はじめる

#五線譜と原稿用紙

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全28作品・


僕に手を振る君を、無視して通り過ぎた。


罪悪感で胸がチクリと痛んだその瞬間、
視界が眩しくなる。




「あぁ!!まただ!」



勢いよく跳ね起きた。


君の夢を見た朝は、いつも目覚めが良い。

何度夢に出て来れば気が済むんだ。
君が出てくる時に限って、
どうして現実味を帯びた内容ばかりなんだ。

僕は、君の望むままに離れてあげただけじゃないか。

君にとって、僕の存在は足枷なんだろう?


どうして今更、


掛け布団をぐしゃりと握りしめる。


よくも平安人は、夢に出てくる人は自分のことを
想っているだなんて都合のいいことを考えたものだ。

もしもタイムスリップをしたら、
「それは満たされない思いの現れなんですよ!」
と叫んで夢をぶち壊してやりたい。


…どうして、たかが夢の中の君のことで
こんなにも思い詰めているんだ。



本当はとっくに解っていた。
君を忘れられないのは僕のほうだって。




本当は、平安時代の考え方が、
今でも変わっていなければ良かったのにと思ってしまう。



君が僕を想っていると勝手に思い込めれば、
ここまで苦しむこともなかっただろうに。



「できることなら、もう一眠りしたかったな」

ふぇるまーた.・2020-05-06
五線譜と原稿用紙
なんだこれ
小説
200字にしたかったけど諦めた
願望夢
夢占い
失恋
片想い
拭いきれない英文和訳感
嗚呼仮定法過去
英文の和訳ばかりしてたんだもん((



君と他愛ない話をする時が、
僕が最も好きな時間だ。


しかし、今日は特別。

僕の意志は、窓の外の月を見れば
すぐお分かりだろう。



会話が途切れると、深く息を吸い込んだ。



「月が綺麗ですね」



「ありがとう、」

「…それでも生きていたいわ」


スマホ越しに籠りがちな君の声が聞こえた。



「…そっか」

僕が答えるとすぐ、プツリと電話が切れた。

もう一度窓の外を見ると、月が白くぼやけて見える。










_「君は、やさしく恋を終わらせにくるなぁ」

ふぇるまーた.・2020-01-11
ぴったり200文字で小説書いてみようチャレンジ
写真に月があると想像して!()
NOTEに満月の写真が普段ないの残念だなぁ
これは200文字ではちょっと…
今日の月は綺麗でしたね!!
月が綺麗ですね
夏目漱石的なの
電話
優しい
失恋
五線譜と原稿用紙


重い扉を開ける、誰もいない音楽室はありえないくらい静かで、合奏隊形のまま、椅子と譜面台が規則正しく並べられていた。

窒息しそうなくらい張り詰めた空気へと私が一人放った連符、現役最後のはっちゃけた宝島、受験勉強の盛大すぎる息抜きのペールギュント、全ては時間と共に、穴だらけの壁に吸収されて、溶け込んで消えていった。

私の目に写った光景はまるで異世界のように見えた。いや、異世界なのは私が過ごしてきた時間のほうだったのかもしれない。おかえり、異世界。そしてさようなら。いつか帰る日が来るとして、そのときはもう異世界ではないはずだ。


あの頃と同じホームの位置で10分後の電車を待つ。あのときの私に寄り添った音楽はシャッフル再生、スキップは6回まで。それもまた今は違う、聴く音楽さえも自分の意志に委ねられる。それならばあの頃の私を代表する曲を、と分厚い雲間から青空の覗く、見慣れたジャケットをタップした。

イヤホンから耳へ注がれる透き通った声、柔らかなピアノの音色、心音のようなベース。青春なんて群青だった。あの頃の夢も目標も、自分の心の奥底で独り、守り抜いた私を誇ろう。結局自分を苦しめるのは自分、救うのも自分しかいなかった。そんな高校時代をなぞるように、見覚えのある景色が左手へ流れていく。

それでも、窓の外にどこか違和感を抱いたのは、踵の高い靴のせいだと気づいてしまう。あの頃にはどう足掻いても戻れなかった。 降りる駅までは一瞬、イヤホンを外し、出口へと歩く。ヒールの音がいつもより響いて聞こえたのはきっとそういうこと。


さあ、これからどう生きようか?

ふぇるまーた.・2022-03-18
日記
小説
ノンフィクション
学校
高校
卒業
音楽
吹奏楽
どんな未来が待とうとも
五線譜と原稿用紙
ふぇるまーたmemory

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に28作品あります

アプリでもっとみる

どうして、
意思表示をランク付けされなくてはいけないのだろう

僕がそこに逝きたい気持ちを
わざわざ綺麗にまとめ上げて飾れとでも言うのか。


赤い字でいっぱいの、自分の紙に目を落とした。

評価は5段階中、2。

『死後の自分の希望についてが、
相手側に任せきりな感じで良くないですね』

だって、無いんだよ

生まれ変わりの自分の姿なんて、
漠然としか想像できないんだ

ただ、僕は逝きたい。
すべてが充実している、あの場所へ。

それだけじゃ、駄目なんですか。

…駄目なんですよね


…わかってますよ


手に力が入っていたのか、
気づけばその紙はぐしゃぐしゃになっていた。



僕は深く、ため息をついた。






『勘弁してくれ、死亡理由書』

ふぇるまーた.・2020-02-09
謎のふぇるまーたworld
五線譜と原稿用紙
なんだこれ
進路
大学
受験生
希望
大変ですよね
みんなそれをこんなふうに言うのでノリで書いてしまった



ガタッ。


静かな教室中に響く、机の揺れる音で目が覚めた。


そうだ、今は授業中だった。



午後の学校は温かく、 自分も一週間の疲れが溜まっているのか、ついつい微睡んでしまうのだ。


「お疲れだね、あともう少しの辛抱だよ、
明日は土曜授業もないし、皆の大好きな休日さ」



先生がそう言うと、
笑いがどっと起こる。


さらに君まで、僕のほうを振り向いて
クスリと笑いかけて来た。






『君が笑ってくれるなら、
もう一眠りしてしまおうかな』

ふぇるまーた.・2020-03-20
ぴったり200文字で小説書いてみようチャレンジ
学校での想い出
授業
微睡み
五線譜と原稿用紙
授業中とても眠い
先生やさしすぎる好き
土曜授業は敵でした




『転校してきた猫森くんの雰囲気気になるな~』

『猫森くんは既に雛花ちゃんが狙ってるみたいよ』

『あれ、雛花ちゃんって彼氏いたよね?』


うわぁ、怖いな


『七葉ちゃんと一輝くん、別れたんだって。
七葉ちゃんに他に好きな人ができたとか』


二人の関係はその程度だったのだろうね


『夢見ちゃんと冴凪くん、折角両片想いだったのに
二人ともはっきりしないから終わってしまいそうなのよ』

『うわぁ~もったいない!!私も青春したい~!!』


ああ、うるさいな



☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆

『I'm in wonderland』
story A

※この物語はフィクションで、
実在する人物や団体などとは関係ありません


☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆





みんなみんな、愛に飢えているんだ。


貼り付けられた笑顔の下で、
必死になってそれを探しているんだ。


そんな皆が怖かった。
自分はそうはなりたくないと思った。


僕は人より心がいくらか敏感で、
恋と呼べる感情は何回も経験していた。


それなのに、変なプライドは
自分に笑顔を貼り付けることすら許さない上に
どんな行動を起こすことにも邪魔してきた。


そんなプライドに支配され続けた挙句、いつでも想いは
心の内に秘めるようになっていた。



今みたいな身近な色恋沙汰を聞く度に
自分の目はいつも軽蔑の色を含んだだろう。


きっとその軽蔑は、自分宛のも含んでいたのだ。
_彼らを軽蔑してしまう自分への。



本当はその過程まで行くこと自体、羨ましかった。



…自分も誰かに愛されたかった。



だけどこんな捻くれ者で、口下手な奴を
愛してくれる人なんているのだろうか。




_みんなみんな、愛に飢えているんだ。

それは結局、僕も同じだった。





















☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

すっっっごく久しぶりに小説書きました

まとまりないのは許してください…
そんな能力がもともとないんです……

語彙力と文章力を向上させることに
重点を置いているので暖かい目で見守ってください🙇

登場人物の名前にはみんな意味があります


あああああテスト嫌だな

ふぇるまーた.・2019-10-09
Wonderland🌹by.fermata
五線譜と原稿用紙
note文庫
小説
創作
軽蔑
愛されたい
わんだーらんど


「そこのアクセントはどう吹くの?」


その問いで、
思わず僕は譜面を凝視した。

音符の上に何気なく乗っかっている
ただの平仮名の「く」みたいな形のそいつ。


「え……っと」

言葉が詰まって、何も出てこない。

「出始めは四角くて、
少しずつ細くなっていくイメージです」

隣に座っていた彼の声が、
沈黙のはりつめた空気を追い払った。


「そうだよね、それが1番自然だね」
指揮者は満足そうに微笑んだ。



僕は気づいた、

僕の音楽は、ままごとのようなものだったのだ。


楽譜通りの音を並べて、
それとなく流していく。

耳ではできた気になっていても、
具体的にはっきりと思い浮かべて吹かなければ、
相手に自分の意図が伝わるはずなんてないのだ。


この空間の中で、表に出せない悔しさが、
指先に集中して、カタカタと動きはじめた。


「うるさいよ」


悪気は無さそうな、彼の呟きが僕の胸に刺さった。

ふぇるまーた.・2020-01-27
五線譜と原稿用紙
謎のふぇるまーたworld
なんだこれ
吹奏楽
音楽
創作
吹奏楽あるある
イラつくとキーをカタカタする癖私もやめたい

「ねぇ、どうしてあんなことしたの?」


「…駄目だった?」

返答のサインが傍で鳴る。
とても耳障りな、私の一番嫌いな声だ。


今日の行動にはとても焦りが見えて、
普段落ち着いているほうだと自負できる私とは
明らかにかけ離れていた。

「疑問に思うのは私じゃないからだよ」

自分の心の中を読んだように、
また"それ"は鳴る。

「でもあなたは私じゃ…」

「自分のことなんて案外
自分でもわかっていないもんだよ」

私の言葉を遮って、今度は
哲学的なことを説いてきた。

「あなたはそれなりに頭がいいから
言っていることはわかるよね?」

私を呆れた表情でソファーから見下す"それ"は
私にそっくりで、一層苛立たしい気持ちで
満たされていった。

「わからなくもない…けどさ」

何が起こっているのか理解しがたい状況に
頭を掻きむしる。

「ねぇ、無責任すぎない?
そもそも私を必要としたのはあなただよね?」

そうだ。

突然私の元にやって来た、
目がくらみ、息継ぎができないほど忙しい日常。

布団の中で目を瞑れば、
大嫌いな朝は5秒でやってきた。

休ませてくれという心の叫びと裏腹に、
いつも風の流れに逆らって自転車を漕ぎ続けていた。


あと何年も続けなければいけないその日常の中で、
すでに私は生きている意味を失いかけていた。

このまま、自分"一人"で
乗り切ってゆける自信がなかったのだ。


「こうなる覚悟はしていなかった?
こうやって、私に問い詰められる覚悟」

していた。していたはずだ。

そのはずなのに、いざこの時が来てみれば、
自分への絶望やら、悔しさやらで
胸がはちきれそうになっているのだ。

「ははっ、そういうところも
やっぱり"私"だね」

くしゃりと目を細めて、
思いっきり口角を釣り上げる。
まるで私のようなその笑顔こそ憎い。

何がおかしいんだ。あなたは私じゃないか。
どうして笑っていられるんだ。


「…私の言葉を理解できていないようなので、
もう単刀直入に聞きますね」

ソファーから降りて、
正座で私のほうに向き直る。



「今の私とあなたは
どっちが優れていると思いますか」


✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳続く

ふぇるまーた.・2020-03-11
前編
五線譜と原稿用紙
小説書いてみた
note文庫
辛い
キリが悪いぞ

「今の私とあなたは
どっちが優れていると思いますか」

「…は?」

この世で一番難しいなぞなぞだ。
だってどちらも、"私"なのだから。
優劣のつけようがない、全く同じ存在なのだから。


「真剣に考えてほしいな」

「私が必死に勉強して取ったあの成績を
どう思いましたか?」

何百人もいるあのよくできた人々の中で、
"私"は両手に入るくらいの
素晴らしい成績を取ってきたのだ。

最初にそうわかった時は有り得ないと思った。
だって、種も仕掛けもない、ただの"私"なのに。


…そこではっと気付く。
"私"の努力の可能性は無限大だったことに!


「そしたら、クラス内で今の立場でいられるのは?」

私のクラスは、スクールカーストが
はっきり見えて、ドラマにあるような
典型的なクラスだ。

その中で、私は中立的な位置にいる。
カーストの中で上の人とも、下の人とも、
笑って話ができる立場で、
毎日平穏に過ごせているのだ。

愛嬌もなく、大した話のネタも
持っていないはずの"私"が、
よくこの立場まで登りつめたと思った。


…全てが、"私"の努力によって
得たものだったのだ!


「その間、あなたは一体何をしていたの?」

彼女の言葉は次第に、ずしりと私にのしかかるほど
重く、苦しいものになっていく。


彼女がそんなにも努力をしていたにもかかわらず、
私はあまりに拙い音楽を、小説を、
誰の口出しも許さずに、排出し続けて来たのだ。


何が、「自分は無敵」だ。
自分の最大の敵は、自分自身ではなかったか。
私は、その「自分」を、そうして自ら
切り離してしまったのだ。

これまで自分のやってきたことが全て、
醜く、おぞましく思えた。
決して許されるものではなかった。


「私は、あなたの思う"めんどくさいこと"と
向き合い続けたんだよ、あなたの代わりに」

「すごいと思わない?頑張ったと思わない?」

「頑張った、頑張ったからもう、」
自分を肯定するときの話し方こそ、
まさに"私"そのものだった。
"私"の可能性を知った私の精神は、もう限界に近い。

「どっちの私が評価されるべきなのよ」

「好きなことだけやって
現実からただただ目を背けている私と」

「たくさんの苦難と葛藤を乗り越えて
だんだんと大人になっていく私!」

"彼女"は立ち上がって、お構い無しに喋り続ける。
彼女の切れ長でくっきりとした二重の目は、
希望と軽蔑の二色を含んで、
今にも私を貫き倒してしまいそうだ。

あぁ、何故だろう、
その目は私と全く同じはずなのに。

「…もう気づいたよね?」

「今は、"あなた"のほうが必要なくなってるんだよ」

…やめて。もうやめて。

そう叫ぼうとしたのに、声が出ない。
彼女の言っていることは、全部間違っていないのだ。
そう気付くと急に力が抜けて、
私は座ったまま、頭をすぐそこにあった
ソファーに横たえた。

私はどこから間違っていたのだろうか?

✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳クダラナイコト
彼女に面倒なことを押し付けて、自分は好きなこと
しかやって来なかったこと?

自分に厳しい自分を、
自分の外へ追いやってしまったこと?

そうして、もう一人の"私"を作ったこと?

それとも…?


「後悔してる?
私を作ったことが間違いだったって?」

それは、彼女の存在に限ったことではない。

一度少しの後悔を始めたら、
自分の生き方という領域まで辿り着いた。

全て、今まで見ようとしなかった分のツケだ。

後悔へと深く潜り込んでゆくほど、
目頭が熱くなっていく。

気づけば、顔を手で覆っていた。


「…ねぇ、何を今更泣いてるの?」












泣きじゃくる私を、もう一人の"私"は
きょとんとして見つめ続けていた。

「そんなの、自業自得でしかないじゃない?」

ふぇるまーた.・2020-03-13
後編
五線譜と原稿用紙
小説書いてみた
note文庫
意思
逃げるな
向き合え
自業自得
感情
自分自身
戒め
ダブルクォーテーションがちょっとしつこくなったけど許してください
今度解説の投稿しようかな〜
この画像を使いたくて動画を見たら1発で出たやったね




_好きな人がいる日常は素晴らしい。

まるで、毎日空に虹がかかっているかのように。



☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆

『I'm in wonderland』
story 3

※この物語はフィクションで、
実在する人物や団体などとは関係ありません


☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆



そんなことを口に出すと、
「恋に恋をしているのでは」と
反論が来るかもしれないので
この想いは自分の心の中に留めておく。


私は今、授業を受けている真っ只中だ。

しかし、私の目線の先はは明らかに
先生でも黒板でもない。
…斜め前に座っている彼のほうに向いてしまう。

窓際から差し込む光が、彼の白金の髪や長い睫毛、
ピンクがかった瞳を照らす。
その綺麗さに、私は思わず息をのむ。

「そしたら芽在(めあり)、
この問題を前に来て解いてみよう」

突然の先生の言葉に、私は動揺のあまり
のんだ息がそのまま止まって、
二度と吹き返さないかと思った。

今までの説明は華麗に頭の中を通り抜けて
何一つ印象に残っていない。どうしよう。

「え、無理です…」

「とりあえずおいで!」

手招きされるままに、
私は重い足を引きずって黒板の前に来た。

元々黒板にある白い文字列の意味さえ、
理解するのに時間がかかりそうだった。

「あともう1問、これを…白時、解いてみよう」

颯爽と立ち歩いて、私の隣に並んだのは彼だった。

あぁ、運が悪すぎた。
よりによって、どうして私が一番苦手な数学なのだろう。

彼の持つ白いチョークの走る音が、
頭の中にまで響いてくる。

私の頭の中は依然、 真っ白なままだ。
自分の無能さに頭を抱えたくなる。

とりあえず、公式に当てはめればいいんだろう。
そう思い立てた式の計算結果は、
想像以上にキリが悪い。

もともとない自信が、さらに縮んで
ナノレベルまで小さくなった。

隣からは絶えず響くチョークの音。
私は彼のほうをちらりと見た。

ひたすら答えを書き続ける彼。
さらに憧れを抱いた。

「…どうした」

私の視線に気づいたのか、
彼はきょとんとして私を見つめる。

「?!!」

動揺で声が出なかった。
ただ、彼と目を合わせた自分の笑顔が
引きつっているのがわかった。

すると、彼は黒板の私の答えに視線を移した。

しばらくして、
「これ、合ってると思うよ」

綺麗な笑みを浮かべながら言った。

その安心感溢れる一言に加えて、
その言葉が彼からのものというだけでもう
自信が溢れんばかりに湧いてくる。

「ありがとう」

同じように溢れんばかりの笑顔で、
彼にお礼を言って黒板に向きなおり、
再び手を動かした。

答えを書くチョークの音が気持ちよく響いていく。

少しずつ、確実に見えてきた答えまでの過程の中で、
私はまた、彼への好意を膨らませた。




__好きな人がいる日常は素晴らしい。

こんなことがあって、
まだ恋に恋をしているとでも言うのか?




















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芽在 鈴乃(めあり すずの)

高校2年生。一見癒しキャラだが、発言は意外と辛辣。
特技は絵を描くこと。美術部所属。
クラスメイトの白時界兎に絶賛片想い中。

















このシリーズも第3回になるわけだが

一向に私の描写力は伸びない!!笑

この休み中にもっと本を読もうと思いました。はい

ふぇるまーた.・2020-03-05
Wonderland🌹by.fermata
わんだーらんど
五線譜と原稿用紙
小説書いてみた
片想い
好きな人
日常
note文庫



「ねぇ、次移動教室だよ」

声がして振り向くと、
怪訝そうな表情でクラスメイトの
紅苑 妃真李(くおん ひまり)が
僕を見つめていた。


☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆

『I'm in wonderland』
story 2

※この物語はフィクションで、
実在する人物や団体などとは関係ありません


☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆




「もう皆行っちゃったよ?」


真紅色のぱっちりとした目に写る
間抜けな表情の僕が見えた。


見渡すと教室には確かに、
僕と彼女の二人しかいない。
普段一緒に行動する人たちも。


「あ、置いていかれたんだ」


今の状況をやっと理解した。
それと同時に、虚しさが胸を横切った。


「きっと白時が異次元に飛んでいて見えなかったんだよ」

「…僕が?
それ、フォローしているつもり?」


彼女は何も答えず背を向けて歩き出した。
背中まで伸びた真っ直ぐな黒髪が綺麗だ。


化学の教科書と緑色のファイルを抱えて、
彼女の後を追った。

「そういう紅苑さんこそ、1人で何をしていたの」

「異次元に飛んでた」
平然とした口調だった。

「へ?」

「聞いてたでしょ、さっきの夢見と冴凪の話とか」

「聞いてた、」

この言葉だけで良かったものの
それだけでは物足りない気がして、

「でも正直、馬鹿みたいな話だと思う」

口を滑らせるというのはこういうことだろう。
やってしまった、と思った。

どうしてあまり関わりのないクラスメイトに、
ただでさえ女子にそんなことを言ってしまったんだろう。

ほどく場所を間違えた毛糸玉のように、
こんがらがる僕の後悔をほぐしたのは
次に返って来た意外な言葉だった。

「わかる」
「私もそう思ったりするよ」

「…えっ」


「…でもさ、そう思っていたって
結局は皆誰かを必要としてしまうんだよ」

彼女の言っていることは、
全て僕が思っていたことと似ていた。

「…わかる」

今度は僕がその言葉を呟いた。


「面倒だよ、人って」

そう言い放つ彼女の背中は、どこか寂しげだ。
どんな表情をしているのか知りたくて、
顔を覗き込もうとした時、


「だからさ、私と付き合ってくれない?」

彼女は振り返った。その途端に目が合う。
その目は僕を貫きそうなくらい真っ直ぐだった。


「君となら価値観が合いそうなの」
「ううん、君じゃなきゃ駄目…っていうのかな、」

「今、君が私のことを好きじゃなくてもいいんだ」

「これから好きにさせるから」

次々と積み上げられていく彼女の言葉に
僕は圧倒されて、しばらくは何も返せなかった。


しかし、僕達はとても素敵な話をしているのではないか?

表面は平然を装って、愛に飢えている2人。
元々は僕たち、似た者同士なのではないか?

そんな2人が今、関係を結ぼうとしているのだ。

やはりとても素敵だ。
僕は自分で、ロマンチストという以外な自分の一面を
今この瞬間に知った。




その後、僕はゆっくり、頷いた。







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白時 界兎(しらとき かいと)

高校2年生。感情を表に出すのが苦手。
一人で考え込む癖がある。好物は甘い物。
最近の悩みは兄が知らないうちに勝手に
自分の服を借りていること。


紅苑 妃真李(くおん ひまり)

界兎のクラスメイト。
一見圧の強そうなクラスの中心人物に見えるが
そうでもない。実はとっても冷静でマイペース。
最近の悩みはぬいぐるみが好きだと言うと
意外に思われること。

ふぇるまーた.・2019-12-07
Wonderland🌹by.fermata
わんだーらんど
五線譜と原稿用紙
note文庫
愛されたい
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創作
前から作ってあったものをコピペしただけ
勉強はしてます
(ほんとかな)
モル計算は害悪
理系科目ばかりに時間を割きたくないよ

丸い蓋を外してグリス(※1)を指にとり、
継ぎ目のコルク(※1)に塗っていく。

リング(※2)を握り、飛び出ているキー(※3)たちを
避けて掴み、ゆっくりとパーツ(※4)を繋いでいった。


「これでいいのかな…」


吹奏楽部に入部して2週間。やっと楽器が決まり、この通り組み立て方も大分覚えてきたところだ。音はやっと出るくらいだけど。


突然、ガラリとドアの開く音がしたので見ると、一人の先輩が教室に入って来た。

羽足先輩だ。


「こんにちは!」


あまりの嬉しさに明るく挨拶しすぎたかもしれない。
いやでも、吹奏楽部では明るい挨拶と返事が大切と教わったばかりなのでたぶん大丈夫。


そう、私は羽足先輩に恋をしている。小学生の時、音楽室に2人きりでピアノを弾いたあの日以来ずっと。

先輩が小学校を卒業してからは何事もなく時間は流れていって、あと少しの時間があったら私は恋心を忘れていたかもしれない。

そんな機会に吹奏楽部に入って、まさか先輩もここに、そしてクラリネットパートにいるなんて夢にも思っていなかった。


「…こんにちは」


私の斜め後ろの床に置いたカバンを探りながら、先輩は挨拶を返す。その無愛想な低い声にも胸が高鳴る。

先輩が楽譜などを取り出し終えると突然、私が机の上に置いた奥のクラリネットを凝視し出した。


「…置き方違う」


「えっ」

確認しようと振り向こうとしたその時、体がベル(※4)にぶつかり、クラリネットは転がっていった!


「危ない!!!」

咄嗟に先輩が走って滑り込む。見事にベルと樽(※4)の部分を宙で掴んだ。
そして、ありとあらゆるキーを押して壊れていないか確認をしている。

「大丈夫だ、よかった…」


胸がドキリと鳴った。とても優しい声だった。楽器に向けたその眼差しは、誰を見るよりも温かい気がした。


初めて出会った頃から先輩は、どこか憂いのある雰囲気を漂わせていた。その雰囲気に私は惹かれたんだっけ。


正式にパートが決まって初めて対面した時、先輩は何も言わず、まるで新入部員の私なんて興味がないような態度だった。きっと先輩は会えなかった間に何かがあった。私のことは忘れてしまってるんじゃないかと思うくらい冷たくなっていた。


それをぼんやりと思い出していた私を先輩が見上げる。


「曲がったキーを直すのにいくらかかると思っている?」


「えっ、」

いつものようなまた無愛想で冷たい声だ。頭が真っ白になる。

やっぱり相当かかるの?1万以上とか?


「箇所や個数によるとは思うがバカにならないからな、しかも部費からだぞ…」


そう言って額に手を当てる。あの頃よりもさらに骨ばって、どこか繊細なすらりとした長い指に見惚れそうになった。


「それにそうやって転げ落ちるのが一番ダメージを受けるキーが多いんだって…勘弁してくれよ」


先輩の苦い表情が私のほうに向き、初めて気付いた。
私はとんでもないことをやらかしてしまった。ひとりで楽器を出すべきじゃなかったんだ。

なぜかこんな時に頭の中で「クラリネットをこわしちゃった」が流れてきた。『どーしよ♪どーしよ♪』なんて言っている場合じゃないよ。しんどい。


「…すみませんでした」

頭を下げる。声が震えているのがわかった。

先輩はしばらく何も言わなかった。


「…でも俺が早く来なかったのが悪いよな、こちらこそごめん、強く言いすぎた」


少し驚いた。先輩まで謝ると思っていなかった。


「他の先輩方は…」

「金山は風邪で、花本は委員会だよ」
「俺一人で教えるなんてしんどいし正直帰りたかったんだけど、ここまで来たらちゃんと教えるしかないよな」

「座って」


そもそもこんな端っこに置くものじゃない、と言いながらあらためて楽器を置いて、傍にあった椅子を引いた。

失礼します、とまるで面接みたいにその椅子にゆっくりと腰を下ろす。

先輩も通路を挟んだ反対側の席に座った。


「突然だけど、クラリネットを選んだ理由を聞きたい」

本当に面接だった。


「温かい音色がいいなぁと思って」


「それだけ?」
「他にあれば言って、くだらん理由でも別に怒らない」

「…コンパクトで持ち運びが楽そうなので」

これも本当。非力な私が、重くてでかい自分の楽器を4階の音楽室から様々な場所へ運ぶと考えただけでも恐ろしかった。

クラリネットの先輩たちがパート教室へ移動する時に身につけていた、ショルダーバッグのような楽器ケースに憧れたのもここだけの話。


「…ははは」


先輩の不機嫌そうだった口元がゆるりと綻んだ。

ぱあっとした気持ちで胸が満たされる。


「その分片付けは大変だけど」

それはすぐに苦笑いに変わった。


「片付けのせいで下校時間はギリギリ、でも水分を残すと楽器が割れる原因になる、下校時間に遅れたら部停、理不尽だよな」


「…はぁ」

つられて苦笑いをしながらこくりと頷いた。


「そのリード(※5)だってそう」

そう言って、机に置かれた楽器の先端に付いている木の棒を指さした。やっぱり指が白くて綺麗だった。

「個体差がすごいから一箱によく吹けるやつが1本入っていたらいいほう」

「俺が吹いているバスクラ(※6)は一箱につきベークラの半分しか入っていないからもっと大変、出費もかさむ、ははっ」


「…きびしいですね」

花本先輩たちから「良いリードないんだけど!」という言葉を耳にしたことはあったけど、そこまでとは。


「そして忘れてはいけないのはリードミス」

「少し息の入れ方を間違うだけで、素人が聴いても『明らかにそれ違うだろ』って思うくらい目立った高い音が鳴る」

「リードミスをする度に周りの視線は痛い、特に顧問」


「えぇ……」


「そんな楽器なんだけどどうする?やめる?」

悪戯そうにふっと笑う先輩。そんな表情もするんだ。
今日だけで、知らなかった羽足先輩の一面、いや何面も知ることができて嬉しかった。


「いや、ここまで来たらやめません」

まっすぐと先輩を見つめた。これは他でもない、本心だ。それに、せっかくまた先輩に会えたのにやめるなんて。


「…だよな」

「やめられたら困る、一年はあんたしかいないから」


クラリネットパートに三年生はいない。さらに一年生も私しかいない。ベークラの先輩は二人だ。どちらの先輩もしっかりしていて、始めは三年生と見分けかつかなかった。


「だからこそ知ってほしかったんだよ」

「そういう弱点も受け入れた上で、クラリネットを好きになってほしいからさ」


そう言ってまっすぐ私を見つめ返した。

黒曜石のように真っ黒な瞳に、私の心もろとも吸い込まれそうになった。


先輩の心の奥底では楽器、そして音楽への愛が確かに燃えている。それがはっきりとわかった。


あの頃、私にピアノの練習権を譲ってくれた時に放った「旅立ちの日になんて簡単すぎてつまんねぇよ」
という言葉も、きっと愛があったから出た言葉だったんだ。

そうでなければ、卒業式本番の先輩のピアノが、会場全体を過ぎ去った日々の懐かしさや切なさ、そしてこれから来る春の温かさときらめきでふんわりと包み込むこともなかっただろう。

あれは、ただの伴奏ではなかった。


「…がんばります!」


先輩が私のことを忘れていたとしても構わない。この人と一緒に音楽ができる。この最高の機会を逃してはいけない思った。そのためならどんなに苦しいことだって乗り越えてやる。


先輩は私を見て、ああ、と頷いた。

「俺たちも指導を頑張らないとって話だな、間違ったことは教えられない」

「あ、こんなことを言ったって二人に知られたら、
新入生を脅すんじゃねぇって怒られそう」

肩をすくめて笑う先輩も愛おしかった。









※1グリス
楽器の管を繋げるための潤滑剤。
管の繋ぎ目のコルクに塗る。
フェイスクリームのような丸い容器に入っているタイプとリップクリームのようなタイプがある。
前者のほうが少し容量が多くお得。
(ソース:楽器屋さん)


※2リング(リング・キー)
音孔(楽器に空いている、音を出すための穴)
の周りにある銀色の輪。
出す音の高さを変えるのに重要。


※3キー
音孔をふさぐ銀色の金属。
出す音の高さを変えるのに重要。


※4パーツ
上から、マウスピース、樽、上管、下管、ベル。

マウスピース→息を入れる部分。

樽→別名「バレル」。
名前通り樽のような形になっている。
主にこの部分の抜き差し具合で、
音の微妙な高さを調整する。
(他の繋ぎ目も抜き差しする場合もある。)

上管、下管→音孔とキーはここにある。

ベル→音の出口。
円錐型をしていて、下に穴が空いている。
よくここから水滴が出る。
(音孔から出るほうが厄介。)


※5リード
マウスピースに装着する薄い木の棒。
息を入れることによってこれが振動し、音が出る。
音質の良し悪しは主にこれで決まる。奏者の命。
扱い方によってはすぐに割れて使えなくなる。
いわゆる消耗品。1枚およそ300~400円。
バスクラはその倍。


※6バスクラ
バスクラリネットの略。
運指は普通のクラリネット(ベークラ)と同じで、
1オクターブ低く響く。しかし楽譜はト音記号。
管体はベークラの約2倍の長さ。ベルが金属。



やっべ!!!改めて説明するのすごい難しい!!経験者なのに!!!主観が込み込み()



初心忘るべからずということでこのお話を書きました

実はこの設定は、私が小学生の頃から
すでに出来上がっていたものです

高3の自粛期間中になって改めて見返して、
これもっと深く掘り出せる話じゃない?!(深夜テンション)
と思い書いてみました、
男の子も女の子もちゃんと名前があります


これは大ブランク!小説って難しすぎる!!!!

もともと上手くないって?そうでしたすみません、
これから上手くなるからゆるして(´>ω∂`)

なかなか抜け出せない英文和訳感


中学生にしては言ってることや心情に
なんか若々しさが無くない…?そんなことない…?


私が中学生だった当時は
きっと何も思わないんだろうけど、
こうやってだんだんと歳を重ねて
そこから離れていくと、
当時どんなことを思っていたっけ???って
わからなくなりますね、
思い出した全てが
色あせたフィルター越しみたいになっています


私もクラリネットを始めた当時は
よく置き方のことで先輩に注意されていました…
キーが複雑でどっちが下かわからなくなるもんね、
曲げなくてよかったね()

しかし自分の楽器とスタンドを買ってから、
一度ぶっ倒してキーを曲げたことがあります、
お父さんお母さんごめんなさい


「クラリネットをこわしちゃった」は
楽器が壊れているんじゃなくて、
練習をしていなくて鳴らなくなったという説が
あったと思います、練習って大事ですね

私も今吹いたらその状態かもしれない、どーしよ!怖くて吹けない!でも吹きたい!オーパッキャマラド!!まず調整に出すべきだ!!
早くバイトをして自分のお金で自分のことを
始末できるようになりたい、まず卒業しなきゃ、
でもここだけの話、接客業はこわい

でも人生は経験だから
知らずに避けたら駄目なのかなぁ、


ちなみに中学時代の男子部員は
当たりのリードよりも希少すぎました、
部内恋愛なんてありえないです

(高校では多かったのでありえました、しかし
厄介すぎて「恋は罪悪ですね…」って
某高二で習う小説みたいに思う時期もありました
懐かしい)


こんな恋愛してみたかったなぁ

私3「何言ってるの、あなたまだ若いでしょこれからよ!!!」(別垢ネタ)

だといいけどねぇ



本編がもともと長いのに、
こんなに駄弁ってしまってすみません、
最後まで読んでくださりありがとうございました!

ふぇるまーた.・2021-03-07
五線譜と原稿用紙
小説
長編小説
吹奏楽
吹奏楽部
片想い
青春
先輩
クラリネット
音楽


「また遅れました…ごめんなさい」


何食わぬ笑顔で君は本と貸出カードを渡して来たが、返却遅れはこれで3回目だ。しかも連続で。

一体どういうつもりなのか。


「…なんでいつも遅れるの?
これが初めてじゃないだろ?」


流石に、いつまでも許してあげられる訳がない。


「…すみません」


「…いい加減、返却期限くらい守れよ」


自分でも吃驚するくらい、
吐き捨てるように呟いていた。


「…はい」


君がいつも浮かべるへらへらとした笑顔が、

危機感を覚えたのか、強ばっていた。





それから1週間以上_貸出期限が確実に切れた時、

君はまた、のこのこと返却に来た。


自分があの時吐き捨てた言葉は
無駄であったと悟ると、いっそう馬鹿らしく思えた。


君の姿を捉えた僕の視界は、
再び読みかけの本へと落ちた。


簡単に君の言うことを聞くまいと
謎のプライドが働いたのだ。



「あの、すみません!」

君の声が、本のページの向こう側から
何度も聞こえてきたが、気づかないふりをした。


しばらくして、また君の「すみません!」が飛んでくる。
が、その声は今まで聞いたことのない
潤みを含んでいた。


はっと顔を上げる。


「風邪で寝込んでしまったんです…今回はちゃんと返そうと思ったんですけど……信じてください…」

君の色素の薄い目から、
綺麗な透明の雫がぽろぽろと落ちていく。

君の持っていた貸出カードにまで、それは及んでいた。


『魔法使いの日常』
『絶品_毒草料理_』
『超魔法入門』


全部全部、そこに書いてあるのは、魔法に関係する本ばかりなのだ。


君は何故か、いつも、僕の担当しない日に
本を借りて、僕の担当する日に本を返しに来る。


この行為は、僕への当てつけなのか。



_僕が魔法使いで、君の兄であるということを
君はとっくに知っているのか。


一年前、君が入学して間もなく、
そのことを知ってしまった僕は
自分の運命をひどく恨んだ。


物心ついた頃からそれを知っていたら。

あるいは、最初から君が妹として
当たり前のように側にいたら。

そもそも、魔力なんか持たずに、
君と血縁上でも、関係上でも
他人のままでいられたら。


君の存在を意識することなんてなかったのに。


_僕が君に恋をすることもなかったのに。



「1週間じゃ読み終えられなくて、」


涙を食指で拭いながら、君は笑った。






「そこまで熱心に、
魔界のことを知る必要なんてなかったのに」


君に聞こえないくらい、小さな声で呟いた。

ふぇるまーた.・2020-04-28
五線譜と原稿用紙
小説
note文庫
日常
叶わない恋
運命
葛藤
図書室
魔法
日常
ファンタジー
いい具合に混ざってる
書けたぜ→
泡沫を捕まえる
1日クオなんです許して
ところどころ辻褄合ってないだめだ
いつか書き直そう



「可愛くない?」


目の前に、突然小さなうさぎのぬいぐるみが現れた。


🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴

✳✳✳✳✳✳『I'm in wonderland』
✳✳✳✳✳✳✳✳story 4

🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴・🂴



先週の移動教室中の突拍子もない彼女の告白、自分でも予想外な僕の返事の後、LIMEを交換してからの、まずはデートらしく映画を観に行こうよという彼女の一言。これが今に至るまでの一連の流れである。


「もう買ったの?」


突きつけられたそれは、これから観る映画に出てくるらしいものだった。詳しくは分からないけど。まず観てないし。


「一目惚れしたんだよね」


まるで宝石を見るみたいに輝いた紅苑さんの目が、うさぎのまん丸な目と重なる。


確かによくできているぬいぐるみだった。お洒落なスーツをきっちりと纏っているが、それでもなお、うさぎであるというだけで生じる可愛らしさというものが隠せていない。


そうしてスクリーンのある部屋へ向かって、チケットに書いてある席に腰を下ろす。


「ちょっとチケットを出してくれない?」


「え?」


チケットを取り出すと、彼女もそれを取り出して自分のチケットと少し重ねて見せた。


スマホを持った彼女のもう一方の手が伸びてくる、どうやら写真を撮ったらしかった。


記念、という 一単語の声がどこか楽しげだったことに心が安らぐ。



*



上映が終わって、モールの中を歩いていると、ふわりとバニラのような甘い香りが漂ってくる。


辺りを見渡すと、数メートル先に、自分にはハードルが高そうなお洒落なカフェがあった。


ドライフラワーの花束が吊り下げられたその入り口をずっと彼女は見つめている。



「…甘いものは大丈夫?」


「大丈夫、むしろ好きだけどここに入るの?」


「もちろん」


「僕にはハードルが高すぎる」


「大丈夫、私がついてる」


「頼もしいな」



テーブルの前に置かれたパンケーキの上には生クリームが絞られて、さらに綺麗に小さくカットされたいちごが散らされていていた。


彼女はいちごチョコのソースが入った小さな容器が付いたパンケーキを選んだ。


ソースをかけながら動画も写真も撮っているので、「みんな愛に飢えている!」なんて僕と同じように擦れていた彼女も普通の女子高生なのだなと思った。


「その動画とか写真、どうするの?」


「ただの記念よ?あ、Instacramにも上げちゃおうかな、上げていい?」


「…ご自由に」



頷いた後に突然違和感を覚える。幸せは結局のところ、誰かに自慢したくなるような自分本位のものなのか。


そもそも、彼女は自分といて本当に幸せなのだろうか?もし幸せだとしても、それは僕といるからではなく、「彼氏」と映画を観てパンケーキを食べているからではないか?


いつかこう思うことはわかっていた、それを承知の上で彼女と付き合っているつもりだ。


だけど今はまだ表面上の付き合いな気がしたし、目の前のパンケーキだって可愛いを具現化して、君たちこれが好きなんでしょ?とでも言いたげなビジュアルをしている。今からこれを食らうのか?滑稽でしかない。



「そういえばこれ、あげる」


考え込んでいると突然、彼女は買ったマスコットをまた僕の前に突きつけた。


「え、僕が持っていていいの?」


彼女は頷くだけで、それ以上は何も言わない。


「…妃真李が一目惚れして買ったものなのに」


僕は付け加えるように言った、ただ彼女の名前を呼ぶがために。


妃真李。


彼女が僕を下の名前で呼ぶように、僕も彼女を下の名前で呼ぶことになった。これも「そっちのほうが恋人らしいよ」という妃真李の提案である。


今まで女子と親密な関係になかった僕は、下の名前を呼び捨てにしたことなど無かった。


いざ呼んでみるとなんだかこそばゆく、僕の言葉からそこだけが切り取られて、宙に浮かんでいる感覚が癖になった。もう何度呼んだっていい。


「いいの、私からのプレゼントだと思って」


「…あとはさ、実はこれ、界兎に似てると思ったんだよね」


「え?」


「私ね、正直あんたが付き合うのをOKしたとき驚いたの」


意外な発言だった。


「そっちが言ってきたのに?」


「2回目に訊いたときも引かれて終わりだと思った、馬鹿みたいなこと言うなよって」


「それはちょっと思ったけど、だからこそ面白い気がして」


「ほら、そういうところ」


確かに。妃真李の口元が綻んだのを見て、つられて頬が緩んでしまう。



「…とにかく、いきなりおそろいはキツいと思うから、持ってて」


うさぎの赤くまん丸い目が、ぜひお傍にと訴えかけている気がした。


長い耳に貫かれ破れて、本来の機能を失ってしまっている小さなシルクハットを見て愛着が湧く。


「わかった」


手のひらに載せられたそれを自分の皿の傍に置く。


「ちなみに僕は妃真李に似ていると思った」


映画の中で、このうさぎは重要な存在だった。


うさぎが横切ると、それを見た人を残した10分間だけ時間が止まる。その時間でこれから起こるハプニングを防ぐという話。


気まぐれで神出鬼没、その姿が自然と君に重なっていた。


「相思相愛ってことかな」


君が現れて、惰性で流れていた僕の時間は止まった。


それが君にとっても同じだったのなら本当に相思相愛な気がして、照れくさくなってしまったのを悟られないように、パンケーキを切り分けて口へと運んだ。


パンケーキはまるで炭酸みたいに、しゅわしゅわと口の中で溶けていく。さっき考えていたことは何だっただろうか、もう何でもいいや。


「…おいしい」


バターとメープルシロップの香ばしい香りを口の中に広げて、貰ったマスコットを眺める。


これをどこに付けようか、もしくは飾ろうか、なんて幸せな悩みを抱えた。



_The First And Last Youth
❉❉❉❉Of Rabbit And Queen .続





紅苑 妃真李(くおん ひまり)

高校2年生、ブルベ冬。宿題は計画的に終わらせるタイプ。



ふぇるまーた.・2022-10-21
wonderland🥀by.fermata
五線譜と原稿用紙
小説
心に浮かぶのは
わんだーらんど

生き生きとしたその笑顔に、その無邪気な仕草ひとつひとつに心臓が跳ねたとしても、彼には好きな人がいる。

目の前に突きつけられた、あまりにも甘くて、やわらかな諦め。溶けたマシュマロが舌に纏わりつく。それでいて、彼の心の中に、まだ私の踏み込む場所があったらいいのになんて淡い期待が粘り強く絡む。誰も知らない私の想いは、まるで夏の暑さのせいだと言うように、湿った空気に滲んで、蒸発していく。蝉がやけに煩かった。

ふぇるまーた.・2022-08-18
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