#とりあえず出来た

爺ちゃん



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手紙読むのは落ち着いたらでいいから笑


膵臓癌のステージ4、進行性の癌。
末期癌。摘出不可。



ただ死を待つだけの毎日、
きっと覚悟を決めていたことでしょう。


ひとりで泣いてたんでしょ？
爺ちゃんひとりで、ずっとずっと。



不安に押し潰されそうになっても、
ひとりでずーっと、耐えて耐えて。



僕が久しぶりに貴方に会えて、胸がいっぱいになって泣き崩れたのを覚えていますか

あの後に母さんが教えてくれたよ
｢桜希が泣いてるの見て爺ちゃんも泣きそうになった｣って、


爺ちゃん、我慢しなくていいんだよ。
いっつもいっつも我慢してたの知ってるよ。


大丈夫じゃないなら、｢大丈夫だよ｣って
言っちゃだめだよ。
痛いなら「痛いかなぁ」って言うんだよ。

「辛い」、「死にたくない」って泣き叫んで良かったんだよ、





1月7日。
何となく分かっていたけど、あれが最後になるとは思ってなかった。

……病室の匂いが、変だった。
多分、爺ちゃんからする匂い。

だから、「もうすぐお別れか」って分かったよ




もう前みたいに喋れないのに

「爺ちゃん、桜希だよ、分かる？」

って手を握って言った時、手を握り返してくれて「あぁ…」って喋ってくれて嬉しかった

目も開けてくれた


でも、あぁやっぱりもう喋れないんだって実感がじわじわ来てたくさん涙が出てきた


爺ちゃんのこんな姿見た事なかった。


機械音が止まないひとりぼっちの病室、
たくさんの機械に繋げられて、起き上がる事も出来ない、喋る事だって出来ない、
前より小さくなった爺ちゃん。



僕ねえ、悔しくて仕方ないよ、
何で爺ちゃんがこうなったのか分からない

婆ちゃんも父親も母親もみんなみーーんな
悔しいって言ってるよ。


死に顔が本当に爺ちゃんの寝顔だからさ、

爺ちゃん、って呼んだら起きるんじゃないかって。でもやっぱり、返事はかえってこなくて、息もしてない、動かない。



人間って嫌だね。弱くて脆い。
すぐ死んじゃう、儚い生き物。


でも、だからこそ
別れの時にどれだけその人を思っているのか分かる。


爺ちゃんだけじゃない。
僕の友達何人も、10代前半で病気で亡くなったり。


みんなさ、「死にたくない」「助けて」
って言いながら亡くなったよ。

助けてあげたかったよ、みんなみーんな
僕の大切な人達だから
僕はいつもみんなに助けられていたから

だからきっと爺ちゃんもそうだったのかな


爺ちゃん、お疲れさまでした。
よく頑張ったねって、みんな褒めてるよ



爺ちゃんは、もうひとりじゃないよ。
入院中はひとりだった時あったけど、
もうひとりじゃない。
ひとりにはさせないよ、大丈夫。
みんなちゃーんと爺ちゃんの隣にいるから



誰もがみんな愛されるって訳じゃないかもしれないけど、僕がたくさんの人に愛されているように、爺ちゃんもたくさんの人にあいされているから。


だから、これだけは忘れないで、絶対に。

忘れたら、せっかく辞められた煙草入れてやる（




僕達がずっと、ずーっと爺ちゃんのそばに居るから



もう怖くない、辛くも苦しくもない
不安な毎日も、
わけの分からない治療も



全部終わったんだよ
もう全部から解放されたんだよ
爺ちゃんが頑張ってたから


その小さな体で、手術痕がたくさん残って傷だらけのその体が、爺ちゃんが。

本当にありがとう、
生きてくれてありがとう

僕達を喜ばせてくれて、笑わせてくれて、幸せにしてくれて。


頑張ってくれてありがとう。
もうゆっくり休もう。疲れたでしょ笑



本当にお疲れさまでした。


イケメンで誠実で真面目で、たまに面白い、優しくてかっこいい自慢の爺ちゃん

あのでっかい家に婆ちゃん残すのはだめだよ笑


貴方の孫で僕は幸せです、
いつまでもずっと貴方の孫でいる事を後悔する日は来ないでしょう。


爺ちゃんの孫で居られる事に、
こんな幸せなんだって思うとは考えてなかった笑




今までありがとうございました。
そして次は僕達を見守っていてください。


またどこかで会える日を楽しみに。


だいすきです。
次は手も握るし、強く抱き締める

約束です。

桜希より