同じ夕焼けを・2024-07-10
お子様ランチな恋
コーヒー
14ー8
飲みたくなくなったので
やっぱりいらない
そう言ったらキミは
立派な大人になれないよ
そう言ってボクの頬を
つねります
大人になったら飲む
そう言って抵抗したら
いつも勉強しないと
いい大人になれないと
言っているくせに
反撃を受けます
観念してボクは
飲むことにします
14ー4
でもココアも
チョコレートも
ババロアも
茶色いけど
おいしいよ
そう返したら
大人にだまされて
いるんだよ
茶色い食べ物は甘いけど
コーヒーは甘くない
だからコーヒーを
初めて飲んだら
甘くなくて
もう飲みたくない
そう思わせているんだよ
14ー2
いつものように
ボクの部屋に行って
キミは紙袋から
持ってきたものを
取りだします
それは先っぽのとれた
三角の形をした機械
細くて平たい棒が
ついていて
さらにその棒には
おもりのようなモノが
ついています
14ー13
なんで大人は
こんな苦いモノ
飲むんだろうね
キミが問いかけます
そういえば
昔はコーヒーを
薬として飲んでいた
そんなことを
聞いたことがある
そう答えたら
確かに薬は苦いもんね
キミは納得して
大人になると
体のあちこちが悪くなる
そんなことを
先生が言っていたね
しみじみと言います
14ー7
作り方はココアと同じだね
スプーン3杯のコーヒーを
カップに入れて
お湯を注ぎます
茶色いカケラは
溶けると黒くなります
スプーンでかき混ぜると
真っ黒なお湯が
でき上がります
あまりにも真っ黒なので
おいしそうではありません
14ー13
キミはボクに
肩車をするように
言いつけます
すごくコワイ顔なので
ボクはだまってしゃがみます
キミはボクの
首の後ろにすわります
ボクはよろめきながら
ようやく立ち上がります
キミはヨーヨーをおろして
力いっぱい
手を振りあげます
14ー6
コーヒーのビンをあけると
ニオイがします
なんだかコゲくさい
ニオイがします
でも頭がスッキリする
そんなニオイです
不思議なニオイだね
ボクがそう言ったら
ますますあやしくなってきた
キミは興味深く言います
14ー3
これはなにとたずねたら
キミは名前を思い出せず
腕を組んで
天井を見上げて
ウーンとうなっています
ボクはこの機械は
ウーンという名前なの
ふざけてそう言ったら
キミはボクの頬をつねって
今思い出そうと
しているんでしょと怒ります
14ー4
キミが思い出している間
ボクは機械を手にして
何に使うのだろう
考えています
ようやくキミは
機械の名前を思い出して
ポンと両手をたたきます
この機械の名前は
メトロポリタンだよ
うれしそうに言います
14ー12
ヨーヨーは糸をつたって
ゆっくりとあがります
もう少しで手のひらに
届きそうになったら
ヨーヨーはとまって
おちていきます
キミはボクを
にらんでいます
でもボクは何も
悪くありません
キミはムキになって
もっと高いところから
やってみると言います
14ー10
ボクは台所から
ビスケットを持ってきて
かじります
でも口の苦みは
なかなか取れません
キミはそんなに苦いのと
たずねたので
こんな苦いものは
初めてだよ
苦い口で答えます
14ー5
なんだか無茶苦茶な
考えだなと
思ったけれど
大人は無茶苦茶なことを
平気でするから
そうなのかと思いました
甘くないのに
おいしい物
どんな味なんだろうね
そう問いかけたら
多分今までに
味わったことのない
すごくおいしい味に
違いないよ
キミは楽しそうに言います
14ー1
今日もキミは
紙袋を抱えて
ボクの家にやってきます
また面倒なことに
まきこまれたくないので
キミが玄関に入ったら
ワザとブーッと叫びます
何かあったの
キミがたずねたので
重すぎて入れないから
紙袋は外において
そう答えたら
エレベーターじやないよ
キミは怒ります
14ー11
キミは飲んでみようとします
ボクは止めたけど
やっぱりキミは
試したいようです
ボクはすぐに
口直しができるように
ビスケットを
箱から出しておきます
キミはカップに
口を近づけます
ニオイがイヤなのか
顔をしかめます
その顔を見て
思わず笑ってしまったので
そんなに人が
苦しんでいるのが楽しいの
そう言ってボクを
にらみます
14ー2
キミは大人が飲むから
絶対においしいに
決まっている
子どもが飲むと
すぐになくなるから
隠していると言います
ボクは台所から
電気ポットと
コーヒーのビンと
カップを持ってきます