『本当の強さとは』
泣きたくても泣けない
そんな僕を
〝強い〟と言う人がいる
そんなレッテルを貼られ
僕は今日も仮面を外せず
1日が終わる時まで息をする
僕は基本的に人を『頼らない』
人を頼ると迷惑な気がして
相手に負担をかけると思って
余計な悩み事を
増やしてしまうと思ったから
でもそれは
所詮。綺麗事でしかなくて
本当は自分の〝弱さ〟を
他人に知られたくなかっただけ
自分は《強い》から大丈夫だと
周りに思わせたかっただけ
最初は小さい悩み事から始まった
「これくらいなら1人で大丈夫」
1人で解決すると
不思議な快感があったんだ
[1人で生きていけるかもしれない]
そんな思いが僕を包み込んだ
次第に全てを1人で
抱え込むようになっていった
そしたら人を頼ることも
誰かに相談することも〝全て〟
《怖くなっていった》
1人で抱え込んで悩んで
だけど改善策は見つからなくて
そんな中。悩みの種は
着実に増えていく
[1人じゃどうもできない]
そう思っても
誰かを頼ることはしなかった
1人で悩み込むようになってから
前まで泣いていた時に
〝泣けなくなった〟
次第に泣くことが少なくなり
泣きたくても泣けなくなり
辛くても泣けなくなった
どんなに思いが複雑でも
ストレスが溜まってたとしても
《泣けなくなった》
あまり泣かない僕に対して
周りの人は
《あの子は強いな》
そんなイメージを
抱くようになっていった
そんな周りの気持ちに
僕は気づいていた
幸い。僕は
勘が鈍い訳ではない
察してよかったことや
悪かったこと
両方あったからこそ
自分の勘を信じられるようになった
周りはまた
〝そんな僕〟に《強い》と思った
喜怒哀楽が表現できなくなった
楽しいと思っていたことに
関心すらなくなっていった
僕は〈仮面〉を付けた
その仮面は付けたら
外せなくなって
ずっと付けたまんま
僕はずっと〈笑顔〉になった
自分の気持ちがわからないから
喜怒哀楽がわからないから
どう表現していいのかすらも
わからなくなっていったから
〈笑顔〉で被ったお面は
自分を〝強い〟と
思わせる〈武器〉になった
でも同時に自分を傷つける
〈凶器〉にもなった
その〈凶器〉は
僕に致命傷を与えたんだ
人を信用出来なくなった僕に。
喜怒哀楽がわからない僕に。
人を頼ることをしない僕に。
この先も消えることのない
〈永久に残る傷〉となった
そんな僕に〝周り〟は
いっさい気づかない
誰にも相談できなくなったから
人を頼ることが怖くなり
信用すらもできなくなった
そんな自分が嫌で仕方なくて
こんな汚い人間が
生きてていいのかと思うようになった
僕と話している人達に話すと
必ず止められるから
だから
いつも通り誰にも言わずに
逝く準備を着実に進めた
まずは部屋を全て綺麗にして
遺書も残して
僕が逝っても大丈夫なようにして
【僕は海に向かったんだ】
右手に持ったスマホに明かりをつけ
暗闇の中。海にいるのは
僕1人だけだとしっかり確認した
まずは靴を脱いだ
次に靴下も脱いだ
フードを外し
マスクも取って
メガネも外した
ただ1つ未練があったんだ
[最期に声が聴きたい]
[僕を変えてくれた君の声が]
ダメだとわかっていても
君に電話をかけてしまったんだ
『どうしたん』
「うーん」
『ん?』
「みんながさ。僕ならなんでも」
『うん』
「出来ると思ってるんよ」
『うん』
「したいことが出来ると思ってる」
『うん。君は強いもんね』
「ん。」
『本当は無理してるんでしょ』
「出来ないこと。僕だってある」
『でしょーね』
「苦しいのにね。本当は」
『なんで涙声なのさ』
「るるるー」
『るるるってなに』
「なんでもなーい」
「ありがとう」
『無理すんな。いつでも頼れ』
「うん!」
「ねぇ。もう遅いよ」
最期にそう呟いて電話を切った
君に伝わったかな
「うみ出しんで苦る」
こんな僕と仲良くしてくれて
ありがとう。嬉しかった
僕はスマホの電源を切った
「こんな僕を」
「愛してくれて」
《ありがとう》
暗闇の中。
僕の頬を〝なにか〟が濡らした
生ぬるい〝なにか〟
「さようなら」
そう呟いた僕は
1歩ずつ海の中に姿を消した
そんな僕は何故か
[泣いていた]