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#君と僕らの色違い

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全1作品・

「同性愛者ってだけで、差別するなんて酷い…

先輩だってそう思いません?」 


後輩である啓太は同性愛者ではないが

同性愛者に全く理解がない人物ではなかった。


「そう、だな…」

歯切れ悪く言葉を返す人物の名は彼方と言う。

周りにカミングアウトしていないが、実は彼は

自分と同じ男性しか(恋愛的な意味で)愛せない

言わゆる同性愛者であった。

が故に「同性愛者って "だけ゛」

という言葉に、内心傷付いていた。

悪意があって言った訳では無いと分かっている。

だからこそ余計に辛かった。


何故か?

それは同じタイプの人間にしか
分からない事なのかもしれないが、
散々苦労して、傷付いてもきたからだ。

気持ち悪いと言われる事もあれば、
異性愛者の知り合い(同性)から
自分を狙わないでくれよ等と

何故同性というだけで自分が狙われる等と思うのか

彼方側からしたらこちらにも選ぶ権利はある訳で
自意識過剰も大概にしてくれよと思う事もあった。

同性しか愛せない自分を責めて苦しんだりもした

何故自分は " 普通 " ではないのか。何故と。

女性を愛する努力もしてみたが、やはり無理だった。



そんな彼方にとって「だけ」という言葉は

自分の辛い過去を踏みにじられたような気がした。

また、そんな人には言えない沢山の辛さや苦労を

"だけ"という一言で纏められてしまうことに

内心悲しくなった。







近年LGBTQへの理解は広がってきているが

まだまだ受け入れられることが少ない時代だ。

彼方は、そんな時代の中で、やはり普通でない自分は

社会にとって異物でしかない存在なのだと

自己を否定される度に

強い孤独感を胸に抱く様になった。


でも嘆いた所で、現状は、社会は、何も変わらない。

きっとこのまま何一つ変わらない

息苦しい日々を過ごすのだろう

と思っていた。




そんなある日の事、


大学で知り合い、仲良くなった先輩が

全性愛者だという事を知る。

彼女は自分が全性愛者だと言うことを

周りに隠していない様だった。

いつ自己を否定されるか分からない中で

常に堂々としていられる彼女が

彼方は不思議に思えてならなかった。



(⬇)






「先輩は、全性愛者なんですか」


おそるおそる言葉を発した彼方。


周りには誰もいない。


彼方と彼女の二人きり。



「そうだけど、それがどうかしたの?」


先輩(彼女)は、臆することなく堂々と答えた。


どうしてそんな事を聞くのかと言わんばかりに

不思議そうに彼方の方を見る。



「先輩は、怖くないんですか」


質問に質問で返してしまう彼方。


なにが とは 、 彼女(先輩)は、聞かなかった。


「怖くないと言えばそれは嘘になるかな」

うーんと少し考える素振りをして

(彼女)先輩は、答える。



全性愛者である彼女もまた彼方と同じく

過去に、人には言えない辛い思い、苦しい思いを

沢山してきた。傷付いた事は数知れない。

心無い言葉を投げかけられる事もきっとあるだろう。

全性愛者という事を周りに公表してしまっている以上は


でも彼女(先輩)は、それでもいいと思っていた。



「彼方くんはさ、人が人を好きになるのは

いけないことだと思う?」


「いけないことだとは思いませんけど…」


何故そんな事を聞くのか。

質問の意図が理解できず

不思議に思いながらも

彼方は彼女(先輩)の目を見て答える。



「だよね」


よかったと言わんばかりに彼女(先輩)は微笑む。



「人が人を好きになるのは、悪い事ではないし

それをとよかく言う権利なんて

誰にもないと思うの。


だからね、恋愛的な意味においても

多種様々ではあるけど、仮の話

男の人が自分と同じ男の人しか愛せないとしても

逆に女の人が自分と同じ女の人しか愛せないとしても

それは何一つ、悪い事ではないんだよ。

性別がどうとか関係ない。


だから私は周りに何を言われても、

堂々としていられるの。

何が悪いんだって」


強い意志を感じる瞳で彼女(先輩)は

彼方を見ながら真剣に言葉を発する。


彼方はその言葉に胸を打たれていた。



「彼方くんが何でこういった話を振ってきたのかは
あえて聞かないでおくけど、もしそういった事で
悩んで、苦しんでいるのだとしたら、自分自身を
責める必要なんて何処にもないから、

周りに否定されたとしても、自分で自分の事を
否定する様な事だけは、どうかしないでほしいな」


胸の前で両手をぎゅっと握り締め、

今にも泣きだしそうに

彼女(先輩)が笑うものだから

彼方は何とも言えない気持ちになった。

それと同時に初めて理解者を得た様で、嬉しかった。



「ありがとうございます…」



何に対しての御礼なのか、彼女(先輩)は

全て見透かしているかのように聞かない。


実際彼女は、彼方が異性愛者ではないのか

と、どこかで薄々思っていたから。




「あ!後、気持ち悪いだとかキモイだとか

心無い言葉を言う人に対して、私はね、

何て可哀想な人なんだろうか、って

逆に哀れむようにしてるの。

他人の気持ちを踏みにじる行為は

人としてやってはいけない事だと

思ってるし?」


ふふっと何やら楽しそうに笑う彼女(先輩)

理由は過去の事を思い出して笑っていたのだ


今は強くなった彼女だが、

彼女も昔は、心無い言葉を言われる度に

深く傷付いていた過去がある。

何度も、挫折、絶望、言葉にできない事を

沢山経験して今に至る。


もし自分と似たように

好きになる相手が周りと違う事で

傷付いている人がいるのなら

彼女は少しでもいいから

助けたいと思っていた。


かと言って、今回の事で、後輩である彼方を

助ける事ができたかは、わからない。


ただ、少しでも心を軽くできたとするなら

彼女(先輩)は、ただそれだけで嬉しかった






目の前で俯き、泣き出した後輩(彼方)を

彼女は慌てて、抱き締める。


泣いている理由については、何も聞かない。

よしよしと落ち着かせる為に背中を摩るだけ




(なんで、なんでこうも)


彼方の思いはぐちゃぐちゃに混ざりあって

今まで堪えたものが涙となり溢れ出て

止まらなかった。


先輩の前で泣くなんて恥ずかしい。

そんな事考える余裕すらない程に




彼方は先輩が掛けてくれた言葉一つ一つを

胸に留めた。決して忘れる事のないように


















――――――――――――




彼女(先輩)は、彼方が泣き止むまで

ただひたすら背中を摩り続けていた。



泣くだけ泣いてスッキリした彼方が

我に返り顔が真っ赤に染まるのは

これまた別のお話___



「終」









あとがき



長いのに最後まで読んでくださり、

有難うございました。

黎明(小説垢)・2023-05-11
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