⚠こちらは、文豪ストレイドッグスの夢小説です。
文スト創作キャラの金子みすゞさんが、宮沢賢治くんに恋愛感情を抱いている描写があります。苦手な方は、お気を付けください。
【あなたの大空】
前編
それは、青空の朝のことだった。
殆どの者が外へ出ており、現在、探偵社にはナオミとみすゞの二人くらいしかいない。
すると、ナオミは突然、みすゞに頭を下げたのだ。
「みすゞさん、本当にごめんなさい。」
みすゞは、目をぱちくりさせる。
「はい…?」
ナオミは、しゅんとして告げた。
「この前のことですわ。賢治さんとお兄様が、恋人同士なんて言って。面白かったけど、少し、悪ふざけがすぎましたわ…。」
みすゞは、
「頭を上げてください、ナオミさん。もう済んだことです。」
と、ナオミに笑顔を返した。
その時、谷崎が探偵社に戻ってきた。
「ナオミ、ちゃんとみすゞちゃんに謝った?」
どうやら、外で様子をうかがっていたようだ。
「はい、先程、ごめんなさいしましたわ。」
ナオミがそう返すと、谷崎は、うんうん、と頷く。
「それでさ、みすゞちゃん。これ、お詫びの品です。受け取って欲しいな。」
谷崎は、一冊の本を取り出し、みすゞに渡した。
「あら、これは…詩集ですか!」
みすゞは、パッと顔を明るくさせた。
ナオミと谷崎は、目を合わせる。
「みすゞさん、本当にごめんなさい。」
二人は、同時に頭を下げた。
「もう、良いのです。この詩集はどうしたのですか?発売日が、つい最近ですね…。書店で取り寄せたのですか?」
その質問に、谷崎は笑顔で答える。
「手術前に、マリンスノーを見たかった、っていう少年の、おじいさまから頂いたんだよ。それから…」
谷崎が続きを言おうとした時、探偵社の扉がノックされた。
「すいませーん、宅配便でーす!」
「あ、きたきた。はーい!」
谷崎は、扉を開け、ダンボールを受け取る。
ダンボールは、かなり大きい。
「ん、重!結構腰にくるなぁ…。よいせっと!」
谷崎は、宅配物を探偵社内に運ぶ。
「これもね、先のおじいさまからの贈り物。中身、全部本なんだ。」
「わぁ!どのような本でしょうか。わくわくします!」
みすゞは目を輝かせた。
谷崎は、丁寧にダンボールを開ける。
「詩集、図鑑、小説、絵本。凄いですわね。」
ナオミは、穏やかな顔をしている。
「どれも素敵な書籍です!これは……」
「図書館に寄贈いたしましょう!!」
みすゞは笑顔で言う。
谷崎とナオミは顔を見合わせ、そして微笑んだ。
「みすゞちゃんなら、そう言うと思ったよ。」
「えぇ、図書館、増築工事が終わったばかりですしね。」
ふと、谷崎は時計を見る。
「あ、それじゃあ、僕達そろそろ出なきゃいけないから、また運ぶときは言ってね。手伝うよ。」
「それではみすゞさん、ごきげんよう。」
みすゞは二人に小さく手を振り、探偵社から送り出した。
社内に一人になったみすゞは、ダンボールの中にある書籍を、もう一度見てみた。
珍しい、見たことのない本ばかりだ。
みすゞは、時計を確認する。
まだ、皆が帰ってくるまで時間はあるだろう。
みすゞは「少しだけ」と、谷崎から贈られた詩集を読み始めた。
『あなたの大空』
あたたかな涙の雫を
あなたに届けよう
ふるえる心
真夜中の星座は
あなたにとても 似ている
静寂に 夜風が鳴くように
私は あなたに恋をする
「素敵…」
みすゞは、次のページをめくろうとする。
そのとき、探偵社の扉が開いた。
みすゞは、少し驚き、扉の方を見る。
「ただいま戻りましたー!」
元気のある声でそう言ったのは、賢治だ。
「あ、おかえりなさい。賢治さん。」
みすゞはニコリと微笑む。
賢治は、みすゞの近くに、大きなダンボールがある事に気づき、こちらに寄ってくる。
「みすゞさん、これはなんですか?」
「全て本です。あの、スノードームを見たかったという少年の、おじいさまから送られてきました。」
賢治は、おぉ!、と満面の笑みを浮かべた。
「この詩集は、そのおじいさまが書かれた本だそうです。」
「そうなんですねー!素敵です。この本達は、お部屋に運ぶんですか?」
賢治は、ダンボールを指差し尋ねる。
「あ、いえ、図書館に寄贈しようと思っていまして。」
「なるほど!それじゃあ、僕が運びますよ!かなり重量がありそうですし。」
賢治はニコリと微笑み、ダンボールを持ち上げる。
「え、良いのですか?」
「はい、勿論です!善は急げ、さっそく向かいましょう。」
二人は、図書館に向かっていく。
そして、探偵社には静寂だけが残った。