褻之糧。・4時間前
しあわせのつくりかた
さむいときの、あったかいはしあわせだ。
それは毛布でも、飲み物でも、人のぬくもりでもいい。
…急に冷え込んだ、夜に。
土鍋をごそごそと取り出して、白菜と葱、生姜を炒める。水と中華の素を入れて、その間に室温に戻しておいた挽肉と格闘する。
白菜たっぷりたべたいねえ、だの、あっ冷凍ネギも出しておけばよかった、だのと大きなひとりごとを独り、ごちる。
冷凍庫から出したばかりの冷凍ネギほんの少しと、野菜室で見つけたレンコンは皮を剥いて刻んで、ごま油や片栗粉、挽肉などと混ぜ合わせる。生姜とニンニクもすり下ろして、ああ塩も。挽肉は塩と合わせると粘りが出る、と言うよねえ。
寒い日だって手で練るから、少しでもぬるくしておくのだ。手を拭くためのキッチンペーパー1枚、忘れずに。
…なぜかな、ネギの仕業かな、肉団子は緑色。とても血色が悪い。さながらゾンビの色、と思いながら手を拭く。石鹸で洗う。
ちょうど土鍋の方から音がする。蓋を開ける。
待ってましたと沸き立つところへ、スプーンふたつ、器用に使ってぽとりぽとりと緑色の肉団子を落としてゆく。…すぐ、ぴんく色に色付く。ちょっと安心。
あまりにもあまりにも、な色だから何度か匂いを嗅いでしまった。おいしい匂いしかしない。
ひとつ、ふたつ、みっつ、…たくさん。食べたときの満足感は欲しいけれど、欲張りな私は数も沢山食べたいので、心持ち小さめに落としてゆく。挽肉を練ったボウルを空にして、さっと洗ったそのボウルで今度は春雨を戻す。冷水で、分量は…食べたいだけ。
春雨は乾燥わかめと違って量が大きく変動しないので扱いやすい。
土鍋の中、ぼこりぼこりとぴんく色の肉団子たちが浮かんでいる。スープの味見、…醤油を足して、塩少々。春雨を入れるから少し濃いめ、くらいにして…火を止める。水を切った春雨を入れて蓋をして、お膳のど真ん中。主役だもの。
ぱかり、蓋を開けた頃が塩梅なのです。
あったかい、はしあわせなのだ。
今年の冬もどれだけ、挽肉と格闘するのだろう。煮込んだ白菜を味わうのだろう。素材の出汁たっぷりのスープを啜って、しあわせな吐息を吐くのだろう。
いつか土鍋を囲む、そんなあたたかい日を。
…あ、お豆腐入れ忘れた。