌てることなく

せっかくのキャンプだから

夕ご飯の準備も楽しみたい

いかにもそれを

希望しているかのような

夏の日射しを反射した

曇りない笑顔で答えた

先生は喜んで

キミを見つめていたら

こちらを向いて

ボクにも同じ考えなんだな

そう問いかけた

同じ夕焼けを・1日前
迷霧の連弾


迷霧の連弾
66/260

テントを建ておわると

昼ご飯にありつけた

先生はコンビニのおにぎりを

みんなに配った

食べ盛りの上に

体を動かしたのに

おにぎり2個では

足りないので

みんな文句を言っていた

先生は晩ご飯は

奮発しているから

文句を言うなと

みんなを治めるのに

躍起になっていた

保健の先生が

怒ると余計に

お腹が減るから

ガマンしなさい

みんなに向けて言った

そして先生にも

晩ご飯も乏しかったら

みんな承知しないわよ

そう言って晩ご飯は

満足できる量だと

約束させて

ようやくみんな

落ち着きを取り戻した

同じ夕焼けを・2024-11-17
迷霧の連弾


迷霧の連弾
52/260

いよいよキャンプ当日

8月上旬の夏真っ盛りの日

大きなリュックを背負って

学校近くの駅へと向かう

昨夜は楽しみで

なかなか寝付けなかった

朝寝坊しないか

心配していたけど

不思議なことに

いつもより早く

目が覚めていた

それでも寝不足とは

感じなかった

人は楽しいことで

感覚が痺れるのだろうか

歴史上の偉人たちは

睡眠時間が短かったらしいけど

寝る暇がないほど

忙しいのではなくて

毎日がワクワクの気持ちで

過ごしていたから

少し寝れば

それで十分なのではないか

そんな想像をしながら

足どり軽く歩いていた

同じ夕焼けを・2024-11-12
迷霧の連弾


迷霧の連弾
57/260

バスはひたすら

山の中を進み

やがてキャンプ場前の

バス停に停車した

みんな一斉に

それぞれの荷物を担いで

バスを降りた

空調の効いた車内から

野外に出たので

ムワッとした

夏独特の熱気が

体にこたえた

そこへセミの

容赦ない鳴き声が

耳をつんざくので

暑さが何割も増した

先生は荷物を運ぶため

自分の車で

バスの後をつけていたけど

すぐにみんなと合流し

車のハッチを勢いよく開け

中の荷物を引っ張り出して

生徒に渡した

ボクは荷物を受け取ったら

バスの後ろ姿を見送った

同じ夕焼けを・2024-11-14
迷霧の連弾


迷霧の連弾
54/260

全員がそろった

参加者は14人

生徒12人と先生2人

先生は出席確認の

点呼をして

注意事項を伝えた

その間にバスが到着して

みんないそいそと

バスに乗り込んだ

結局この間に

キミとは挨拶ができなかった

出だしでつまずいたので

もしかしたら

キャンプの間も

キミと一言も

話す機会などないのだろうか

そんな不安なことしか

考えられなかった

みんな楽しそうなのに

ボクだけか蚊帳の外だった

それでもキャンプ場は

二つ隣の町にある

移動手段は路線バス

一時間かけて

たどり着く

バスの中でも

きっとチャンスは

あるはずだ

同じ夕焼けを・2024-11-12
迷霧の連弾

迷霧の連弾
69/260

先生は目的地へと

歩いている最中も

シダ植物の

魅力を語っていた

花を咲かせず

胞子で増える

昆虫による

受粉に依存せず

自らの力で繁殖する

凄く合理的なのに

なぜ植物は

花をつけることを

主流としたのか

もし花をつけることに

重大な理由があるなら

なぜ花を咲かせない

シダ植物が太古の昔から

生存し続けたのか

難しいことを

とても楽しそうに語る

キミはどう感じているのか

後ろを振り返り

表情を伺うと

瞳を輝かせて

活き活きとした表情で

先生の話に

聞き入っていた

同じ夕焼けを・3日前
迷霧の連弾


迷霧の連弾
73/260

周りを見ると

みんなの目つきが

変わっていた

夕ご飯の準備も

後片付けも

しなくて済む

そんな邪な気持ちで

シダの名前を覚えていた

ボクもその中の一人

一番はキミに

間違いはない

だから残り二枠を

手にしたかった

そうすればキミと

健闘を讃え合える

そんな邪な気持ちを

更に積み上げて

先生が手にしている

見本のシダの形と名前を

必死の思いで一致させる

もしかしたら

高校受験の勉強も

こんな感じなのだろうか

決して遠くない未来図が

頭の中を駆け巡る

同じ夕焼けを・2日前
迷霧の連弾


迷霧の連弾
56/260

バスの中で

何もしないのは

気分が落ち着かない

いっそのこと

ダメもとだとしても

何か行動をしよう

そう考えて

ある策を思いつき

早速行動に移した

ボクは席を立ち

網棚に乗せた

リュックから

ワザと何かを

探すフリをして

キミの様子を

うかがった

キミは保健の先生と

何か話している

さすがに聞こえはしない

でも何か真剣な話を

しているように思えた

ワザと探しものが

見つからないフリをして

キミを眺める時間を

稼いでいたら

保健の先生から

席に座りなさいと

注意をされたので

ボクは観念して

大人しく席に着いた

でもその一瞬に

キミがボクを見て

笑っている姿を

見付けだすことができた

同じ夕焼けを・2024-11-14
迷霧の連弾

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