マジック
一夜の奇跡
「メリークリスマス!」
君に送った、1行のメッセージ。
君はすぐに
『メリークリスマス』
送ってくれた。私は調子に乗って
「会いたい」と送った。
私の冗談みたいな本音。
バカにされるだろうと思いながら
バカにされたらほんとに冗談にすればいい
そう思った。なのに君は
『いいよ、どこ?』
そんな風に真面目に返してきた。
だから私は
「近くの公園」
と送った。
『了解』と返信が来て
公園のベンチに座って数分待つと
『っよ、待った?』と声が聞こえた。
ほんとに会いに来てくれたのが
嬉しくて緩んだ頬を隠すように
マフラーに顔をうずめて
「待った、寒い」
本当は来たばかりだけど
照れ隠しでそう言った。
素直な君は『ごめん』と言った。
そして沈黙が流れ
2人で空から落ちてくる
雪をながめた。
沈黙が気まずくて私は口を開いた。
「プレゼントないの?」
『え、ないよ』
期待はしてなかった。
君から欲しいと思ってもいなかった。
クリスマスに君に会えただけでも
幸せだったから。だけど君は
『何欲しい?
俺にあげられるものならあげるよ』
そう私に聞いた。私はすぐに口を開いた。
「いいよ、会ってくれたのがプレゼントで」
素直に言った。
「逆に欲しいものないの?」
自分だけプレゼントもらって悪いな
と思って聞いた。
『え、なんだろう』
少しあいたあと君が
雪に溶けてしまいそうなほど
小さな声でつぶやいた。
『おまえ_』
「え、」反射的に声を出していた。
そんなのお構い無しに
君は続けた。
『プレゼント、お前が欲しい』
次はハッキリと言った。
『好きだ、付き合って』
時が止まった。と思った。
声が出なくてコクコクと
必死に首をうごかした。
『よかった、振られたら恥ずいやつじゃん』
と心から安堵したような嬉しそうな
君の声を聞いて私は笑顔で言った。
「クリスマスマジックだね」
『だな。』
そう言って2つの影はひとつになった。