はじめる

#完敗

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全10作品・

【Real Me 性別のない人~第十四話~千祐目線(Ⅱ)失恋】


走り出す重たい足。


くしゅっ、とくしゃみが出ると


寒さが身体を駆け抜けた。



「うー、さみ。やべー…俺も完璧風邪だわ」



独白を闇に投げうちながら


コウコを探す。



公園あたりにいるはずだって


曖昧な場所しか聞いてはいない。



だけど、俺には自信があった。



コウコの居場所に関しては


俺は兄貴より鼻が利く。




あれは…コウコが


ホルモン治療を始める前だった。



その先、長く


飲み続けなきゃならないホルモン薬。



身体への負担を心配した兄貴が


はじめてコウコの想いに反対して


大喧嘩になった。



その時、裸足のまま


家を飛び出したコウコを


血相変えて探し回った兄貴より先に


俺が……見つけた。



声を高くする、


声帯の手術をした時もそうだ。



兄貴は身体にメスを入れることを


酷く心配して猛反対した。


その時も頑として


コウコは自分を曲げなかった。


だからぶつかり合って、喧嘩して


結局、尻拭いは俺だ。



俺がいつも、コウコを見つける。



今回だって、


きっと……



「あ」


海浜公園の桟橋


足を投げ出した、人影が見えた。



見紛うわけもない、そのフォルムは


間違いなく、コウコだった。




「…たくっ、世話がやける」



俺がゆっくりとコウコに近づくと


ぎし、ぎし、と桟橋は揺れる。


やがて、コウコは


泣き顔で俺を見上げた。



「千……祐」


「お前、何してんの」


「また、喧嘩しちゃった…」


コウコの目から溢れる涙。


本当は、抱き締めてやりたい。



だけど、


コウコが求めている腕は


俺のそれじゃないから。



俺は、声をかけるに留めた。




「女が独りでこんなとこいると危ねぇぞ」


「……私は、どんなに作ったってまだ男だし。戸籍も身体も中途半端。こんな奴、誰が相手にするって言うの?」


「女の体して女の見てくれした奴が何言ってんの、傍から見たらお前…女そのもんだぞ」


「……違うもん」



「ったく、頑固者」



俺はコウコの隣に陣取って


彼女の頭を撫でた。



「こういうの…しなくて、いい」


「こういう時くらい、させろよ」


「私には……紗季しかいないよ?」


「わかってるっての」



二年前、俺は玉砕したくて


コウコに想いを


打ち明けようと


思ったことがあった。



俺、と伝えた瞬間


妙な空気を読んだのか


コウコが俺を止めた。



コウコはその時も遠回しに


紗季しか見えないんだと


そう、何度も念を押したのだ。



わかってはいたが


その時、まざまざと


付け入る隙なんてないんだと


知らしめられた。



思えばそれは


コウコから抜け出せる、


いい機会だったのに


俺は未だに彼女に縛られてる。




柔らかい髪の毛。


香る匂いは


兄貴が好きな銘柄の香水…。


心臓がツンと傷んだ。




「なぁ、コウコ」


「ん?」


「お前はさ」


「うん」


「手術して本物の女になりてえんだろ」


「……それが自然な形なの」


「だったら、すりゃいい」


「え…?」


「兄貴はきっとわかってくれる。そもそも兄貴が気にしてんのは手術そのものじゃなくて、お前の身体のことだよ」


「……千祐」


「いつだってそうだったろ?」


俺は、コウコの顔を覗き込んで


精一杯の笑顔で笑った。



「……うん、そう、だった」


コウコはまた泣いた。


息をひそめるように泣いた。



しゃくりあげるその音だけが


夜の闇に溶けていく。



わざと男友達みたいに


がさつに肩を抱いて


コウコに触れる。


冷たくなった柔らかい身体を


少しでも温もりで包めるように。




頼りなく肩を震わせて


こんなに泣きじゃくって


男と喧嘩したからって


こんなにぼろぼろんなって



これの何処が男だ。



コウコは


正真正銘の女だ。


もう、アレが


ついてること自体がおかしい。



くそ、キスしてえ。


今なら、いけるんじゃねえか



そんな浅はかな考えに


囚われそうになった、その時だ。




「コウコ……っ!」



兄貴が桟橋の付け根に現れた。


俺は、慌てて


コウコの肩を抱いていた、


その腕を放す。




「紗季……」



ゲホゲホと咳き込む兄貴に


コウコは俺をすり抜けて


吸い寄せられるように


駆け出した。




その瞬間、絶望にも似た、


亡失の淵に落ちていく。





こんなもんだよな…。





コウコは兄貴に


躊躇いなく触れ


「大丈夫…?」


その言葉と共に


優しく、兄貴を抱え込む。



きっと、喧嘩したことなんて


もう、どうでもいいんだろう。



ただ、互いを愛しく想う二人だ。



どちらかが苦しそうなら


どちらかが


寄り添うように出来ている。



「お前の気持ち……考えてやれなくてごめん…」


「ううん…ううん、いいの、私こそごめん」


「コウコ……俺はお前の事、」


「うん、わかってる、私もだよ」





街の灯がやけに目に痛い。


俺はただ呆然と


兄貴とコウコの


美しい愛の光景を眺めてた。



何が悲しくて、こんな景色


見なきゃなんないんだろう。



「さーてと」



俺はわざと陽気に


声をあげて立ち上がり


二人の歩みの先へと周り


タクシーを拾った。




「おい、コウコ、こっち!」


手を上げて合図すると


兄貴を抱えるように


コウコはこちらへ


ゆっくりと歩いてきた。



そして、未だ涙に潤む目で


俺に甘く残酷な言葉を囁く。




「千祐、本当に……ありがとう。千祐のおかげでまた大切なもの、無くさずにすむ……」



くそ



くそ


人知れず、歯を食いしばり



コウコに笑顔を返した俺は


せめてと兄貴へ悪態をついた。



「かっこわりぃな兄貴よ」


「う、うるせーよ……」


「人に物頼んでおいて、そりゃーねえよなあ?」


兄貴の熱っぽい目が


俺に向けられた。



「千祐、さんきゅ…恩に着る」



「はいはい」


興味なさげに頷いて


二人をタクシーに押し込むと


俺は、手を振った。



タクシーの後ろ姿。


リアウィンドウの中で


コウコが俺を振り向く。





眉を下げて


あ、り、が、と、う


口を懸命に動かせて


小さく手を振った。




はやく


はやく行ってくれ。



行ってくれよ。



二人の乗ったタクシーが


大通りの角を曲がった時




「……っ」



俺は堪えきれなくなった涙を


ようやく、落とす事が出来た。



前も見えずただ


その場にしゃがみこんで


子どものように涙を零す。



「う……っ、くそ、……くそっ」



何度も何度も感じてきた、



敗北…。



何をするにも


兄貴には適わなかった。



スポーツも勉強も


信頼も仕事も女も


俺が欲しいもの


兄貴は全部


持っていきやがる。



でも兄貴を恨む気はない。


俺は不器用でいつも


一生懸命な兄貴が大好きだ。



だから


行き場のない想いが


いつまでも渦巻く。




涙は一向に止まる気配がない。



そんな時だった。



後方から、


聞きなれた声が聴こえた。



「千…祐、さん……」



驚いて後ろを振り向けば


そこにいたのは


息を切らせた想だった。



「おま、なん、で」



涙の溜まる目を見開いて



俺は想に問いかけた。




【Real Me 性別のない人~千祐目線~失恋②(終)】

ひとひら☘☽・2020-04-20
幸介
幸介による小さな物語
RealMe~性別のない人
幸介/性と言う名の鳥籠シリーズ
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小説
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物語
トランスセクシュアル
性同一性障害
性別違和
適合手術
手術

ただ、誰でもいいからさ。
私、愛されたかったんだよ。
きっとお母さんは
お姉ちゃんのことが1番大切。
多分お父さんは
妹のことが1番可愛い。
おばあちゃんは、ちゃんと
私のことも愛してくれる。
人数勝負だったら、私の完敗だったから。
「愛されたいな」
って思ったとき見つけたのが
たまたま君だっただけだから。
君だけから愛されたいとは
思ったことないから。

らいむ. raimu.・2022-05-23
愛されたい
お母さん
お姉ちゃん
お父さん
おばあちゃん
勝負
たまたま
完敗
愛されたいな
ポエム
らいむのポエム帳!





あなたの言葉は
ときに私を包み
ときに私に突き刺さる
深く切り込む

私はあなたへの鎧を棄て去ってから
どうにも弱くなってしまったようだ

それでもなお
あなたから離れることができない

秘密さん・2021-04-13
大切な人
完敗
切ない

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

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『嫌いになった?』

素っ気ない返信をする私に
少しばかり…困り顔の君。

楽しくない時間はいらない。

そう返した私に
忙しい…の一言で済ませてくる。

つまんない。

そう想いながら
返信を考えていたら予想外の展開。

『しょうがないよ。 君に逢う為だから。』

なるほど…。

今夜も私の完敗だわ。笑

Rin-riN・2020-01-17
完敗
やっぱり好き

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