⚠こちらは、文豪ストレイドッグスの夢小説です。
文スト創作キャラの金子みすゞさんが、宮沢賢治くんに恋愛感情を抱いている描写があります。苦手な方は、お気を付けください。
今回も前回と同様、恋愛要素がほとんどありません。
ご了承ください。
【牛丼ららばい】
中編
「…えっ。そうなんですか?」
賢治は、高橋の顔をまじまじと見つめる。
「うん、実はさぁ、掛け持ちで働いてるコンビニの方で、店長にならないか、って言われてさ…」
頭をかきながら、高橋は言う。
「でも、牛丼屋で働き始めてから結構経つから…、なんか辞めます、って言いにくいんだよ。」
「それに、愛着もあるしね。」
賢治は、目をパチクリさせる。
きっと、凄いことなのだろう。
「じゃあ、店長さんに言わないと!」
でも、と高橋は口をもごもごと動かす。
「人間、素直が一番ですよ!はやく行きましょう!」
賢治が、高橋の腕を思いきりひっぱった。
「い、痛い痛い!ちょ、賢ちゃん、痛いから取り敢えず離して!」
行くから、行くから、と小さな悲鳴をあげる。
そして二人は、牛丼屋に向かった。
「なるほど…。そうだったのか。」
高橋は、店長に賢治に言ったことと同じ話をした。
「…すいません。無断欠勤なんかして。」
椅子に座りながら、高橋は頭を下げる。
「高橋くん」
店長の声に、高橋はビクッと肩を震わせる。
何を言われるかと思ったが、店長は優しく微笑む。
「君の道は、勿論君が決めて良い。ただ、僕は、君の作る牛丼が好きだ。」
高橋は、バッと顔を上げる。
「僕も好きです!店長が作る牛丼より、高橋さんが作る牛丼の方が美味しいです!」
賢治も、店長と同じように優しく微笑む。
「え、賢ちゃん、それは傷つくよ…!?」
店長が、ショックを受けたような顔をする。
高橋は、もう一度、下を向いた。
そして、少し時間が経ち、また顔をあげる。
「…俺、牛丼屋、続けます…!」
店長と賢治は、目を合わせる。
「ほ、ほんとかい?高橋くん?」
「はい」
店長の目を、高橋は真剣な眼差しで見つめる。
「良かったです!」
わー、と賢治は、手をパチパチと叩く。
それと同時に、グゥーと大きな音がした。
「…僕お腹空いちゃいました。」
えへへ、と恥ずかしそうに頭をかく。
「食べていきなよ。高橋くん、厨房、入れる?」
店長が言う。
「はい!ちょっと待っててくれよ、賢ちゃん。美味しい牛丼、作るから!」
高橋は、二カッと笑う。
「はい!楽しみに待ってます!」
賢治も嬉しくなり、大きく返事をした。
プルルルルル、と探偵社の電話が鳴る。
「はい、武装探偵社の国木田です。」
「…はい。申し訳ございません。すぐ社員をよこします。」
国木田は、受話器を置いた。
「…みすゞ、悪いがここの牛丼屋に行って、賢治を持って帰ってきてくれ。満腹になって眠ってしまっているようだ。」
国木田は、住所と簡単な地図を書いたメモをみすゞに渡す。
「あ、はい。了解しました。」
みすゞはメモを受け取り、すぐ出る準備をする。
「まったく、どいつもこいつも…」
ボソッと国木田が呟く。
あの後、すぐに太宰がどこかへ消えてしまい、国木田が、太宰の仕事をやっている。
(大変だなぁ…国木田さんも)
そんな事を思いながら、みすゞは探偵社の扉を開けた。
「んと、ここ、ですかね?」
みすゞは、小さな店の前へやってきた。
店の名前や、メニューを見る限り、ここで間違いないだろう。
「あのー、武装探偵社の金子です…。賢治さんを回収しに来ました…」
扉を開いたみすゞは、小さく悲鳴を上げた。
そこには、たくさんの男性。
「あぁ、武装探偵社の。あの、ごめんね。実はあの後すぐ起きちゃって…」
店長が、苦笑いを浮かべる。
「あれ、みすゞさん?みすゞさんも牛丼屋食べに来たんですか?」
カウンター席に、賢治がいる。
どうやら、周りの男性客と話をしていたようだ。
「あ、あ、あの…。賢治さん。早く帰りましょう。」
キョロキョロと周りを見ながら、みすゞは賢治に言う。
「はい!では、皆さん、さようならー!」
賢治は元気に手を振り、牛丼屋の扉を閉める。
「賢治さん、何やってたんですか?今まで。」
みすゞは、ふと賢治に聞く。
「とても、楽しかったです!歩きながら、お話します。」
そして二人は、探偵社に帰っていったのだった。