#特別な夜

ブルーノートの旋律を奏でながら

ひと夜の夢に酔い痴れる

最低限の安心と引き換えに

本当の私を擦り減らしてる

秋の夜長に弾き語るセットリストの
"君"や"あなた"は全部
会いたくても会えない貴女でした

思わせぶりなら枯れちゃうわ

心を摘み取った責任を取って

心の容量は気まぐれだから

人に優しくできない日もあるよ

夕陽のインクが心に落ちた

透明な僕を染め抜いてくれ

寝ている君には聞こえない

そう分かっていても

好きの2文字がどうしても言えない

電子機器を通じて繋がる世界で

君と私が赤い糸で結ばれることを
祈っているの

君と笑い合えたことは

僕の本日のハイライト

描いた夢色妄想スケッチ
きっと叶う…だから
ずっと待ち続けた

貴方との別れは夜空に放たれ

流星となって次の恋の願いが叶う兆しを

私の脳裏に焼き付けてくれたの

空を見上げるにはまだ眩しいから

もう少しだけ待ってて欲しいんだ

悲観ばかりじゃ苦しいから

ときには心を遊ばせてみようか

仕事でしか
一緒に過ごすことはできなかった

ケンカしたことも
抱きしめてくれたことも
隣で寝たことも

全部が特別だった

怒った顔
いたずらっぽい瞳
切ない声

まだ憶えてる

百合はいつも
俺を見上げる

その目は小さくて
丸いとかいう形ではなく

赤児のように
曇りなく真っ直ぐに見る

俺はその眼差しに
時々狼狽しながら
見返すことで

俺の眼差しまで
清く澄んでいくような
気がしていた

ただ､今まで
体裁を繕い
嘘で固めて来た俺には
ちょっと荷が重いと
感じることもあった

そんなに真っ直ぐ
見つめられるほど
俺は清廉潔白ではない

でも､それすら
包み込んでくれるような
温かさがあった

俺は時々その温かさに
甘えるように
嘘をつくくせがある

バレた時の
百合の辛そうな顔
溢れる涙に
申し訳無さがいっぱいになり
もう絶対にしない
と誓うけれど

それに抗えるほど
俺は強くなかった

そう、百合は強いのだ

きっとそれは
父親からの絶対的な愛情

小さな頃から
年子の長女だから
将棋指しの父親に
連れ回っていたらしい

梵田さんの肩には
いつも百合がいて
将棋を指す父の膝の中には
いつも百合が座っていた
とよく知人に言われてた

怒られたのは
父のタバコの吸い殻を
口に入れてしまった時
ぐらいだと笑う

かなり当時では遅い38歳の
やっと産まれた女の子

父親はたいそう大事に
育てたみたいだ

その頃からの
絶対的愛情が
百合の強さの
基盤だと思う