同じ夕焼けを・2025-09-07
お子様ランチな恋
夏祭り
7ー1
玄関のチャイムが鳴りました
何回も続けて鳴ります
こんなチャイムの押し方は
キミに間違いありません
ピンポンの連続に
引き込まれるように
玄関へと走ります
でも足がもつれて
玄関の手前で
転んでしまいました
その音がドアの外まで
聞こえたのか
キミの笑い声が
ドアを越えて
聞こえてきます
ボクは鼻をさすりながら
ゆっくりとドアを開けたら
キミはいませんでした
ボクの目の前には
プリキュアがいます
7ー3
キミはムキになって
何度も何度も
ボクにボールを
投げさせます
でも何度投げても
ボールは届きません
キミの目は
メラメラと燃えて
ワタシに届くまで
家に帰さないよ
そう言ってボクを
にらんでいます
ボクは怖くて
真夏なのに
ガタガタと体が
ふるえています
こんな状態では
届くモノも
届きません
7ー6
キミはカバンから
日記帳を出して
自慢げにボクに見せます
ボクは日記帳を
パラパラとめくったら
キミの言うとおり
毎日日記が
つけられていました
でもキミの描いた絵は
全部アイスクリームです
そして日記には
アイスクリームの名前と
食べた感想が
書いてありました
ちゃんと毎日
その日のことを
書いているんだよ
キミは胸を張っています
キミの日記は
決して間違いではないけど
何かが違う気がします
この日記を見て
先生は何と言うか
想像もできません
7ー5
これを自由研究として
先生に出すの
キミに聞いてみたら
こんな大発見は
先生に知られたら
ダメなんだよ
勉強もしないで
アイスモナカのことを
考えるから
コンビニに
絶対にワタシには
アイスモナカは売らないでと
先生が文句を言いに行くから
だからキミは
日記に書いたのに
先生には秘密だと
言っています
7ー4
時間だけがたって
何も起こりません
こわごわキミの
顔をのぞいてみたら
キミの頭からは
お鍋のように
湯気が上がっています
もしキミに
卵を握らせたら
ゆで卵ができる
そんなことを
考えていたら
キミは急に
しゃがんでしまいました
もしかしたら
熱中症かと思い
キミの肩をかついで
ボクの家に連れて帰ります
7ー7
熱射病には気をつけろと
おじいちゃんから
言われていたのに
不覚だったよ
キミは悔しそうです
キミのような
元気者が倒れるとは
今日は相当暑いのか
そう思って気づきました
キミは帽子を
かぶっていませんでした
この日差しの中
帽子なしでは
危険なんだよ
気分が良くなっても
帽子なしで
家に帰るのは
危険なことだよ
ボクはそう言って
家にある帽子を
部屋に持ってきます
帽子を貸してあげるから
かぶって帰ると良いよ
いろいろな種類の帽子から
キミのお気に入りを
選んでもらいます
キミはひととおり
帽子をかぶって
麦わら帽子を
選びました
やっぱり夏は
麦わら帽子なんだよ
ある人が言ってたよ
麦わら帽子をかぶると
マリーゴールドに
見えるんだよ
スゴく豪華なんだよ
パンがなければ
みつ豆を食べれば良いんだよ
キミはヒマワリのように
満足げだけと
マリーアントワネットと
勘違しています。
7ー5
それを聞いていたのか
ミンミンゼミが
急に鳴き出しました
ワタシの考えに
セミも感動して
鳴いているんだよ
キミはそう言ったけど
多分笑っていると思います
そういえば絵日記は
どうしたのだろう
他の宿題は
夏休みのいつやっても
同じだけれど
絵日記はほっておくと
何を書いたら良いか
分からなくなります
でもキミのことだから
勝手に想像したことを
書くのだろうと
思っていたので
試しに聞いてみたら
キミは失礼なと
怒りました
7ー7
ふと気になって
ページをめくったら
明日の分も
書いてありました
明後日もその次も
8月31日まで
書いてありました
そこに描かている
アイスクリームは
お店で売っているけれど
高くて買えないモノです
そして夏休み最終日は
大きな容器に入った
外国のアイスクリームです
嘘を書いたら
日記じゃないよ
ボクがそう言ったら
嘘じゃないよ
願いは叶うんだよ
今日帰ったら
笹に飾り付けるんだよ
7ー1
夏休みのある日
キミはボクを連れて
公園に行きます
キミは手に
ドッジボールを
持っています
そして公園についたら
夏の特訓をするよ
そう宣言して
ふんわりと
ボクをめがけて
ボールを投げます
不意をつかれたので
ボクは手を出すことも
できないまま
ボールはボクの胸に当たり
地面ではずみます
キミは夏の太陽も
逃げていくほどに
ギラギラした目で
ボクを見ています
7ー6
少し元気を
取り戻したキミは
みつ豆を食べたら
完全復活できるんだよ
少しハリのある声で
ボクに言います
そんな都合よく
みつ豆があるとは
思えなかったけど
台所を探してみたら
お中元にもらった
みつ豆の缶詰がありました
冷えてはいないけど
これを食べれば
キミは元気になると思い
容器に入れて
部屋に持って行きます
キミはみつ豆を見て
目を輝かせます
もう食べなくても
元気なんじゃないかと
思えるほどに
みつ豆は効果てきめんです
7ー3
そう思っていたんだけど
やっぱり食べたいアイスを
ガマンするのはイヤなので
全種類食べるのはやめて
好きなアイスを
買って食べたんだよ
キミの言うとおり
キミの絵日記に書かれた
アイスクリームには
チョコモナカが
何回も出てきました
最中とアイスクリームと
チョコレートが
一度に食べられて
とても得した気分ですと
その日の日記に
書いていました
7ー4
ボクの家で
宿題をするようになって
ようやく終わりが
見えてきました
だけど5分考えて
分からなかったら
ボクの答えを
写していたので
自分の力でやりとげたとは
言えません
キミにそう言ったら
一問に5分も考えたんだよ
とてもスゴいことだよ
逃げていく夏を
追いかけたいのに
一体どれだけ待ったと
思っているんだよ
キミは鬼ごっこでも
しているように
言い返します
7ー4
さらに日記には
こんなことが書いています
やっぱり最中なので
栗とつぶあんも入れたら
スゴいと思います
これこそが
完ぺきなアイスモナカだよ
パーフェクト超人も
逃げていくんだよ
マッスルブラザーズだよ
キミは自信満々です
7ー2
ボールを拾うと
キミに投げ返します
でもボールは届かず
キミの足もとまで
転々と転がります
キミはボールを拾うと
ボクに投げ返して
もう一度と言います
さっきよりも
力をこめて
キミに届くように
投げたけど
やっぱり届かずに
転々とキミの足もとに
転がっています
もう一度とキミは
ボクにボールを
投げ返します
そしてまた
ボールを投げるけど
やっぱり届きません
7ー6
じゃあ自由研究は
できなかったことに
なってしまうね
ボクがそう言ったら
そこはちゃんと考えているよ
そう言ってキミは
カバンから
原稿用紙を出しました
ここに自由研究の成果が
書いてあるんだよ
キミは自慢気に言うけど
自由研究を原稿用紙に
書く人は初めてです
とりあえず読んでみて
キミはボクに催促します
ボクは興味が沸いて
読んでみました