はじめる

#差別のない世界へ

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全4作品・

【RealMe~性別のない人 第六話 性って、なんだ】




「は!?想!?おま、なんで」


「あー……えっと、その」


口ごもって


どう切り抜けるか悩んだ挙句


俺は愛想笑いを千祐さんに向けた。



それでも千祐さんは


驚いて言葉が出てこない様だ。


沈黙が……痛い。


いたたまれない…。


逃げたい。


額に汗が湧いた。



「あのねぇ」


その時、コウコさんが


俺の肩に触れて笑う。


「千祐と同じ、お手伝いに来てくれたの、ね、想ちゃん」


間近でコウコさんの顔を見ると


ウィンクで目配せ。


話を合わせろって事か。


恩に着る……。



「あ、はい、手伝いに…」


「あーそうか。ご苦労さん。でもな、想」



千祐さんは腰を折って


コウコさんを見つめ


からかうように言った。



「コウコにいい様に扱われんなよ、こう見えて人遣い荒いんだから」


「えっ、そうなんすか」


「最初だけだぞ、いい人なの」


「えー……?」


何と答えていいやらわからず


伸ばした音をコウコさんは


勘違いしてしまったらしい。



「もう、想ちゃんまで…!千祐も紗季も私に何の恨みがあるわけぇ」


「俺にあんのはコッコへの愛情なんだけどな」


紗季さんが言う。


「だったらもっと優しくしてよ」



コウコさんが唇を尖らせると


千祐さんは彼女の前で


四股でも踏むように


大股を開き両手を広げた。



「よし来た!俺の胸に飛び込んでこいっ」


「千祐には言ってない」


コウコさんが

冷たく言い放つと

三人は目を見合わせ


大きく、一笑した。



とても、仲良しだ。



そんな三人を見ていると


緊張もほぐれて



周りを見渡す余裕が出来た。



ふと聞こえてくる会話に


そちらを振り返る。



「あーくん、飲み物♪」


「おー、ありがとな結奈」


「ねー、今度温泉行こうよ温泉、美容に効くとこー」


「いいけど、部屋風呂な。これ条件」


「もー、また変なこと考えてるでしょ?」


「結奈だって変なこと好きなくせに」



普通のカップルに見えるあの二人


注視して見れば背はとても低い。



きっとあの、


髭を生やして彼女と笑う男の人は


元女性なのだろう。




気付けば


あっちの男性同士は


手を繋いでる。



ベンチでは


女性同士が寄り添い合う。



みんな、形が違う。


それでもみんな笑顔だった。




こうして


男と女って概念を持たず


当たり前に人と人が


自由に愛し合える場にいるだけで



不思議なことに


俺が今まで悩んで来たことは


なんだったんだろうと思う。




性って……なんだ?



答えの出ない疑問符が



そこにはあった。











「いいか千祐、ちゃんと想ちゃんのこと送っていけよ」


「わかってるって」


「想ちゃん、もしよかったら来週も手伝ってね」


「うっす、また来ます」



午後八時


「ジェンダーレスの会」は


お開きになった。



皆、それぞれの場所へ帰っていく。



俺は仲良さそうに


繁華街へ消えていく、


コウコさんと紗季さんに手を振る。


このまま車を停めて


食事をしに行くらしい。




ふと、真横を眺めると


千祐さんが泣き出しそうな顔をして


コウコさんを見つめていた。



ちくちくと内部が痛む。


心が蝕まれていく気がした…。



「千祐さん…あの」


「あ、おう、なんだ想」


「千祐さんって…コウコさんの事好きなんすか」


「なっ、そ、そん、そんなわけ、なっ」


しどろもどろの千祐さんの顔は

見る見るうちに赤く変色していく。



あーあ、やっぱりね。


「わかりやす過ぎますよ」


俺は千祐さんを見つめて、苦笑する。


すると千祐さんは


「あー…」


バツが悪そうに唸ると


「なんでバレちまうんだろ」


頭を抱えてしゃがみ込んだ。




バイト先では


いつも飄々としていて


人の意見に左右されない


正義感も責任感もある


呑み屋のフロアで


絡む客にすんなりと


頭を下げられる、


強さも頼りがいもある人。



こんな弱々しい千祐さんを


見るのは出会って一年…


はじめてのことだった。



放っては帰れない。


俺は後を追うようにしゃがみ込むと


躊躇いながらも


千祐さんの頭に手のひらを伸ばした。


そして、ゆっくりと撫でる。


「話……俺でよければ……」


吐き出す息も

告げる唇も

撫でる手のひらも

小刻みに震えた。


感じた千祐さんの温もりは


とても、愛しい。


「想…、俺はさ」


「はい」


「兄貴も、コウコも好きなんだよ」


「はい」


「だから…幸せになって欲しいんだ」


千祐さんの言の葉は


ひらひらと宙を舞う。


切なくて、苦しい。


千祐さんのそんな想いが


胸に突き刺さった。



どのくらいの時間を


そうして過ごしただろう。


やがて千祐さんは


「……想、時間あるか」


「親に、連絡すれば」


「じゃあ、ちょっと付き合え」



俺を、誘った。


【RealMe~性別のない人 第六話 性って、なんだ(終)】

ひとひら☘☽・2020-03-28
幸介
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京本朱菜_不登校中・2020-07-30
バイ
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差別のない世界へ
LGBT
人の目線?
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