凛花・2020-11-30
いつかの恋
独り言
『月が綺麗だよ』
と月ばかりを見てはしゃぐ私
『月はキライなんだ』
と笑った人
今日はひどく疲れた。
また寒さも戻って来たので
お風呂にお湯を溜めた。
お気に入りの入浴剤を入れて
私の少しだけ贅沢な時間。
最近はカモミールの香りが
お気に入りだったけれど
今日は新しく買った森の香りの
入浴剤を入れた。
薄緑のカタマリを ポチャンと落とす。
なんだっけ。この匂い。
どうしようもなく
懐かしい気持ちに包まれる。
思い出すのにさほど時間はかからなかった。
昔付き合っていた彼の匂いだ。
大した思い出は、ない。
でもこの匂いだけは鮮明に覚えている。
彼の事はよく分からないけど
その匂いだけは すごく好きだった。
そうか森の匂いだったのか。
今度 『彼は森の匂いがする』
なんて ドラマチックに
センチメンタルに書いてみようか
なんて考えながら
記憶を辿る。
いつも待ち合わせに
2時間遅れて来る人だった。
森の中で遊んでいたのだろうか。
付き合ってる間 手も握らなかった。
もはや付き合っていたのかも
分からない話だ。
忘れられない人が居る なんて噂を
聞いたりもした。
私達が初めて手を握ったのは
別れてからだった。
ドラマチックでも
センチメンタルでもなく
あるとしたらノスタルジック
大した想いも思い出もない恋。
でも またこの入浴剤は
買ってしまうかもしれない。
そしてまた私は彼を思い出すのだろう。
こんな雨の日は
思い出す
傘を持つのが嫌いな二人
雨に降られれば
やっつけのビニール傘ひとつ
私をかばうせいで
あなたの右肩はいつも
びしょ濡れで
傘を手で押しても
あなたは『俺は大丈夫!』
と優しく笑う
優しいあなた
優しい雨の記憶
恋をしました
とても一途な恋でした
だけど恋すれば恋する程
愛されれば愛される程
薄汚れていく想いでした
どんなに綺麗な言葉を並べても
罪は罪
腕枕は 気になるから
ホントは苦手
それなのに
会えなかった日
『いつもの重みがないから
腕がしびれた』
と笑った人
雨が好きで
傘を持つのが嫌いな私
雨が嫌いなあの人
『お前が濡れるのが嫌なんだ』と
うつむきながら 言った人
あなたには
大切なモノが沢山あって
私の事を好きだとか
大切だとか
優しい言葉を沢山くれたけど
近付けば近付く程
私の事は後回しになった
信じてる人を
待てなくなった
あの瞬間
少しずつ、冬が終わっていく。
あなたを好きになったのは、夏の終わり。
雨が降っていた次の日で、
秋の気配がしていた日。
少し淋しい気持ちになっていた私の前に
あなたはフラリと現れて
体中に光をまとって
ニッコリと笑って、私の横を通り過ぎた。
たくさんの人の中で、
そして平凡な毎日の中で
私の事を覚えていてくれて、そしていつも
私を見つけて微笑んでくれた。
一度私がヘマをして、困っていた時も
そっと近付いて
やっぱり笑いながら助けてくれた。
当たり前の事を
当たり前にやってのけるあなたを
すごいと思った。
どんどんあなたを
好きになるばかりだった。
少しずつ、話をする様になって
嬉しかったけど
私もあなたも立ち入った事は
何も話さなかったし、聞かなかった。
それは冬が終わる今も変わらない。
だけど、私にとって大切な事は
あなたの歳が幾つとか
住んでいる所が何処だとか
そんな事ではなくて、
1番大切なのは
あなたのその笑顔の様な気がする。
あなたの事は何も知らない。
もうじき春が来て、
そしてまた夏が来ても、
きっと私達は同じ距離でいる。
そして、あなたの笑顔も変わらなければいい。
寒さと 恐怖で震えてた私の手を
あなたが強く握るから
もうドキドキしか
感じなくなったんだ
二人やっと素直になれたのは
別れる時
意地っ張りの二人は
素直な気持ちを表現出来なかったけど
お互いに惹かれあっていたね
大好きだし、大好きだったよ
今までありがとう
これからのお互いの道に光あれ
一度も使った事のない合鍵は
今もまだ
私の元に
いつか
ありがとう
と共に返せたら
『目が覚めるまで
そばに居るから』
と優しく頬を撫でた人
ならば私に永遠の眠りを
私の涙の呪いに縛られて
あなたは悲劇のヒーロー
『俺が傷つけた』
なんて
ちゃんちゃらおかしいの
オンナはね
いつまでも傷付いてたりしないのよ
またホンの少し
強くなっただけの事
首に絡まったその呪縛を解いて
早く私を忘れなさい
「『永遠』でも
短いくらいだ」と
抱きしめた人
ダメよ。
彼女から離れるなんて許さないわ
ちゃんと大切にしてね 彼女を。
それが出来ないのなら
要らないの。
最初からその約束だったハズ
今更 罪悪感なのか何なのか
迷子の様に
震える仔犬の様な
あなたを抱きしめながら
私は目も閉じないでキスをする
私の目は遠くの月を見る
復讐でしかなかった恋
涙を流せば可愛い女で居られたけれど
でもそれじゃ 彼女と同じ。
同じモノはふたつも要らないでしょ?
泣かない私だったから好きになったのでしょ?
歪んだカタチ
あなたが傷付く事でしか
満たされなかった私の想い